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Re: 最強次元師!!【外伝(!?)不定期更新中!!】 ( No.943 )
日時: 2013/11/01 23:57
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: kcbGQI7b)
参照: 本編の更新ができない代わりにちょこっとサイドエピソード書きます。

 第002時限 「いざ男子寮へ」

 3週間後に控えた定期テスト。
 何で新学期早々そんなものをやるかというと、理由は単純である。
 さっさとテストを終わらせて、文化祭、つまり‘‘蛇梅祭‘‘を大いに盛り上げる為。
 この学園は成績よりも、より楽しく学園生活を送ることを目的としている。
 正直テストとかいうものはこの学園にとってお飾りに過ぎない。
 お祭り事を普通以上に盛大に盛り上げる為にできるだけ時間をかけるのだ。
 それで早速3週間後にテストが控えているわけである。

 「テストやだなー」
 「いいじゃん、ロク頭良いしっ!」
 「ま、まあ否定とかはしないけど……」
 「浮かれていると赤点を取るぞ、ロクアンズ」
 「そうそう赤点とかね……ってゴッド!? うっわびっくりしたァ!」
 「クラスメイトにその対応はないだろう……」

 長い黒髪を一つに縛りロクの背後に現れた彼は、ゴッド。
 もちろんあの神族のゴッド様である。
 
 「まあそんなこと言ったら、ゴッドも危ないけどね☆」
 「黙れデスニー。そして僕の視界から消えてくれ」
 「え〜? 背後にいるんであって、別に視界には入ってないよ?」
 「分かったそのまま消えろ」
 「それはムリかな☆」

 ゴスッ!! という鈍い音がデスニー耳に届いた時にはもう遅かった。
 彼は脇腹を抑えて悶え苦しむ。
 飄々とした性格で、面白がってゴッドについてまわっている彼の名はデスニー。
 運命の神と謳われてはいるが、彼の性格上そんな物騒なものでもない。
 肩で跳ねた髪型と一部交差した前髪が特徴的。
 この2人もまた1組に属しているクラスメイトだ。

 「あの2人って何だかんだで仲良いよねっ」
 「そ、そうかな……結構、バイオレンスな……」
 「ま、まあそこは無視して……ね?」

 教室を見渡すロク。
 夏休みが終わったというのにこのナチュラルハイな雰囲気は変わらない。
 序でに通常ではあり得ない神族と人族の交流の様子が見て取れる。
 実に微笑ましいなあ、と勝手に一人で納得した。

 

      *


 「てなわけで勉強を教えて下さい」
 「ふざけんな死ね」
 「何で!?」
 
 ここは男子寮の一室、レトヴェールと双斬の部屋。
 もう一度言うが、ここは男子寮である。
 もちろん女子禁制であることは前提条件な訳だが。
 何故だがその部屋にロクは当然の如く居座っていた。

 「だって前回のテストお前学年2位だったじゃん」
 「まあね」
 「キメ顔すんな帰れ」
 「何で」
 「ここ男子寮な」
 「おう」
 「分かってんなら帰れっての……!」
 
 ピリピリと両者の間で火花は散る一方。
 その隅で双斬はベッドの上で転がっていた。
 バレたら停学どころではない。と、思う。
 
 「良いんじゃないのー? バレないと思うし?」
 「アホ。そういう問題じゃねえ」
 「まあまあ兄妹なんだから見逃して?」
 「帰れ。嫌なら自室に戻れ」
 「同じだよそれ」
 
 大体なあ、とレトがいいかけたその時。
 ガチャと、何だか部屋のドアが開くような音が鳴った。

 「こ、こんばんわー……」
 
 見回りの先生かとドキッとした3人が咄嗟に振り向くと、
 そこにいたのは、先生どころか男子ですらなかった。

 「ロクが拉致されたって聞いたんだけど……ってあれ? 3人ともどうしたの?」
 「お前らは何でそうナチュラルに男子寮に入ってくるの……?」
 「ここまでくると結構勇者だよね……」
 「キールア! 勉強教えて!」
 「お前ら相部屋だろ!! 自室に帰れ今すぐに!!!」
 
