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- Re: 最強次元師!! ( No.930 )
- 日時: 2013/08/05 00:06
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
- 参照: 【遅れました】アメブロ、Twitter、skypeなど多様な面で活動中。
第252次元 戦闘開始
「第七次元の扉——————発動!!!」
レトは足を滑らせて、シェルから離れた。
二本の短剣をばっと構えて、風を切る。
「十字斬りィィ————!!」
ぶん!! という音が響く。
同時に放たれた真空波は、シェルの目の前で見事に散った。
「……——!?」
彼は、次元技も使わずに、ただ腕の力だけで真空波を粉砕する。
七次元級の技に一切の恐怖も感じずに。
「俺とお前じゃ——————鍛え方が違うんだよ!!!」
ダッ!! と地面を蹴り上げて、シェルはレトの懐に飛び込んだ。
咄嗟の事で判断がつかなくなったレトは、地面に手をついて一回転。
スパッ、と斬られた金色の細い髪が、舞う。
「く……!!」
「隙は与えねえぜレトヴェール!!!」
鈍い音が走る程、素早く空を斬る。
彼は未だに、次元技を使っていない。
ただの剣で、レトの攻撃を避け、受け流し、そうして反撃をする。
それを何度も繰り返し、まるで遊んでいるようにも取れるその行動に、レトは不信感を抱いていた。
彼は、本気で戦っているのだろうかと。
「次元技を使わないとはな……一体どういう風の吹き回しだ?」
「ん……もしかして不満なのか?」
にやっと。
シェルの口元は、卑しく歪む。
レトは、その表情にかっときた。
「全力で来いよ、シェル!!」
片方の剣を、シェルに向けて突き出す。
その矛先を見て、彼はふっとまた笑った。
「全力? ————いいぜ、お前が望むんならな」
鞘に納まっていた、銀の刃が少しだけ見えた。
レトも、腕を構える。
「第四次元発動——————真空刃!!!!」
銀の矛が、牙を向く。
四次元級の次元技に、レトの構えた双斬は思い切り弾き飛ばされた。
遠くまで飛んだレトは、地面に体を滑らせる。瞬く間に土埃が彼を包んだ。
「げほっ! げほ…っ……っつう……」
「おいおい大丈夫か? 今のは四次元級の技だぞ?」
すっと長い剣を払って、シェルは悠々と歩く。
楽しそうに、歩み寄って来る。
「次元技を使うまでもねーよ————、今のお前が相手じゃな」
ぐっと、レトが双斬を握る。
そして、間もなくシェルの腹部を薙ぐように空を切り裂いた。
咄嗟に退いたシェルは、下を見下ろす。
服に、切れ目が入っていた。
「へえ……お前、ぬかりねーな」
もう片方の剣を地面に突き刺して、レトは立ち上がる。
ふうと、一息ついて。
彼もまた、楽しげに笑った。
「お前が使わないなら、俺も使わねえ」
「……っ!?」
「正々堂々————勝負といこうじゃねーか!!!」
レトが剣で風を払い、くるんと回って剣を上へと切り上げる。
シェルはまた後ろへと下がり、レトが上から振りかぶるのと同時に、同じように下から剣を起こす。
ガキン!! と、双方の剣が対峙する。
レトは、左手の剣で突くようにしてぐんと前へ伸ばした。
シェルはそれを難なく交わし、ぐらついたレトの剣を、弾き飛ばす。
姿勢を崩したレトが、シェルが薙いだ剣を交わすようにしゃがみ込んで、足を伸ばしシェルを転ばす。
彼が思い切って上から振りかぶり、シェルは長い剣でそれを防ぐ。
響く金属音に、響かない次元発動の声。
2人は、純粋なまでに剣術で勝負していた。
「あの2人、何やってんだぁ……!?」
「余所見をするなサボコロ!! 来るぞ!!!」
