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- Re: 最強次元師!! ( No.803 )
- 日時: 2011/05/11 19:58
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: jBQGJiPh)
第199次元 対立国
「ど、どうすん…だよ…っ」
「さ…サボコロ!!?」
「ありがとなキールア。…でも、何なんだよこの状況は」
(2人共…どうしよう……!!!)
目の前ではエンが叫びながらレトの体を揺すっている。
何度も何度もその名を呼ぶが、レトは気を失ったまま倒れてしまっている。
堕天使は表情一つ変える事なく佇み、ただじっとエンの様子を伺っていた。
「さぁ如何する?今すぐ此処を去るか、それとも4人共此処で命を落とすか————————、選ばせてやろう」
「く…ッ!!」
「如何する?…ねぇ、サボコロ」
「如何するたって…、俺達じゃ何も…っ」
サボコロはよろりと立ち上がり、腕を構えた。
炎皇を纏い唯堕天使を見つめ、怯える心を必死に抑えていた。
「————————、炎撃ィィーーッ!!!」
そうすると自分の腕から燃え上がる炎を堕天使に向かって放った。
深い炎の焼ける音が地面の上を駆け巡ると、休息もなく堕天使の華奢な体を捉え、包み込んだ。
然し燃え滾る炎の渦の中、少女はさも当然のように炎の中から姿を現したのだ。
まるで、小さな技だとでも言うように。
「…、な……っ!?」
「…実に詰まらない技だな、小僧」
「…ち、くしょう…!!如何すりゃ良いんだよ…!!」
更に鼓動は加速していき、堕天使を見つめる瞳を疲れを帯びてきた。
キールアも自分の掌を見て、カタカタと震えている。
(も…もう元力がない……ッ!!?)
先程のサボコロの傷の手当てで、元々の少ない元力を削り、最早キールアに残された元力は僅かだった。
これ以上元力を使う訳にはいかないが、それではレトもエンも助けられない。
レトは気を失い、エンの肩からは大量の血が流出し、とても矢を放つ力は残っていない。
サボコロは未だ何度も何度も次元技を堕天使に向かって使っているが…堕天使はぴくりとも動かない。
更にキールアに残された元力は僅か。
この状況を世の中では“絶体絶命”というのだろうか。
「そろそろ遊びも終わりにした方が良いだろう———————、消えろ、我が意の元にッ!!!」
堕天使は持っていた鎌を地面へと叩きつけ、聞いた事もない言葉を発し始めた。
それは何処かの国の言葉のようで、とてもサボコロ達には聞き取る事ができない。
そう…例えるならば“呪文”のような。
『“黒白月陽”—————————、第十二の錠、『月下ノ軌跡』ッ!!!』
堕天使…いや、ドルギースがその呪文を唱えた途端、4人の体はふわりと浮かんだ。
そうして風船の様な物に包まれたかと思うと、突如頭上に現れた大きな黒い穴に吸い込まれてしまった。
ドルギースがその穴を閉じると、4人の意識は一瞬で吹っ飛んでしまう。
「…ん、ぁ……」
レトは1人うっすらと瞳を開いた。
まだ視界がぼやけていたのか辺りを見回している様にも見える。
唯レトはゆっくりと起き上がり、再び瞼を持ち上げた。
「こ、此処…、は……。つ、つか怪我…い、痛くない?」
目の前に始めに飛び込んできたのは、水玉の中に入っている古い景色だった。
この場所は如何やら宇宙空間らしく、唯呼吸はきちんとできる。
遠くには銀河が見え、良く目を凝らせばその中で瞬く星々が見えるようだ。
レトは再度目の前にあった大きな水玉を覗き込んだ。
だが、あ、と声を上げたレトは急いで辺りを見回す。
ふと気が付いたのは、残りの3人も此処にいたという事だ。
「そっか…皆一緒に飛ばされたんだな…」
安堵の溜息をついたレトはもう1度、水玉の中の景色に目を向けた。
古い景色…そう、現代では見られない多くの低い家が立ち並び、小さな村の様にも見えた。
ビルが存在しない、唯自然ばかりが広がっていて…まるで昔の時代のようだ。
「すっげぇー…」
「…あぁッ!!?」
「ッ!!?」
レトが感嘆の声を上げると、突然隣から大きな声が鳴り響いた。
その大きな声に咄嗟に耳を塞いだレトはちらっと横に目を向ける。
そこには水玉の中を見て驚愕の表情を作っている、双斬だった。
「如何したんだよ…お前」
「如何したもこうしたもないよ!!!見てよ、ねぇ!!」
「はぁ?何を?」
「ほーらッ!!あの男の子!!」
どれどれ、とでも言うようにレトは水玉の中を覗き込んだ。
そこにはきょろきょろと辺りを見回している小柄で中性的な顔をした少年の姿。
その姿を何処かで見たような…という顔をしていたレトの肩を、ちょんちょんと双斬が叩く。
「あ?何だ?」
「…これ」
「ん?」
「この男の子!!」
「…お、おぉ?」
「…まさか気付かないの?」
「うん」
「僕だよ!!、千年前の僕っ!!」
レトの思考は一瞬停止し、ぱちくりと目を開いたり閉じたりしている。
そうして戻った思考を元に、水玉の中と隣にいた双斬を見比べると。
「あぁーーッ!!?」
「……、遅いよ、バカぁ」
「あ、いや、だってさ…え?」
「だってじゃないよ!!何年も一緒にいたのにぃ!!」
「マジでお前なの?これ」
「これって言わないでよー…正真正銘僕だよーっ」
「…じゃあ…これって…」
レトの鼓動は増すばかり。そう、少し考えれば分かる事。
この水玉の中の世界は…そう。
————————、千年前の世界だと言う事になる。
「でもお前…縮んだ?」
「何それ。これ僕の本当の体じゃないの、知ってるよね?」
「……あぁ、そうだっけ」
「…、薄情者」
「ま、まぁ良いとして…間違いないんだな?」
「そうだよ。どこから如何見ても…この村は『メルギース国』の中の村さっ!!」
「…え?」
その名を聞いて、レトは思わず声を上げた。
『メルギース』…そう、この言葉を聞いて。
「お前…メルギースって言ったか?」
「うん、メルギース国。あれ?知ってた?」
レトの脳内にふと違和感が走った。
昔何処かで聞いた様な…そう。
先程堕天使と戦った時同じ様な感覚になった…あの時の事。
「ま…まて、よ……」
「?、ど、どうしたの?」
「め、メルギースと…ドルギー、…ス?」
「…!?、そ、それって!!」
「!?」
「メルギース国とドルギース国の事!!?」
メルギースと、ドルギース。
その言葉も嘗て聞いた…似たような2つの言葉。
双斬はわなわなと震えていた。
「メルギース国と…ドルギース国?」
「そうだよ!!千年前、その2つの国は対立してて、戦争まで起こったんだからッ!!」
「…!?、そ、その話…聞かせてくれねぇか!?」
レトは興味津々な口調で、双斬にそう質問する。
こくりと頷いた双斬の顔にもやはり、汗が一筋垂れていた。
誰も起きてはこない、この宇宙感覚の世界。
目の前にある、千年前の景色。
一体何の目的で、何の為に、こんな所まで来てしまったのだろうか。
全ての謎は、千年前の“とある2つの対立国”に隠されていた。