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Re: 最強次元師!! 【参照5000突破】 ( No.826 )
日時: 2011/08/05 00:03
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: SLKx/CAW)

第203次元 元力の回復、反撃
 
 事態は一向に変わりを見せない。
 レト達は勿論防戦一方で、反撃する余地さえ与えられない。
 それは言うまでもなく、元力の残りが僅かだという事だろう。
 幾つもの次元技が飛び交い、ドルギースの方面からは鎌を振るう勢いが止まらない。

 「きゃはははははッ!!如何した如何したァッ!?得意の次元技とやらはそれが限界かよ!!!」

 最早ドルの豹変ぶりは尋常ではない。
 甲高く声を張り巡らせ、明らかにレト達を押している。
 奥歯を噛み締めるレト達。そろそろ体力も無くなってきていた。
 
 「元力の使えない次元師…か。こりゃ面白い、傑作だよ」
 「うっせェ!!さっきメルギースってやつと闘りあって殆ど元力ねぇんだよ!!」

 サボコロは感情のままに言葉を発した。
 このままでは負けてしまう。それは目に見えている事なのに。
 レトは元力を掛けず、唯双斬を振るうだけに決めた。

 「こんの…野郎!!」
 
 ぶん!!っと、横へ切るように振るわれた双斬を、軽々しく避けて地面に着地する。
 何度も何度もドルに向かって双斬を振るうレトだったが、ドルは楽しそうにそれを避ける。
 もうこれ以上は続かない。3人はそう思っても尚、戦闘態勢に入る。

 (如何しよう…、隠れているのも時間の問題……あたしにだって殆ど元力残ってない…っ)

 然し、あの3人の元力は、足してもキールアの元力に届かない。
 それ程必死になっている。ギリギリの限界まで次元技を振るっている。
 心の優しいキールアには見るのも絶えられない勝負だった。傷だらけになっても闘い続ける3人を見て、目頭に涙を溜めて。

 「う…うらぁ!!!」
 「エン!!あっちだ!!!」
 「分かっている————!!!!」
 
 息をする休息さえ与えてはくれない。激しい闘いを目前にし、キールアの心は大きく揺れた。
 そしてキールアは何度も何度も考え、何度も何度も悩み。
 
 その末に…もう後には退けない、と小声で呟いた。

 (今あたしにできる事をやりたい…、例えもう2度と————————)


 
 例えもう2度と、“次元師に戻れなくても”


 
 「第六次元、発動——————————!!!」

 
 (…——————!!?)

 (い、まの…キールアの、声————!?)

 眩い光が差す。
 その方向へ目を向ければ——————、いる。

 最後の力を振り絞って懸命に戦う、金髪の少女の姿。

 
 「——————————、複還元!!」

 
 キールアが払った右手には3つの黄色の球体。
 それをそのままレト達へ殴りつけるように投げる。
 “複還元”…とは、多少の元力を自分以外の仲間の分だけ元に戻す事のできる次元技。
 
 「…げ、元力が…!?」
 「戻って、いく…?」

 黄色い球体に包まれた3人の元力はみるみる内に戻っていく。
 球体に開放された3人は、信じられなさそうに自分の掌をじっと眺めた。
 
 「す、すげぇ…!!」
 「ありがとな、キールア!!…って、あれ?」

 レトは振り返った…が然し、そこにキールアの姿はなかった。
 キールアは木の裏でじっと身を潜め、元力を失くしてしまった事に体を震わせていた。
 漸く戦う事のできる3人は口元を歪ませて、次元技をフルに発揮する。
 
 「…医術の次元技…か。それもあのシーホリーにの血筋の者に受け継がれるなんて…とんだ運命だよ、ホント」
 「おいてめぇ、小言は良いからさっさと始めようぜ!!」
 「こちとら元力戻ったんで今活き活きしてんだ」
 「元力が戻ればこっちのもの——————いざ、参らん!!!」

 3人は四方八方に飛び散る。
 三角形のように囲まれたドルは、額に汗を1度だけ流し、後ずさりした。
 かなり計算が狂ったようだ。
 あの次元技がなければ勝利は自分のものとなる筈だったのに。
 
 「まずは俺からだな————————、十字斬りぃぃぃッ!!!!」

 レトは双斬を十字に重ね、そのまま勢い良く腕を外側へと振る。
 双斬から放たれた十字の気の塊は瞬く間もなくドルへと襲いかかった。 
 ドルは咄嗟に腕で顔を防ぐ。だがその衝撃で数メートル後ろに下がってしまった。
 煙から現れたのは、腕を交差させて顔を護り、奥歯を噛み締めたようなドルの顔。
  
 「く…ッ!!」
 「へへ、久しぶりに使ったからちょっと自信なかったんだけどな」
 「相手に攻撃する暇なんて与えねぇ!!次は俺だぜ————————、炎柱!!!」

 サボコロの纏った炎はドルの周りを覆い、まるで柱のように天へと伸びて行く。
 本当なら此処でドルは灰となり消えていた筈…なのだが。

 (…!!?何で…、何で空洞になってるの……!!!?)
 
 ドルはぱっと周りを見渡す。
 だが炎柱は唯ドルを囲むようにしかなっていない。
 何だ何だと心の中で騒いでいたその時、

 「余所見をしていたら——————————」

 「…————!!?」

 「——————————、一瞬で命を落とすぞ!!!」
 
 炎柱は、唯の“カモフラージュ”だった。

 炎柱の一部が穴を開け、そこからエンが弓を引く姿が見えた。
 そのまま一瞬たりとも間を空けず、エンは次元技の矢を放つ。
 これは“一閃”という技だろう。
 
 見事ドルの腹部を貫いた一閃の刃。
 ドルは貫かれた腹部を必死に抑え、地面に膝をつく。
 元力があってこその次元師。その次元師3人相手に、堕天使に勝つ術はあるのだろうか。

 「さぁ…まだやるかよ?」

 サボコロはいつもの調子で言い放つ。
 ドルは怒りを鎮めたのか、急に大人しくなり、鎌を下ろした。
 不思議に思った3人も手を止めた時…ドルは不気味に笑い出す。

 「ふふふ……そう、そうだったんだよ」
 「…?」
 「最初から鎌を振るうだけで勝とうだなんて思ってないさ……だって」
 
 ドルはそっと鎌の先を天に向ける。 
 そしてその忌々しい表情を露にする。

 「あたしには…————————あんたらとは別次元の術があるのだから!!!!」

 またしても荒れ狂うように笑い出すドル。
 天に伸ばした鎌を下ろす事もなく、その不気味な口をゆっくりと開いた。
 
 「黒白月陽——————————第十の錠、『激音ノ輪廻』!!!」

 3人に囲まれていたドルは、天に迎えた鎌をぶん!!と円を描くように振り回した。
 その直後、天使の輪のような形をした輪廻が、レト達の頭上を覆う。
 瞬間、口では表す事の出来ない程激しい音がレト達3人を襲った。

 「ぐ…、ぐぁぁぁぁああああ!!!!」
 「う、ぐぎ…ぃ…ぁぁぁあ!!!」
 「何…だ…こ、この、音、は…——————!!!!」
 
 (あ、頭が……このままじゃ割れ、ちま…う……!!!)

 頭が木っ端微塵にも砕け散る程の音量が襲い掛かる。
 そんな3人を見て無力にもキールアは地面へと膝を落とした。
 自分じゃ何もできない。唯見る事しかできない。
 再度襲い掛かる絶望を前に…キールアは自分の無力さを更に痛感した。