リンと鈴の音が響き、それと同時に長い縄が地面を忙しく這う。
叩き付けられた縄は一度跳ねると、サボコロの足に巻きつき盛大に転ばせた。
どでんという音が鳴ると、甲高い声が2人の耳に届いた。
「あはははは!! かっこわっるーいっ!!!」
「わ、笑うなよリリアン……! あ、あんなに上手くいくとは俺も思って……!」
「てめえらなあ!!!」
そう言ったのと、同時だった。
リリエンが持っていた縄が、一瞬にして切れた。
空には、弓が飛んでいて。
鋭い刃は、見事に双子の間を通り抜けた。
「へえ……やるじゃんおチビくん」
「それ以上言ったら殺すぞ」
「はは! 冗談だよ!」
感情を示さないエンの冷たい表情が殺意を放つ。
いつまでも飄々としているこのチームは、一体何なのだろうと。
その緩い姿勢に恐怖さえ覚える彼は、すっと弓を構えた。
油断は、できない。
「じゃあこっちもいっくよー? ——————鈴鳴!!!」
リリアンがばっと腕を広げ、浮いた鈴が幾つも宙で泳ぎぴたっと止まる。
そして、その鈴から直接脳へと、酷く激しい“音”がサボコロとエンに襲いかかった。
「う……ぐ、あぁぁ——!!」
「頭……が、割れそうだ……!!!」
いつかの、天使の姿が2人の脳裏を過ぎる。
それは非道で残虐で、それでいて優しく。
悪魔の面を被った、真の天使。
「へ……この攻撃、いつかもくらった、よなあ……!!!」
「ああ……、全くだ————!!!」
パキンという、乾いた音は。
少年達の意思が、心の力を貫いた証だった。
「う、そ……!」
「今度はこっちだぜ——————炎柱!!!!」
次元唱を唱える事もなく、サボコロは地面に手をついた。
藍の双子の下から、太い炎の柱が唸りを上げて天へ伸びる。
轟という音は、底深い音色を奏でて景色一帯を包み込んだ。
と、その瞬間。
太い炎の柱は、一瞬にして風を取り巻き勢いよく掻き消された。
「あたしの次元技は鈴というより“音”——————、音であらゆるものを支配する次元技なんだからね!!」
さっき、炎の柱が砕けたのは、不思議な音が鳴ったのと同時だった。
音の波が、小さな余波を連れ次元技を掻き消す。
「つうか、余所見する暇なんて————ないじゃねーの?」
後ろから聞こえる、余裕ぶったような声。
「——————絡縛!!!」
リリエンの腕から伸びる、縄。
その縄は一直線場に、エンの腕目掛けて伸びた。
がしっとエンの腕に巻きつくと、腕輪のように小さくなった縄が、右の手首に巻かれる。
若干の痛みもなく、エンは不思議そうに手首を見た。
「お、おいエン大丈夫か!?」
「あ、ああ……」
外傷はなく、ただ手に巻きついただけの縄をエンはじっと睨むようにして見る。
その様子を見たリリエンは、ただくすっと、嘲るように微笑む。
「はは……っ! じゃあ、そろそろ本気で始めるか? リリアン!!」
「おっけー!! さくっといっちゃおうリリエン!!」
腕を構えるサボコロ。それに続いて弓をぐっと掴むエン。
2人は、同時に駆け出した。
「炎撃ィィ——————!!!」
唸る炎に続いて、エンが弓矢を引き絞った。
「——————、ッ!!?」
然し彼の口から、言葉は紡がれない。
彼は、ぐっと矢を引いたまま、固まっていた。
(な、何だ……!!?)
何度も必死に、心の中で次元を唱える。
然し彼の次元技は、放たれず。
くすっと、リリエンは笑った。
「こりゃあ傑作だなあ!! ——————なあエン・ターケルド!!!」
ぐんと伸びきる縄で、エンは空へと弾かれた。
地面と、思い切り体がぶつかる。
エンは、細い視界の中光節を手繰り寄せた。
「残念だよ、エン・ターケルド」
リリエンは、エンを見下ろすように、そこに立った。
にやっと、口元が歪む。
「——————————お前はもう、次元技を使うことが“できない”んだよ」