コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!! ( No.793 )
- 日時: 2011/04/05 18:49
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)
第194次元 決勝戦当日
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あれから、3ヶ月という時が経つ。
今日は3月31日。明日が待ちに待った決勝戦当日。
この3ヶ月、出来るだけの任務をこなして空いた時間は本部内にある鍛錬場で特訓をし、努力を積み重ねてきた。
今日は決勝戦の出場する8名を、班長が発表する日だ。
集まった戦闘部隊隊員11名全員は、班長室に集まっていた。
「やぁ君達、久しぶりだね」
「ええ、まぁこちらとて忙しかったですから」
「最初に説明するが、決勝戦は1チーム4人だ。勝てば代表者になり、その中の1人が人族代表になれる」
「人族代表ー?」
「代表は2種類。次元師代表が3人、人族代表が1人。だから代表者は合計4人なんだ」
「へぇー…」
「人族代表は、神族代表と1対1で勝負する為に今回新しく加わったルールなんだ」
「じゃあその人は神族に1人で挑むって事…!?」
「あぁ、そうなるな」
「そうなんだ…」
「…では今から出場者を発表し、AとBチームに分かれてもらうっ!!」
班長は強調するように強くそう言うと、自分の机を開けて、1枚の紙を取り出す。
ちら、と隊員達に目を向ける。皆真剣な瞳で次の言葉を待っているようだった。
軽く口元を緩ませた班長は、口を開いた。
「Aグループ、レトヴェール・エポール!!」
「え…あ、はい!!」
「サボコロ・ミクシー!!」
「はい!!」
「エン・ターケルド!!」
「はい」
「最後に…キールア・シーホリー!!」
「え、あ…は、はい…!!」
「え…?」
「班長、何故キールアを?」
「…守備型の中でも医術の次元技はとても役に立つからだ」
「なるほど…」
キールアは1人胸を躍らせながらも、まだ心拍数は消えてなかった。
まさか自分が選抜メンバーに選ばれるとは、思ってもいなかったのだろう。
「次はBグループ、ミル・アシュラン!!」
「はいっ!!」
「ラミア・ミコーテ!!」
「はい」
「ガネスト・ピック!!」
「は、はいっ」
「最後に、ティリナサ・ヴィヴィオ!!」
「…はい」
最後の1人を呼び終わると、それ以外の人達が拍手をし始めた。
いつの間にか副班長達が背後にいて、何人かが驚いた。
班長は机の上に紙を置くと、ふっと顔を上げた。
「以上だ、その8名には全身全霊で戦ってもらう————覚悟しとけ」
「「「「「はい———————ッ!!!」」」」」
「…にしても、すごいねぇ」
「まさかこのチームになろうとは…」
「ってか、副班達も参加するんだろ?」
「いいや…副班達にはまだ仕事が残っていて決勝戦どころじゃないんだ」
「え…だって1番経験多いの副班達じゃんっ!!」
「貴方達隊員に賭けるって…言ってるのよ」
「そ、そんな…」
「それにしても凄いチームになったわね、楽しみだわーっ」
「班長が考えるチョイスが分かんねぇーなぁー…」
更に盛り上がり、喜びを分かち合っていると、レトはふと笑顔を落とした。
もし此処にロクがいたら、きっと喜んでくれた。
神族だから代表者にはなれない…だがきっと心から応援してくれた筈だ。
でも、いない。
いつもレトの隣にあったものが急に姿を消して、
何となく、いつもと違う寂しさに襲われていた。
「んじゃレト、鍛錬場行こうぜ!!」
「え、あぁー…おう」
「エンも後で来いよーーッ!!」
「…了解」
「げ、元気だね…サボコロって」
「キールアは行かないのか?」
「だってあたしは戦闘タイプじゃないっていうか…そういうの向いてなくて」
「そうか」
「それに…」
「ん」
「あたしは、あたしの修行をしたいしねっ!!」
キールアはくるっと回ってエンに手を振ると、何処かへ行ってしまった。
すぐにでもその場から、離れたかったからだろうか。
逃げるようにして、去っていった。
(ダメだ…あたし……)
さっきのレトの寂しげな表情を、キールアはうっかり目撃していた。
ロクを想って、表情を落としたあのレトの顔を。
見ていられなくなったキールアはレトが見えなくなって、自分も逃げようと思ったのだ。
これ以上、ロクを求めてはいけないと思ったから。
代表者候補に選ばれた以上、私情を理由に立ち止まってなどいられなかった。
それぞれの思いを胸に、次の日が訪れた。
朝の眩しい日差しがレトの瞼を熱くして、レトはむくっと起き上がる。
カーテンを開ければ、直線的に自分の部屋に差し込む光。
今日は、代表者決定戦の翌日だ。
くーっ、っと体を伸ばしたレトはパジャマを脱ぎ捨てて隊服を羽織った。
何ヶ月、何年と着てきた自分の一部とも呼べる、隊服を。
「これ着ると…結構気持ち引き締まるんだよなぁ」
そう呟いたレトは準備を整え、いざ扉を開ける。
そして廊下を渡ろうと思ったが、レトの足はとある扉に反応して止まってしまう。
まるで重い錘でも身に付けているように、自分の足が重たくてどうしても動かなかった。
ロクの部屋。未だ当時のままにしてあり、きっとあれ以来誰も開けていないであろう、義妹の部屋。
レトはあ、と声を上げて、ポケットからペンダントを取り出した。
そしてそれを首につけると、自然と足の錘が外れたように、足取りが軽くなる。
行かなきゃいけない。
きっとこの試練を乗り越えたその先に、待っている。
「遅かったな、レト」
「もう皆来てるよー?」
「悪い悪い…寝不足でさ」
「んじゃあ…行くかッ!!!」
門を抜けて、レト達は決戦の場への1歩を踏み入れる。
ふっと振り返ったレトは、改めて見る本部の大きさに少し驚いて、ふっと笑った。
遠くでサボコロが自分の名前を呼んでいる為、慌ててレトは走り出した。
8人は班長から貰った地図を頼りに本会場へと向かう。
出発してから約3時間半。
やっとか、と思わず口にしてしまう程遠かった旅に8人は最早入り口の前でぐったりとしていた。
正に会場、という冪野球場のように広いドームになっている。
いや、ドームというには屋根がなくて太陽の日光を受けられるように屋根部分が全開に開いている。
観客席も半端ではない。沢山の人間達が座れるように多量の席を用意しているようだ。
入り口の人に札を貰った8人は、その札にチーム名と部屋番号が書いてある事に気付いた。
どうやら1日では済まされない大規模な決勝戦のようだ。
会場の構成は、1階が出場者の宿泊室で、2階が観客の宿泊室。そして3回が戦闘会場のようだ。
皆はバラバラになって、1階にある自室へと向かっていた。
少し広々としたその空間に慣れ親しんでいると、会場中に出場者を呼ぶアナウンスが鳴り響く。
今から開会式が始まる。
今から決勝戦が始まる。
神に会う為、神を倒す為に、
次元師達は———————————、一斉に会場へと集う。