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Re: 最強次元師!! ( No.878 )
日時: 2012/07/02 19:19
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: TDcrpe6v)
参照: http://loda.jp/kakiko/?id

第218次元 1回戦、最終試合開始。

 この展開を、誰が予想しただろうか。
 途端に驚きの声が上がり、誰もがこの展開に胸を躍らせた。
 中盤まで次元技を持っていなかったキールア・シーホリーの怒涛の逆転。
 会場に立っていたキールアは、ひょろひょろと体を不安定に揺らしながらレト達の許へと戻る。
 
 「……おま…キールア…、大丈夫か?」

 色々な事があって、レトはとりあえずキールアに話しかける。
 然し彼女は、手すりに捕まるなり急に倒れた。

 「キールア!?」
 「お、おい…大丈夫なのかよ」
 「——、心配には及ばないわ」

 突然にも、どこからが声が聞こえた。
 その声の主は心配するな、とレトとサボコロに言い放つ。

 「ったく…無茶にも程があるわねこの子」

 突然具現化したのは、双斬や炎皇くらいの身長の女の子だった。

 「「あぁーッ!!?」

 彼女が姿を現した途端に、続けて双斬と炎皇が現れながら大声を張り上げる。
 どうやら彼女を知っているらしい。

 「びゃ、びゃ……ッ」
 「…百、槍……」

 腰辺りまでの、灰色を更に薄めたような髪色。
 とてもキツそうな釣り上がった瞳。
 そして幼くも凛とした声。

 その全てを兼ねた存在こそ、“百槍”である。

 「…びゃくそう?」
 「英雄大六師の1人で……勿論僕等の戦友なんだけど…」
 「…なん、つうか……お、恐ろし」
 「あんた達喧嘩売ってんの?」
 「「滅相もない!!!」」

 炎皇は発言を中断し、双斬は両手を上げてぶんぶんと横に振っていた。
 この会話からしてなんとなく百槍の存在が分かる。

 「うぬ、久しいの百槍殿」
 「あら光節。このバカ共の教育は一体どうなってるの?」
 「教育……ああ、いや。決して悪気はないのでは…?」
 「ふーん……まぁいいけど」
 
 百槍は溜息を吐くと、ちらっと周りを見渡した。

 「あら…雷皇と風皇にはまだ出会っていないの?」

 その一言が放たれた瞬間、その場にいた百槍以外の全員が口を閉じた。
 無理もない。百槍は何も知らなかったのだから。

 「……まずい事でも言ったかしら」

 レトはこの場の雰囲気を変えようと、少し話題を変える為にキールアの方に目をやった。

 「と、ところでさ…、キールアは大丈夫なのか?」
 「大丈夫、とは言い切れないでしょうね。何せ無茶のしすぎよ。当分は目を開けないわ」
 「そうか…」
 「ところであんた大丈夫? キールアの努力、全部あんたに懸かってんのよ」
 「え…あ、あぁ」

 キールアが気絶してまでレトに繋いだ想い。
 その想いは決して無駄にはしないと、レトはとうに決めていた。

 



 「あら、貴方が此処へ来るなんて…珍しくありませんこと?」

 くすくすと、笑うように丁寧な口調の女性はもう一人の女性に言った。
 然しその女性は笑わず、唯一つに縛り上げた綺麗な黒髪を翻して帰ろうとする。

 「貴方も見た通り……キールア・シーホリーの活躍で今はリーダー対決になってますのよ?」
 「…知らんな」
 「あら冷たいですこと。彼女は今後伸びる逸材ですわよ?」
 「それは彼女自身の問題。部外者が口を挟む問題ではないだろうに」
 「あらあら……全く人を褒めるのが嫌いなお方ですわね」

 輝くような長いウェーブの金髪を髪留めで留め、口元に扇子を当てて微笑む女性。
 彼女は黒髪の女性をちらりと見やり、そうしてもう一度微笑んだ。

 「まぁ私的には…貴方程の実力の持ち主が何故、この戦いに参加しなかったのか、という点が不思議でたまりませんけど」
 「…つまらん事を聞くのだな、お前は」

 馬鹿馬鹿しい、とでもいうように彼女は笑った。
 
 「…私は“仲間”というのが嫌いなだけだ。独りの怖さを知らぬ者は、独りには決してなれない負け組みよ」
 「まぁ…貴方程“孤高”という言葉が似合う女戦士は他にはいなさそうですわね?」

 黒髪の女は、その言葉に少し眉を動かす。
 そして何もなかったかのようにその場から消えた。
 扇子を持った彼女はその様子を見てくすくすと笑う。




 『さぁ面白くなって参りました!! 大将を残した両チームの最後の戦いです!!』

 派手なアナウンスが流れ、レトヴェールは歩き出す。
 彼は胸元に光るペンダントをぎゅっと握った。
 義妹が落とした鍵のペンダント。それはいつも変わらずただレトの胸元で煌くだけ。
 ロクアンズという“妖精”との、唯一の繋がり。

 「……負けたりしねぇよ」
 
 それだけいうと、レトはもう一度踏み出した。
 戦場へ、ただ義妹との間にある長い距離を埋める一歩として。



 『最終試合————————、レトヴェール・エポール対リフォル・アーミスト!!!!』

 
 
 吠えるような周りの歓声の中、2人の少年はゆっくり歩きながら現れた。
 相手はベージュ色の短髪の、まだ12にも満たないような少年だった。
 彼はその体型に似合わない厳しい顔つきで現れ、紺のコートから手を取り出した。
 そうして両者は、表に出さない闘争心を醸し出す。

 「ここまで来るとは……意外だった」
 「まぁ、第2試合がお前達にとっちゃ致命傷だったかな」
 
 表の顔で笑っていても、両者は裏に隠した闘志を隠さずにいた。
 そうして、向き合ったままで、



 「「————————、次元の扉、発動!!!」」


 
 2人ともその闘志を燃やすように、叫んだ。
 レトの手元に双斬が現れる。
 然しリフォルの周りには何もなかった。

 (……魔法型、か?)

 レトは少し考えた後、双斬を強く握り締め。
 考えてたって、しょうがないと。
 そう呟いた。

 「————十字斬りィィ!!!」

 双斬を絵の前で交差させ、勢いよく剣を左右に引く。
 十字を象った真空波みたいなものが、リフォルの目前に迫る。
 ギリ、とレトは足に力を入れて相手の出方を伺う。
 リフォルはその小さな手を突き出して、


 「——————、岩撃」


 会場の土を掘り上げ十字の真空波を相殺した。

 「え……」
 「……加減をしたか。良い判断だな」

 小さな子供に似合わない固い口調。
 彼は手を下ろし、それに合わせて土がボロボロと落ちていく。
 
 (十大魔次元かよ……ッ)

 そう、十大魔次元の一つ、『岩皇』。
 土や岩、土地を利用する魔法型で、ロクやサボコロなどが使用しているのと同じ。 
 十大魔次元の技の種類は全て一緒だが、技のタイプが違う為戦いにくいと言う次元師もいる。
 そんな自然物を操る彼を相手に、レトは少しだけ微笑む。

 面白いじゃん、とまるで楽しむように。