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Re: 最強次元師!! ( No.795 )
日時: 2011/08/05 20:04
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: SLKx/CAW)

第196次元 言い伝え

 「此処か?」
 「あぁ、まぁな」
 「か、可愛いーっ…」
   
 目の前に広がったのは、横に幅が広く一戸建ての家だった。
 風と共に踊る草原の上で蝶々が舞い、色鮮やかな花に集まる。
 とても幻想的な光景を目の前にして、エンを除く3人の足はぴたりと止まる。
 エンはただ1人歩き、扉をこんこんと叩いた。
 しばらくして出てきたのは…可愛らしい少女だった。
 
 「あれ?エン君!?」

 薄い藍色の髪がふわりと肩まで伸びて、前髪の後ろを金色のピンで止めている。
 軽いワンピースに小柄な身を包み、大きな藍色の瞳はエンの顔を覗き込む。 
 身長は勿論エンより高い。キールアと変わらない程だ。

 「ど、どうしたの?」
 「まぁ…少し手掛かりをな」
 「手掛かり?」
 「家に入っても問題ないな?」
 「ないけど…」
 
 少しきょとんとした表情を浮かべて、少女はエン達を中へと入れた。
 入る時、レトはちょんちょん、とエンの肩を叩く。
 玄関に足を踏み入れようとしたエンは、それに気付いて後ろに振り向く。

 「…おい、この女の子誰だ?」
 「あぁ、俺の幼馴染でチエル・ディリスだ」
 「そ、そうか…って、お前幼馴染とかいたんだな」
 「まぁ幼い頃は遊んでいたが、今は会う事もないしな」
 「ふーん」
 「少なくともお前とキールアみたいな関係じゃないぞ」
 「な…なんだよそれ」
 「さぁな」
 「…お前他人事だと思って言いやがって…、どうせお前も同じ類だろ」
 「な…、ち、違う!!」
 「…ほれみろ」

 レトとエンの些細な喧嘩を終えて、さっさと中へ入る4人。
 上の書庫へと向かう為、階段を上って部屋に入る。
 本棚にずらりと並ぶ地味な色の本。
 その分厚い本がぎっしりと並べならたその部屋は、まるで学者が住みついてるかのようだった。
 手分けして探そう、と思い書籍を漁り初めてから約1時間。
 既にサボコロとキールアはギブアップしていた。

 「む…無理…」
 「あたし…医学の本なら読めるだけどなぁ…」
 「早いなお前ら、もう少し踏ん張れよ」
 「…あたし、あんたみたいな本マニアじゃないから」
 「なんだよ、本マニアって」
 「だってレト、『本が恋人です』って顔してるんだもん」
 「あぁ、そうですか」
 「にしても…それらしき書籍はないな」
 「あぁ、今結構読んだけど全然ダメだ」

 諦めた4人は本を元に戻し、階段を下りた。
 調度飲み物を持ったチエルと会い、きりが良いので1回の居間で休む事に。
 喉がからからに渇いていた4人は一気に飲み干して、ばたっと床に倒れてしまった。
 しばらく寝転んでいるうちに、エンははっとして起き上がる。
 怠けていてはダメだ、前に進むんだ、と。
 エンの引き締まった表情は、そう物語っていた。

 「…もう、行くの?」
 「あぁ、早く謎も解きたいしな」
 「そっか…」
 「それもそうだな、一息できたし」
 「うん、有難う、チエルちゃん」
 「あ、うん…こちらこそ、キールアちゃん」
 「よーっし、行っくぞーっ!!」

 玄関へと向かい、ぎゅっと草原を踏み締める。
 熱い日差しが4人を襲う…だが、そんな事を考える余地もない。
 エンは振り返って、チエルの方へ顔を向けた。
 
 「すまないな、邪魔して」
 「良いんだよっ、エン君の家だしっ」
 「…ところで、一応聞くが」
 「な、何?」
 「“真”という言葉に聞き覚えはないか?」
 「真…」
 「ないなら構わん」
 「…言い伝え」
 「…?」
 「真っていう言葉が出てくる言い伝えなら…あたし知ってる」
 「ほ…本当か!?」

 思わぬ言葉に4人はばっとチエルに顔を近づけた。
 1度動揺したチエルはんーっと1度唸り、あ、と声を上げる。

 「うん、知ってる」
 「それは…どんな言い伝えだ?」
 「え、とね…。

  『森の奥の二手道 両方進むは神の道 
   
   黒白の月と太陽が 互い祀るは神の水

   鏡の掟護らんと 辿り着けぬは真の嘘』 …だよ」
 
 チエルがその言葉を言った後、4人は言葉を失って数秒の間が空いた。
 その間に頭を捻っていた4人のうち、レトは感嘆の声を漏らした。
 
 「す、すっげぇー…」
 「黒白の月と太陽、鏡の掟、真の嘘…」
 「昔お婆ちゃんの部屋で見つけた古い紙に書いてあって…今でも覚えてるの」
 「…もしかしたら有力な手掛かりかもしれねぇぞ」
 「そうだな、だが何故この時代にこんな言葉が…」
 「おいおい、本当にその歌が関係あんのか?」
 「価値はありそうだぞ、まだ1ヶ月ある」
 「間違えたらその時だ、サボコロ」
 「まぁそうだけどよ…」
 「感謝する、チエル」
 「え…あ、うんっ」
 「まさか本人が知ってるとはな…」
 「うん、い、意外だったね」
 「じゃあな、良い知らせが来たら、また連絡する」
 「うん…行ってらっしゃい」

 チエルは4人の後姿にひらひらと手を振って、また家へと入って行った。
 4人は家を去った後、何度も何度もその歌を繰り返し歌い続けた。
 だが流石に歌だけでは考えにくい。唸るようにして知恵を絞り出す。

 「だァーッ!!わっかんねぇーッ!!」
 「落ち着けサボコロ。俺も分かんねぇ」
 「大体森っつったって…何処にあんだよ」
 「森…か、1番広い所は知っている、行ってみるか?」
 「まぁ1回くらい騙されたと思って森に行ってみようよっ!!」
 「そうだな…もしかしたらあの言い伝え、マジビンゴかもしれねぇし」

 4人は新たな目的地へと向かうべく、足を進め始めた。
 次なる目的地は森。“森の奥の二手道”の言葉の意味を探りに行く。
 唯、4人は確実に進んでいく。ゴールへと、或いは死へと。
 代表者決定戦の1回戦の目的は“真”に会う事ではない。
 “真”の真実を探る事。

 そんな事を考える事もなく…4人は手掛かりを元に森へと向かう。
 只管に、代表者という夢を抱いて、1歩を踏み出す。