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Re: 最強次元師!!【外伝(!?)不定期更新中!!】 ( No.942 )
日時: 2013/10/30 21:42
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
参照: 本編の更新ができない代わりにちょこっとサイドエピソード書きます。



「最強次元師!! 外伝」


【蛇梅学園!!】


 第001時限

 「ち……こくだぁっ!!」

 夏の暑さを引きずった風が、とある少女の長い髪の毛を揺らした。
 彼女はパンを口に咥え片手にぺたんこなバッグを携えて懸命に道を駆けていた。
 灰色のアスファルトが熱を発して、彼女の足の裏を焼くように太陽に照り出されている。 
 右目に謎の傷を負っている彼女は、ふと街角を横切ろうとして、

 「うわぁッ!?」

 ずでーん! と何かに衝突してしまい、そのままひっくり返ってしまった。
 いてて、と頭を抑えながら彼女はむくっと立ち上がった。
 ちらっと視界を開くと、そこには。

 「……あ?」

 よく見知った、義兄の顔があった。

 
                                   *


 「「遅れましたァーっ!!」」

 響くチャイムを遮るように、勢いよくドアの開く音が鳴る。
 その瞬間にクラス中がどっと笑いに満ちあふれた。
 今朝の少女、ロクアンズ・エポールとその義兄レトヴェール・エポールは荒く呼吸を乱す。
 そんな2人の姿を見たクラスメイトの下衆顔といったら、もう。

 「おーレトヴェール、お前が遅刻とか珍しいな。寝坊か?」
 「いえ原因はこのクズです」
 「そうか」
 「ちょっと待って!? まずコールド先生は何故あたしに触れない!?」
 「とりあえず遅刻の理由を聞きたいんだが……どうだ? レト」
 「俺が普通に起きて普通に登校してたらこのクズにぶつかりました」
 「よし十分だ」
 「不十分だよ!! ていうかこの不穏な会話何!!? ていうかレトあたしの事クズって言った!!?」
 
 ロクアンズ、略してロクは獰猛な獣の如く2人に威嚇の姿勢を向けていた。
 そんなことを気にもせずにレトヴェール、略してレトは冷淡に会話を進める。
 コールド先生においてはロクの言葉に応じもしないご様子で。

 「大体何でレトの遅刻は珍しいとか……」
 「黙れ遅刻常習犯」
 「いえ、あれはわざとじゃないんです分かって下さい先生」
 「分かった。あとでロクには特別課題を与えてやろう」 
 「なにゆえ!?」
 
 ロクは解せぬ、といった表情で驚いた。
 
 「……んで、たかがぶつかった程度で何故遅刻する?」
 「ロクがパンを一斤咥えてたからです」
 「一斤!?」
 「普通一枚じゃね!?」
 「そこから既にアウトということか……」
 「ちょ……! レトの不注意であたしのパンが潰れたんじゃんか!!」
 「お前がパン如きに世紀末かのような絶望の叫び声を上げるからだろうが!!」
 「如き!? パン一斤はあたしにとって心臓の一部ですよ!!?」
 「知るかよ!! せめて人生の一部って言え!!」

 朝からハードで意味の分からない兄妹喧嘩だなとクラスメイトは思った。
 くすくすと、金髪の少女は堪えきれないという表情で笑っていた。

 「分かった分かった……とにかく座れ。2学期早々暴れられちゃ困る」
 「分かりました。では速やかに殺ります」
 「殺るな。生かせ」
 「先生!! 一時間目の授業はレトヴェールの抹殺研修にしましょう」
 「は? 殺られる前に殺るし」
 「じゃあその前に殺る」
 「分かったじゃあその刹那に殺る」
 「裏の裏を読んで先回りして更に殺る」
 「うるせーよ!! 兄妹で殺り合うな!!! 外伝にまでグロっぽいの持ってくんな!!」
 「「はーい」」

