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- Re: 最強次元師!! ( No.858 )
- 日時: 2011/11/01 09:09
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: DxRBq1FF)
第210次元 本戦、1回戦開始
「す、すっげぇ……」
レトヴェール・エポールは、思わず感嘆の声をあげた。
会場の観覧席が、既に埋まっている。そして人々の蠢く姿に驚いていた。
活況に満ち溢れたこの中で戦うのか…と。
無意識の内に言葉を零す。
「すっげぇーなぁーっ!!!」
「これが会場…か。当日だとやけに人が多いな」
「すっごーい…ね、ね、凄いねレト!!」
「お、おぉ…」
本戦、『次元師同士のトーナメント式バトル』
4名の次元師が、2単1複の団体方式で戦い合い、先に2勝した方の勝利。
殺そうが生かそうがは己の自由。
元力を使えなくなるまで追い込むか、気絶させるか、戦闘不能にさせるか…殺すか。
勝利方法は沢山あるが、それを誰が如何利用するのかが本戦の醍醐味になってくる。
『————————————選手、入場!!!』
寛大な声援に迎えられ、勝ち上がった4チームが入場した。
レトの目に見えたのは、昨日ロクの事を話していたチームと、ミル達のBチーム。
他にも1チームいるが、何故か目には入らなかった。
レトが見つめるのは、たった一点。
昨日の4人、ただこの4人だけだった。
そして、運があるか如何なのか。
『第1回戦————————エポールチーム対、アーミストチーム!!!!』
初戦の相手が、あの例のチームだった。
「あれ?俺達ってエポールチームになってねぇ?」
「名前はリーダーであるレトの苗字になるようだな」
「へぇー……って……、れ、レト…!?」
「あぁ…昨日の奴等みたいだな」
まさか始めから当たるとはな。
レトはふっと笑いながらそう思った。
然しそのこめかみには一筋の汗が伝う。
「試合順ってどうなってんだぁ?」
「ランダムらしいぞ。本部側がくじか何かで決めんだろ」
会場がざわめき出し、待つ事数十秒。
マイクに息が吹き込まれ、途端に会場は静かになった。
そして。
『第1試合——————————、サボコロ・ミクシー、エン・ターケルドペア対、ムシェル・レーナイン、ファイペア!!!』
歓声が上がると同時。
レト達の表情は、一変した。
「嘘…だろ……」
「な…、何で俺とエンのペアなんだ!!?」
「今キールアを1人にすれば…状況が拙いというのにか…っ」
4人があたふたとしている間に、相手チームの2人はとうに会場中心のバトルエリアにいた。
相手を待たせる事もできないので、渋々エンとサボコロはエリアに向かう。
「さっさとやろうーよー??ま、どうせウチらには勝てないだろーけど?」
「…容赦は、しません……必ず…勝ちます」
「どうする…エン」
「どうするもこうするもないだろう。俺達が勝たなければ、絶対に次は進めん」
エンとサボコロが覚悟を決めて前に向き直った時、
同時に、開始の合図が響き渡る。
『————————————————、開始!!!!』
「「「「次元の扉、発動————————————!!!!」」」」
4人が同時に叫んだ時、互いの次元技が共に発動する。
そしてサボコロは炎を纏うその腕を振るい、隙も与えず敵陣に切り込んだ。
「炎撃ィィィ————————!!!!」
業火なる炎の波が、ファイとムシェルを襲う。
炎撃が2人を包み込んでから数秒経つ事もなく。
「——————————ったく、のっけから何するわけーっ?」
1人は、炎の中を鞭で叩き、余裕に塗れた表情を作り上げ。
もう1人は、紫の翼で空を羽ばたき、炎を掻き消し現れた。
(始めっから————————、余裕の表情で交わしてくるかよ)
サボコロは敵陣から離れ、エンの前方に立つ。
エンはがちゃり、という音を立てて、弓を構えた。
観客席からの猛烈な歓声。
どちら側を応援しているのかは分からない。然しこの熱狂は半端ではない。
両者とも第一次予選と第二次予選を見事突破したチーム。
これからの戦術に期待を寄せているのだろう。
「んじゃそこの可愛い坊や?——————————、あたしの餌食になっちゃってねっ?」
パシン!!、と渇いた音が鳴り響き、ムシェルは楽しそうに笑う。
そして持っていた“鞭”を天に捧げるかのように大きく上げて、
「——————————連打!!!」
何と次元唱を唱える事なく、技を発動させる。
物凄い速さでサボコロの懐に飛び込み、華麗に舞う。
然し相手を痛めつけるように、一方的な攻撃だった。
「ぐ…ぅ——————、ぐあぁ!!?」
最後にムシェルは右回転をし、思い切りサボコロに鞭を打ちつけた。
次元技であるが故に威力は並外れ。その衝撃でサボコロは後方へと吹っ飛んでしまう。
「————————サボコロ!!!」
エンがそう叫んだのと同時。前方から小さな囁きがエンの耳を過ぎった。
「余所見する暇…なんか——————与えません」
「————————ッ!!?」
「——————————落星」
ファイは小さくそう呟いた後。
背中に生えた“紫翼”から、無数の羽がまるで雨のように振り、エン達に突き刺さる。
それはまるで羽を何かで固まらせたかのような強度を誇り、刃物が降ってきているのと同じ状況。
更にファイさえも、次元唱を唱えていなかった。
「なん…つ、ぅ……、強さ、だよ……!!」
「これは…予想以上に警戒をしない…と、いけないな…」
よろめきながらも、エンとサボコロの2人は立ち上がる。
エンは軽く口元を服の袖で拭い、キッ、と弓を構えた。
「まずは貴様を落とす————————————————、複閃!!!!!」
上からの攻撃ではなく、下からの攻撃。
無数の矢を放ち、その速さと威力で見事ファイを捉えた。
——————————筈だった。
ファイは、背中に生えた絶対の翼で己を包み、護った。
「私への攻撃は…当たりません。…諦めて下さい……」
絶対の強度を誇る翼。
絶対の威力を誇る鞭。
まさに矛と盾を持ち合わせた——————————、最強の兵士のようだった。
エンは一旦弓を提げた。
サボコロは再び炎を手に纏い、相手2人をじっと睨む。
「もっと楽しませてね?——————————でないと詰まんないじゃん?」
「——————————私は唯、あの人に従う…だけ」
「サボコロ…いいか」
「なんだよ」
「俺達が勝たねば、勝機はない」
「わぁーってるよ」
再び上がる歓声と、熱狂。
その緊張感に圧されて尚、2人は勝機を願う。
選手席にいたレトとキールアも必死に同じ事を願い…、そして勝つ事を望む。
そう、全ての勝利を——————————この2人が背負う事になってしまったのだから。