 キールアは口元に指を立てて唇に押し当てた。
 静かに、という合図という事が一瞬にして分かる。
 
 「つうか拉致じゃねえよ。それは問題だろ」
 「え、そうなの? まあそれは良いとして」
 「いいいや良くねえよ!!?」
 「ほらロク、早く帰るよ? レトも双斬もエンもサボコロも迷惑してるよ?」
 「ちょっと待て」
 「そうだぜ、お前だけぬけがけは許さんぞロク!」
 「貴様は確か前回学年2位だろう。何を教わることがある」
 「そうそうレトも暇じゃないしって……って、レト?」
 
 一人だけこの場で状況についていけない男がいた。
 彼はぷるぷると腕を震わせた。
  
 「だから何でお前らはここに集まってくんだよ————ッ!!!!」

 彼は思いのままに力強くそう叫んだ。
 その怒号が、悲劇を呼ぶとも知らずに。
 
 『……ん? 何だレトヴェール、何かあったのか?』

 この声は、と皆して息を呑む。
 1組の担任、コールド先生の声に間違いはないだろう。
 一瞬にして全身から汗が吹き出していくのがわかった。

 「ど、どどどどどうする!?」
 「ちょ、ロクもうちょっと小声でしゃべれ!」
 「俺たちはどうにかできるけどロクとキールアはまずいぞ!?」
 「とにかく2人ともどこかへ隠れろ!」
 
 あわわわ、と慌てていると、ドアノブに手をかける音が5人の心を氷づけにした。
 連帯責任でここにいる(寝ている双斬を除く)全員に処分が下る。
 何としてもそれだけは避けたい一同は何故か全員で次元の扉を開くような感覚に目覚めた。
 
 そう、ただ一人を除いては。

 「もう遅いから騒ぐのはやめ……」
 「どりゃぁぁぁぁぁッ!!!」
 「————うぐぁぁぁッ!?」
 「って何やってんのロクーッ!!!?」
 
 刹那。ただ一人を除く4人は絶望の淵に追いやられる未来を見た。
 ロクは部屋に足を踏み入れたコールド先生を見事なままにノックアウト。
 繰り出された飛び蹴りが華麗に決まった、とふっとロクは口元を歪ませた。
 もちろんの如く頭に拳骨が下る。

 「驚きの痛さッ!!」
 「うるせえ!! お前のせいで退学になるかもしんねーんだぞおい!!」
 「うっわ派手にやったなー……俺もやりゃ良かったな」
 「バカは一人で十分だこのバカ」
 「ああん?」
 「やっちゃったねー……」

 いたた……とロクは頭を抑えてうずくまっていた。
 非常にまずい事態に陥ってしまった5人。
 まず男子寮に女子が忍び込んできていること。
 それを隠蔽しようと見回りに来たコールド先生の腹に見事な飛び蹴りをお見舞い。
 挙句ロクに反省の色は見えない。

 「ちぇー……殺られる前に殺るっていうことわざまであるのに……」
 「ねえよ。勝手に常用的なものにすんな」
 「それよかどーすんだよ? 先生泡吹いてんぞ」
 「ふむ……やはりこの隙に逃げるべきでは?」
 「まあそれが無難だね……じゃあ飛び蹴りはサボコロのせいにして」
 「今キールアがさらっと俺を犠牲にしなかったか?」
 「と、とりあえずぅ……」

 「「退散っ!!」」

 ロクとキールアが、ばっと窓に向かって駆け出した。
 窓の鍵に手をかけて、いざ外へ出ようと夜風を浴びたとき。

 突然背後から、びゅんと風を切る音が2人を捕らえた。

 「……ん?」

 それは紛れもない、‘‘鎖‘‘な訳だが。

 
 「とりあえず……————覚悟は出来てるんだよな」

 
 「「「「「はい」」」」」


 それは般若のような顔が、5人を素直な人間(神含む)へと変えた瞬間だった。