 席の近い2人はいつも以上の剣幕で睨み合っていた。
 夏休みが終わって初日からこのペースだと体力が保たない、と思う観衆であった。

 「まあ夏休み終わって初日なわけだが……見た感じ皆大丈夫だな。 
  夏休みを引きずらんよーに、3週間後のテストも張り切って取り組むように! 以上!」

 ガタガタガター、と椅子をしまって皆は気だるそうに挨拶をした。
 ロクが色々と不満そうに席に座ると、ぽんと誰かに肩を叩かれた。
 ぱっと、振り返る。

 「おはようロク。朝から散々みたいだね?」

 にこっと天使のように清く柔らかく微笑んだ彼女の名はキールア・シーホリー。
 二つに結った金色の髪の毛は輝くようにすべすべとしていた。
 大きな金色の瞳は、ロクの顔を覗き込む。

 「キールアーっ! 聞いてよレトがねーっ!!」
 「はいはい。でもロクも寝坊とかしちゃダメだよ?」
 「はあーい……」
 
 よしよし、とキールアは机に突っ伏したロクの頭を撫でた。
 そんな彼女の優しい手に包まれていたロクは、ガツンときた背中の衝撃に驚いた。

 「いだッ!?」
 「ちょ、ロク大丈夫!?」
 「……くっそお前のせいでこっちは新学期早々遅刻だよこんにゃろー」
 「レト……まだ根に持って……ぐっ……」
 「つうかお前のパン弁論に付き合ってたせいで遅れたんですよ? ええ?」
 「まあまあ……そんくらいにしてあげなよレトー」
 「キールアはロクに甘いんだよ。幼馴染だからって……」
 「そんなことないよーっ! レトがロクに優しくないだけなんじゃないのー?」
 「けっ! 言ってろ言ってろ」
 「もうー……」

 そう、この3人ロク、レト、キールアは幼い頃からの幼馴染。
 何をするにも、何処へ行くにもいつも3人は一緒だった。

 「ちっくしょレトのやろー……」
 「ロクも抑えて抑えて。これじゃキリないって」
 「そーだね……なんたって、今日から普通に寮生活に戻るし!」
 「そうそう! 2学期は面白い行事もたくさんあるみたいだしね」

 ロクとキールアが和気藹々とそんな話をしている時、レトも別の人物を会話を交わしていた。
 紅い髪にバンダナを巻いた少年サボコロ・ミクシーと、
 猫によく似た紺色の髪型をした小柄な少年エン・ターケルド。
 彼らはいつもレトとつるんでいるメンバーだった。

 「お前も遅刻とかすんだな! なあ優等生君?」
 「茶化すな、つか全部ロクのせいだからねマジで」
 「うむ……貴様も兄ならば回避できたのでは?」
 「できるかよ……あんな妹と会話を交わしたが最後だ」
 「ロクはひっでー言われようだなおい」
 「ああいう奴なんだよ……まともじゃねえ」

 そう言ったあと、レトはちらっと教室を見回した。
 
 「がネストがネストーっ! 次はこの服ーっ!♪」
 「うわぁぁぁっ!! い、いやそれはメイド服ですよルイルーッ!?」
 「っ! ……ちょっと、勝手にぶつからないでくれる?」
 「ああ? わりいな、小さすぎて分かんなかったわ」
 「……何ですって」
 「あわわ……み、皆さん……! 教室に戻りましょうよう……っ!」
 「げっ!? なんでそんなスカート長いのセルナ!? もう2学期だよ!!?」
 「み、ミルさんが短すぎるんですよーっ」
 「えー……普通じゃん?」

 レトは、まあ、と付け加えて、


 「この学園にまともな奴はいないと思うけどな……」

 
 そう、一人で呟いた。
 第一、とまた一言加えた。

 「お前らクラス違うだろ!? 何でいんだよ!!」
 「へ? だってロクちゃんとレトちゃんが喧嘩してるって聞いたからーっ♪」
 「ぼ……僕はルイルの付き添いです……」
 「そういや何でだっけ?」
 「……アホ」
 「ぼ、僕は皆さんが1組に走っていくのを見て、その……止めに……」
 「あたしはもちろんレトがいるからだよーっ!!」
 「私は、その……ミルさんに、拉致されました……」
 
 平気で他クラスに乗り込んできて惨事を巻き起こし兼ねない連中だ。
 レトは一瞬で察した。
 
 (うん……分かってた。何も変わらないんだってことくらい)

 

  
 本編と何が違うのだろうか。
 強いて言うなら舞台が戦地から学園になっただけなのだ。
 最近の本編では見られない蛇梅隊+αの滅茶苦茶なコメディストーリー。
  
 こんな感じで始まります。