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Re: 最強次元師!! ( No.874 )
日時: 2012/01/08 22:34
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: aaUcB1fE)
参照: http://loda.jp/kakiko/?id

第214次元 第2試合、開始

 「う、そ……だろ…っ」

 レトヴェールは、思わず感嘆の声を上げた。
 あの小柄な少女たった1人で、英雄大六師を持つ2人の少年に打ち勝ってしまったのだから。
 傷ついた2人は体を引き摺りながらレト達の方へ戻ってきた。

 「やっべ…、マジで死ぬかと思った……」
 「すまないレト…本当に……」

 2人はボロボロのまま、席に座る。
 見るからに分かる…この傷は想像以上に痛いのだろう。
 あんな刃のような雨が降り、縦横無尽に踊り、自分達の身を引き裂いた。
 あれ程の実力を持っていたとは、エン、サボコロ本人も迂闊だったらしい。

 「大体俺に文句つけるお前が悪いんだろッ」
 「何を言うかと思えば負け惜しみか?、少なくとも俺1人のせいではない」
 「はぁッ!?俺だけのせいでもねぇーよ!!」
 「誰がお前1人のせいだと言った!!ちゃんと話を聞け!!」
 「…ッ、お前のそういう態度がムカつくんだよ!!」

 途端に始まる喧嘩に対し、レトの我慢も限界だった。

 「お前ら…良い加減にしろよッ!!」

 その声に驚き、2人も途端に言い合いを止める。
 レトは一息ついてから、2人の姿を見て身を竦めた。

 「喧嘩してる場合だったかよ?そんなに余裕があんなら何で勝ってこれなかった!?」
 「お…俺はこいつがムカつくだけだっつーのっ」
 「……2人共冷静になるまで絶対口きくな。この調子だともし第二試合に進んでも負ける」
 「れ、レト…っ」
 「キールア…悪かったな。お前の事については俺達3人にも責任がある」

 レトは申し訳なさそうにそう言ったが、キールアは軽く首を横に振った。
 レトに怒られた2人は、唯黙って座る。
 それ以降は口もきかず、むすっとした表情で別方向を向いた。
 呆れたレトは再度溜息をついて、ふいっと会場を見渡す。

 「第1試合は——————————、アーミストチーム!!」

 上がる歓声を鬱陶しく聞いてたレトも、次のアナウンスを待つ。 
 然しこのままでは勝ちを望めない。
 此処で棄権するのも手だろうか…そう思った次の瞬間に、アナウンスが流れた。


 「それでは第2試合——————————キールア・シーホリー対ルルネ・ファースト!!!」


 何と次は、キールアの出番だった。

 「やっぱりキールア単体、か…」
 「どうする?…あたし、出た方がいい…かな」
 「俺は出て欲しくないけど……」
 「…でも、ヒントを見つけてきたいっ」

 キールアは少し強気な表情でそう言った。
 その言葉にレトはきょとんとする。

 「ひ…ヒント?」
 「そう…きっとミル達は初戦上がってくると思うし……っ」
 「でもお前、無茶があるだろ…っ!?」
 「うん……でも、やっぱり役に立ちたいよ」

 大丈夫だから、そう言ってキールアは歩き出した。
 もう次元師ではないのに。唯ミル達に繋がれば良いと思って。


 「さて…次は私ですね。行ってきますですっ」

 


 (あれが…相手……)

 赤くて林檎のような髪形。
 背は低くて何やらポンチョのような物を羽織っている。
 これがキールアの相手、ルルネ・ファーストだ。

 「さて…————————、行きますです!!!」

 思い切り踏み込んだルルネは、すぐにキールアの懐へと向かう。
 伊達ではないそのスピードに、キールアは慌てて後方へ飛び退ける。
 
 「次元の扉発動————————————ッ!!」
 
 「————————!?」

 「————————————乱箱!!!」

 ルルネの周りに突如、赤や黄色や橙の箱が出現した。
 どうやらルルネの次元技は“箱”らしい。

 「——————————現出!!」

 「次元唱なしで————————ってわぁッ!!?」

 キールアの目の前、後ろ、上、下。
 あらゆる方向から色とりどりの箱が出現し、キールアは必死に逃げていた。
 それを少なからず、ルルネは不審に思っていた。
 キールアは何とか弱点でも探ろうと、ずっと会場中を駆け回る。
 
 (キールア…何で無理して——————)

 レトはずっとそわそわしていた。
 落ち着かない様子で、次元技に追い掛けられるキールアをずっと心配していたのだ。
 仲間だからというのもあれば、幼馴染だからというのもある。
 キールアは次元師で、自分の次元師で。 
 いつかは戦わなければいけない事は、もう覚悟していた事だった。


 「もしかして、貴方は」

 「…ッ」

 ルルネは一旦技の攻撃を止めて、キールアも慌てて姿勢を直す。


 「————————————次元師ではないのですか?」


 遂に、気付かれた。
 それはそうだ。次元師同士の戦いで次元技を使わないのは最早自殺行為。
 にも関わらずキールアは逃げるばかりで1度も次元技を使わなかった。
 その行動に不審を抱くのは当然である。
 ルルネの一言に声も出ないキールアは、何も答えられなかった。

 「へぇ…じゃあ」

 「…————————!!!」
 
 「——————————、死ぬ覚悟はできているのですね?」

 ルルネはすっと腕を上げた。
 キールアの次元技が知りたくてずっとカマを掛けていたのに。
 何だ、と呆れたルルネは戸惑う事なく。

 「第八次元発動——————————、失隔層!!!」

 キールアの頭上に、大きな箱が出現した。


 (何こ、れ————————————!!?)

 
 キールアを中心とした若干ドーム状の箱が、キールアに被さるように落下する。
 あーあ、とルルネは呆れた声を漏らす。
 そしてその場にぺたりと座り込んで、大きな欠伸までした。

 「さて…もう抜けられないですよ?」

 「あの箱…————、一体何なんだよッ」

 レトは声を荒げた。
 キールアは唯、暗いドームの中にいる。
 中が見えない分不安で、何が起こっているのかさえ分からない。


 (此処…何処…————?)


 まるで第二次選考の時のようだ。
 あの洞窟の中にいた…あの時の感覚と似たようなものだった。
 
 「その箱の中からは次元技でも使わない限り出られません。序に言うと普通の人間は死んじゃいますですよ?」
 「……!?」
 「エポールチームには悪いですけど…これは何でもありな“ゲーム”ですから?」
 「て、め————————、ざけんな!!キールアをそっから出せ!!!」
 「無理ですよー。何せこの箱の中——————————、“無酸素空間”ですので」

 ルルネはにっこりと微笑んだ。
 それはもう、心の篭っていない残酷な笑みで。 
 キールアは徐々に薄くなる空気の中で唯もがくのみ。
 その姿を想像しただけで笑えてしまうと————————、そう伝えるかのように嘲笑っていた。

 これは…そう。
 どうしたら生き延びられるかの、キールアに与えられた試練。
 これを突破しなければキールアの道は“死”。

 それを如何打破するかが——————————第2試合の問題となってしまった。