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Re: 最強次元師!! ( No.804 )
日時: 2013/04/07 11:56
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: 2DX70hz7)

第200次元 黒白の双子王女

 時は今から千年前。
 僕達英雄大六師さえ生まれていない……僕達のお母さんの時代の話だ。
 この頃は戦争も絶えなく続き、唯一安全だったのが“メルドルギース国”だった。

 メルドルギースは元は1つの大きな国で、戦争も起こったりはしなかった。
 そう……国を次ぐ王女が生まれるまではね。
 メルドルギース国女王、メドルル・ウェンヴェルは次の王女の為、出産を決意した。
 でも、産まれたのは1人じゃなかった。

 『メドルル様……!? ま、まさか……!!』

 誰もがこの時驚愕の表情を作り上げたと思う。
 産まれたのは、片翼を生やし、それぞれ黒と白の髪を持つ子供だった。
 そしてこの時……この国には言い伝えが存在していたんだ。


 “片翼も持ちし黒白の子をこの世に産み落とした時、不を齎す黒の子を生かすべからず”……と。
 
 
 その言い伝えを知っていた国の人々はいきなり反発し合った。
 不幸などご免だ、黒を子を殺せと。
 だけど、折角の女王の子を殺す事はできない、という人もいたらしくて……。
 結局、産まれた双子は別々に暮らす事になってしまった。
 
 白の子の名前が“メルギース”
 黒の子の名前が“ドルギース”

 双子は、それぞれそう名を付けられた。
 メルギースことメルは、その優しい心と暖かな笑みで国の人々への信頼を得て、
 ドルギースことドルは、不幸を齎すと言われていた故に監獄の塔で監禁されてしまった。

 だけど、メルはドルの事が好きだったみたいなんだ。
 
 『ねぇ、お母様?』

 『何です?メル』

 『何故にドルがいないのです?』
 
 『……』

 『何処にいるのですか? —————教えて下さい、お母様っ!!』

 メルはドルに会いたくて、いつもこっそりと監獄塔へ向かっていた。
 暗い部屋の中で足を抱えて座っていたドルを見て、いつも哀しそうな顔をして。

 ドルは与えられる物も少なく、細くて冷たい体になっていったんだ。
 それを見たメルは自分のご飯の分をドルに渡していた。
 でもドルは……受け取るのが怖かった。

 『……貴方なんか、私の姉妹じゃない』

 ドルの心は荒み、ボロボロに傷ついていった。
 それでもメルは諦められなくて、何度も何度も救おうとした。




 そして、10年の歳月が経った頃。

 遂に……次期王女をどちらにするかの、討論が始まった。
 勿論国民は、心優しきメルを王女にする事を推薦した。
 でも、もう片方でドルを王女にしろという反発も上がってきたんだ。


 それで始まったのが、“メルドルギース第一戦争”だった。
 
 
 それが幾日……幾月と続き、終わったのは丁度1年後だったって。
 勝利の栄冠を手に入れたのは、メルギースだった。
 だけどその戦争のせいで国は“メルギース”と“ドルギース”という2つの国に別れてしまったんだ。
 そうして戦争は無意味な結果を終え、お互いの国にそれぞれメルとドルを置いたという。

 でも、問題があったのはその後だった。
 
 「……問題?」
 「そう、その双子の王女は————————、その後3ヶ月間行方を晦ましてたんだ」
 「……————!?」

 国同士は勿論騒ぎ立てた。
 国を治める王女が、忽然と姿を消してしまったが故に。
 その謎の失踪を遂げた2人は、3ヵ月後に元のように国に戻ってきた。
 だけど……2人の様子が変だったと言われてるんだ。
 まるで性格が変わってしまったように。

 でも国民は、3ヶ月も離れていたのだから違和感があるのは当然だ、と事を済ませてしまった。 
 そうして長きに亘ったメルドルギースの王女事件は幕を閉じた。

 「……と、いう訳なのさ。あ、因みにその後すぐに2人は死んじゃったらしいけど」
 「……! じゃあさ」
 「ん?」
 「2人が死んだ理由って、分かるか?」
 「あぁ……メルは病死。不治の病に侵されて僅か14歳で死去したよ」
 「ドルギースは?」
 「ドルは何者かに殺された。……でも」
 「……?」
 「2人とも……死んだのは同じ日だったらしんだ」
 
 レトはまた悩むように顎に手をかけて唸りだした。
 まだ若いうちに、2人の王女はこの世を去ってしまった。
 1人は病死、1人は暗殺の手によって。
 だが、同日に死ぬ事は偶然だっただろうか。
 唯の偶然だという事を信じきれず、レトはじっと床を眺めていた。
 
 「なるほどな……」
 「レトは、如何思う? この双子について」
 「何とも言えねぇけど……現代と繋がってんのは分かった」
 「へ?」
 「前に師匠が言ってたんだ。“メルギース”と“ドルギース”っていう地域の戦争を」 
 「あぁ……そっかっ」
 「何か引っかかってると思ったけど……やっぱこれかぁ」
  
 レトはふと横に顔を向ける。
 そこに映るのは……昔の景色。
 色を帯びていない、千年前の情景だった。
 だがレトはその水玉をじっと見た後に、ふいっと立ち上がった。

 「レト?」
 「まぁ、やっぱ此処から出るのが先だな。皆気失ってるみたいだし」
 「そうだね。まずは出る方法から考えないと……」
 「さてと……」

 レトは一先ず、辺りを見回した。 
 だが瞳に映るのは、変わらぬ宇宙の様な世界の景色だった。
 向こうに銀河が見えるのも変わらない、果たして本当に出口があるのだろうか。
 唯、考えている余裕もないと判断を下したレトは、その場に3人を置いて、歩み始めた。
 唯只管に……前だけを向いて。
 双斬はその大きな背中を見つめながら、ちょこちょこと後を追った。