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Re: 最強次元師!! ( No.813 )
日時: 2011/07/10 11:43
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: SLKx/CAW)

第201次元 法ノ錠

 歩いて、歩いて、歩いて。
 ずっと何もない空間の中を、唯只管に歩き続けたレトヴェール。
 彼は足が痺れている事に気が付き、ぴたりと足を止めた。

 「ど、どうしたの?」
 「足がいてぇ」

 双斬はレトの背後からひょっこりと顔を出し、様子を伺うように足を見た。
 外見的にはあまり痛そうには見えないが、実際とても痛いらしい。
 休憩する?、という双斬の一言に賛同し、2人はその場にぺたりと座り込む。
 
 「ちっくしょー…何もねぇじゃねぇーかよー」
 「まぁ歩いても仕方ないし…ちょっと考えてみる?」
 「はぁ?それって此処を出る方法が論理的に存在するって事か?」

 双斬は、うんというように頷いた。
 
 「あ、ところでさ。ドルギースのこの技…次元技じゃあねぇよな?」
 「いいや、それは次元技と同じ類さ」
 「…はぁ!?」

 元々、メルギースとドルギースは次元師と似たような存在だった。
 自分の脳内で術の構成、想像イメージを果たし、それを元力として具現化させる。
 更にその元力を使って、技を発動する…のだが。
 次元師ではない為、勿論次元技は使えない。
 だから2人に与えられた力というのは、“法ノ錠”というものだった。

 「法の錠は、十五段階の技を元力の数値毎に使い分ける、まぁ次元技に近いものなのさ」
 「待てよ、それじゃあ次元技と何も変わらねぇじゃねぇか」
 「あぁ、それはね…」

 次元技は、十段階の次元という箱の中に技を入れるという、入れ替え製だ。
 レトであれば、“三次元の八斬切り”であったり、“四次元の八斬切り”でもある。
 逆に言えば、“五次元の十字斬り”、“五次元の八斬切り”…と。
 どの箱にどの技を入れるかは、その人次第で、自由な組み立てが可能である。それが“次元技”。
 
 逆に法ノ錠は、“定められた錠に定められた技”が入っている。
 十五段階の錠であるのであれば、十五という数の技が存在するという事になる。
 そこが次元技と法ノ錠との違いだ。

 「成る程なぁー…」
 「でも本質は一緒。法ノ錠も次元技も、元力を使用するんだから」
 「つまり、この空間も次元技とそう変わらねぇって事か?」
 「うん、多分ね」

 この空間は次元技で作り出した、といっても可笑しくはない。
 レトは顎に手を当てて暫く考えていると、ぱっと手を離した。

 「本質は同じ、論理的構成も同等…、よしっ!!」
 「…?、ど、どうしたの?」
 「ぶち壊す、次元技でなっ」

 へ?、という双斬の間抜けな声はレトの耳に届く事はなかった。
 
 「ど、どどどど!?」
 「な…なんだよ」
 「どうしたらそうなるのーッ!?」
 「ぐだぐだ言うな、ほら次元技になれよ」
 「……意味分かんないよぉー…」

 渋々次元技となり、双斬は本来の姿になる。
 握られた双剣を握り締め、レトはそのまま走るように元の場所へ戻っていった。
 相変わらず3人とも気を失っていて、動く仕草も見つからない。
 
 レトはふっと天井に浮かぶ星々を見つめた。

 「第七次元発動————————————————、堕陣必撃!!」

 剣先はみるみる内に紅く染まり、レトは、ダッ!!と上空へと飛んだ。
 そして紅く染まり終えた双剣を、そのまま形を崩さず床へと斬り付ける。
 剣の先が素早く床につき、床の表面を削る。その衝撃波で周りの床まで音を鳴らし、鈍い音が走る。
 
 「…!?、何だ!?」

 『君の技でこの空間が崩れようとしてるんだ…!!』

 突如、この空間は急激な地震に襲われた。
 頭上からは幾つ物瓦礫が、まるで雨のように降ってくる。
 レトは腕でその小さな岩のような破片を抑える。

 「…——————————————!!!?」

 激しく揺れる中、遂に立てなくなり、レトもその場に伏せてしまった。
 頭の中がぐるぐると気味の悪い感覚が回っている。
 うっすらと目を開けてもそこには暗い闇しか入ってこない。
 揺れ動く意識の中、レトは瞼を閉じてしまった。




 一方、その頃の現世界。

 (流石に我の術に填れば死も確実だろう…あそこは抜け出す事が難しい空間だからな)

 少女は、機械的な瞳をぎょろぎょろと蠢かせ、辺りを見回している。
 誰もこの土地にはやってこない。どうやら他の参加者は皆天使の方へ行ったみたいだ。

 「……私は如何してしまったのだろう」

 唯ぽつりと、そう呟いた。
 動かぬその感情の無き瞳に、哀しみの色が挿した。
 じっと空を仰ぐ。誰かの言葉を思い出して。

 
 『…貴方なんか、私の姉妹じゃない』


 途端にあの言葉を思い出す。
 途端に瞳から滴が湧き上がる。

 だがその瞬間——————————。


 
 「……!!?——————ど…如何いう事だッ!!?」


 現時点を持ってして、この土地だけが揺れ始めた。
 気になって頭上を仰ぐドルギースと名乗る少女。
 然し目に映ったのは————————、次元空間に亀裂の入る瞬間だった。

 「ば…かな…!!、あの空間から如何やって…——————!!!」

 次第に高まる心臓の鼓動と地面の揺れ。
 遂に亀裂が大きくなり、そこから黒い空間が覗いている。
 そして少女が目を瞑り、次に開けた時には。

 
 「…——————————、ん、な……っ」

 
 頭上から——————、4人の少年少女が振ってきた。


 「う…ぁぁぁぁぁぁああああ——————————!!!?」

 金髪の少年の声を、先頭にして。
 雨の如く、4人は少女の頭上から落下してきた。
 そしてサボコロ、エン、キールア、レトの順に落下し、1番下で下敷きとなったサボコロは口から血を吐き出した。
 
 「っ…ってー…、あれ?俺達戻ってきたのか?」
 「み…みたい、だね……」

 双斬は呆れ顔になって下敷きとなったサボコロに目をやる。
 最早倒れ伏せ、魂の抜ける直前だった。

 「あちゃー…」
 「れ…、れと…てめぇ……っ」 
 「あぁ?」
 「「「早く上から降りろぉぉーッ!!!!」」」

 遂には3人の声がレトの耳を過ぎった。
 ちらっと3人に目をやったレトは、3人共相当怒っているのに気が付いき、さっさと降りた。

 「おぉー、わりわり」
 「あんたねぇ…」
 「つうか俺達は何してたんだ?」
 「…何処か別の場所に行っていたのは確かのようだ」

 レトは、数メートル離れた所にいる漆黒の堕天使を見つけた。
 明らかに驚いている、自分の創り出した空間をまんまと壊されて。

 「…今度は俺達の番だぜ漆黒の堕天使さんよぉ」

 レトは、空間で見てきた全ての結末と心理を元に、1歩ずつ近づいて行く。
 
 「いや——————————純白の聖天使、メルギース!!!!」