コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 最強次元師!!【親スレに追記しました】 ( No.941 )
- 日時: 2013/10/23 13:39
- 名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
- 参照: 本編の更新ができないのでちょこっとサイドエピソード書きます。
えー。私も毎日小説が書けなくて薬切れみたいになっているので
ちょっとしたサイドエピソードを載せようかと思います。はい。
後々本編に関わってくるかなっていう程度のものです。
現段階ではふーんこんなお話あるんだくらいの気持ちで読んでいてくれればなと思います。
では。
『E FIEDLA』
いつからか彼は人間を嫌っていた。
もしかしたら、この世に産み落とされたその時から、そうだったのかもしれないが。
汚れきった、人を信用していないようなあの瞳で、人間を観察してきた。
「……だから嫌なんだよ」
街中が、戦火に呑まれていく。
紅い景色の中で、少年の泣き叫ぶような声も聞こえてくる。
焦げた人間が自分の足元に転がっているのに気がついた。
彼はそれを睨んだ。動かなくなった黒い塊は、ただぐったりと地面の上にあった。
この死んだ人の山が、一体何を生み出すというのだろう。
この業火の中で零れた涙は、その炎を掻き消す訳でもないのに。
「あ……あんた! 助けてくれ! み、味方なんだろう!?」
声が聞こえて振り返ると、そこには中年の男が何かを必死に叫んでいた。
彼に言っているのだろうか。彼は長い髪をふわりと翻して、彼と目を合わせた。
死んだような、淀みきった瞳で。
「味方……?」
「こっちにはもう水もねえ! どうか、ど、どうか……!」
「知らねーよ。俺には関係ねえ」
彼は男を相手にもせずに、ただ目的もなく歩き始めた。
好き好んで、こんな体に生まれてきた訳でもない。
好き好んで、こんなものを任されている訳でもない。
自分に感情がある事を疎ましく思う。それももう何度目であろうか。
枯れきった街を、小高い丘から眺めていた。
残ったのは、邪魔なほど積まれた人の塊ぐらいだろう。
焦げた匂いを風が運んできた。彼は目を細めた。
街の中心で、未だに人々は泣いていた。
酷く愚かだと、彼は思った。
自分にとって困る事があれば、阻止はする。
然し自分にとって問題のない事ならば、全て放ってきた。
彼は人間が嫌いだ。
弱いし、五月蝿いし、何より邪魔だ。
戦争を起こすのも、その戦争を非難するのも人間なのだ。
悪循環の中を、まるで泥沼の中を這うように生きる生き物なのだ。
その泥沼の中に、光る宝石があると信じて今日も泥を呑む。
彼はそういうのが嫌いだった。
何百年も経った。
彼は未だに人間が嫌いだった。
そんな彼は、自身も想像していなかった事態に陥る。
彼は恋をした。
綺麗な金の髪は、風に溶ける程滑らかであった。
真っ白い肌の上には傷も出来物もない。とても綺麗な肌だった。
ただ、彼が彼女に心を奪われた理由としては、それだけではなかった。
今まで外面が綺麗な女性には何人も会ってきた。
妖精とも謳われていた女性にも目が眩まず。
凍りきった、永遠に溶けることのない彼の心を掴める女性はいなかった。
はずだったのだ。
ただ千年経ったこの世界で。
彼はただ一人、彼女に恋をした。
そうして彼女と恋に落ちて、彼女と家族になった。
子供にも恵まれて、幸せだった。
人間が嫌いだった。でも今は違う。
大嫌いだったものを、今まで目を背けてきたものを、
今更になって、彼は愛し始めたのだ。
生まれた子供に、昔出逢ったとある男の名前をつけた。
正義を背に、英雄を名としていた、とある男の。
その男が誰だったのか、千年も経った後で漸く気づいた訳だが。
彼は幸せだった。
自分が愛した女性がたとえ、自ら死を選ぼうとも。
彼女は死んだ。
この世に、彼と愛し合った証を、もう一つ『××××』して。
彼は思い出した。
彼女と出逢うずっと前に、人間を酷く嫌っていた自分を。
彼は思い出した。
彼女と愛し合っていた頃の、幸せな日々を。
彼は、思い出した。
「‘‘負けんな‘‘……か。誰の言葉か知らんが、信じてみるよ————‘‘レトヴェール‘‘」
そうしてここから、漸く始まる。
運命に抗う、義兄妹の戦記。
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彼らの物語はここから始まります。
ネタバレなるすれすれです。怖いですねー。
もしかしたら察してしまった人もいるのでは、とヒヤヒヤしています。
それはそれで嬉しい気もしますね。
本編のデータが吹っ飛んだのでこういうものしか書けませんが、
少しずつ、皆さんに最強次元師の秘密を理解して頂ければと思います。
題名である『E FIEDLA』。これは今よりずっと後に意味が分かります。
頭の隅の方にね、置いておいて頂ければ嬉しいです。
今後も本編の更新まではまだまだ時間が長そうなので
色んな登場人物の、色々なところを皆様に知って頂きたい気持ちも兼ねて
こういう形で小説を執筆していこうと思います。
ではでは。