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Re: 最強次元師!! ( No.929 )
日時: 2013/07/28 19:43
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
参照: アメブロ、Twitter、skypeなど多様な面で活動中。

 第251次元 嘗ての同士

 ————————ガキンッ!!!!

 会場の隅々にまで響きわたる乾いた音。
 それは、突然のことだった。


 「「——————————ッ!!?」」


 大将たるレトヴェールとシェルが、
 真っ向から、己の持つべき剣で受けて立つ。
 2人は、加速と同時に対峙する。
 剣の鬩ぎ合う音だけが響いた。

 「へえ……おんなじ事考えてたって……事か」
 「さっさと終わらせようと思っても、どうやら無駄みたいだな」

 エンもサボコロも、勿論キールアも。 
 3人は、同時に驚いた。
 大将を討つ戦法ではなく、大将同士が自ら討ち合うという事は。
 どれをとっても、神人世界戦争の形にとてもよく似ていた。

 「ちょっとーっ! こっち向いてよ!!」
 「余所見してる暇ないんじゃね? ほらほら、こっち向けよバカコンビ」

 エンとサボコロの背後から、似たような声が立て続けに聞こえてきた。
 2人が振り向くと、そこにいたのは。

 
 「やっぱてめえらか……——リリエン、リリアン!!」


 少し緑の入った、青色の髪。
 双子の割に似ても似つかない——————リリエン・エールとリリアン・エールの双子組み。
 
 「あんたらとは戦ってみたかったしな。ちょいっとお手柔らかに頼むぜ?」
 「まあ別に、勝たせてなんてあげないけどねっ!」
 「上等だ!! 白黒はっきりつけようぜ!!!!」
 「いつかの仲間が今は敵とは……これ程面白いこともないな」

 そういったエンの言葉を最後に、4人は互いに勝負を開始。
 そう。レトとロクアンズが砂漠を渡っていた時、出会ったのがこの2人だった。
 いや、襲われていたレト達を助けに入ってくれた、というのが正しかっただろう。
 見事ロクに染まってしまった2人は、双子ならではの技術で敵を圧倒。
 一度はロクと互角に戦っていた程の実力の持ち主達である。
 
 「あっらー……あいつら活気づいてんなあ」
 「ホント……男子って……」

 呆れたキールアは、気を取りなおして目の前に向き直る。
 そこにいたのは、薄い青の、若干水色と白に近い髪を持つ少年。

 「久しぶりだなキールア————————そろそろ、結婚してくれないか」

 変態且つ重度のストーカー次元師、シャラル・レッセルがいた。

 「け、結婚って……今試合中でしょうが! てか何言ってんの!?」
 「じゃあ試合が終わったら結婚しよう」
 「……何でそうなる」
 「えーじゃあさ……」

 シャラルは、顎に手をあててうーんと唸る。
 そして何かを思いついたのか、にやっと不敵に微笑んでみせた。

 「俺がお前に勝ったら、結婚してくれる?」

 どういう風の吹き回しなのだろう。
 キールアにはもう、ツッコミを入れる気力さえ残っていなかった。
 然し彼女は、それを否定はせず。
 ほんの少し固まったあとで、うんと頷く。

 「うん、良いよ」

 必死に剣を振るい戦っていたレトが、一瞬にして体勢を崩した瞬間だった。

 「ちょ、お前ら試合中に何やってんの!? つかキールアさん正気ィッ!?」
 「マジで!? ねえマジで!!? よっしゃあ!!! こんなん結婚したも同然——————」

 その時。
 キールアの口元は、すっと、自然に歪む。

 「——————分かってる? 私に、“勝ったら”だよ?」

 その不敵な微笑みで、シャラルも漸く元に戻った。
 賭けているものが何であろうと、試合は試合。
 互いが代表の座をかけて争う場は、ここ、競技場なのだ。
 そして、本気の視線が会場に巡らされた。
 緩んだ空気の流れが、変わる。

 「ああ————————上等だ!!!」

 シャラルが、思い切り手を横に薙いだ。
 次元唱を唱える事もなく、彼の次元技、【氷皇】がキールアの目の前に迫った。

 「第六次元発動————————戯旋風!!!!」

 その全てを、彼女は百槍を器用に振り回して弾き飛ばした。

 「……——ッ!?」
 「第四次元発動————」

 キールアは、銀の槍をしかと握る。

 「————、一閃!!!」

 鋭い矛先を、彼に突き刺す。
 弾き跳んだ彼の体の腹部から、血が垂れた。
 足を滑らせ、少しだけ屈んだ時。

 「何————っ!!?」

 真上に、キールアがいた。

 「——————……白か」
 
 「衝砕ッ!!!」

 一瞬の間も空けず、キールアの怒りの刃は地面に思い切り突き刺さった。
 大きく砕かれた地面の中心に、汗だくのシャラルがいて、彼の顔の横に、キラリと輝く銀の矛先。
 太陽をバックにして、キールアの金髪の髪の毛が風に靡く。

 「やる気あるの?」
 「え、あ、いや……じ、冗談だよ、冗談」
 「へえ……」

 冷たい視線を、ぐさぐさと受けるシャラル。
 キールアは、すっと槍を地面から抜いた。
 
 「私、貴方には負けられないから」
 「……そうか」

 よいしょと言いながらシャラルは立ち上がる。
 
 「そんなに俺と——————結婚したくないんだな」

 そんな真剣な瞳を砕くように、槍の先からぐんとシャラルの顔に伸びた。
 
 「うぉぅっ!? ちょ、ちょっと危ないっすよキールアさん!?」
 「まだ結婚がどうのって言ってるの!? あんたやる気ないでしょう!!!」
 「うるせい!! 忘れたとは言わせねーぜマイエンジェル!!!」
 「は、恥ずかしいからやめてよッ!?」

 ぶんぶんと、槍を振り回し続けるキールア。
 エポールチームの男子3人は、その間何も言わずに戦ってはいたものの、ツッコミを入れたくて仕方がなかった。
 真剣に、代表者を決める決勝戦に臨んでいる筈なのに、この茶番は何だろうかと。
 顔を赤らめながらも必死に戦うキールアを、ちらほらと気にする少年。

 「おいレトヴェール……大丈夫か?」
 「ああ、あの野郎を早くぶっ飛ばす為にも……お前に勝たなきゃなッ!!」
 「おっとっ! 腕をあげたなレトヴェール!!」

 短い剣と、長い剣が対峙する。
 響く金属音と、四方から聞こえてくる轟音と。
 戦いはまだ、始まったばかり。