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Re: 最強次元師!!【外伝(!?)不定期更新中!!】 ( No.944 )
日時: 2013/11/15 23:57
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw (ID: Q3zV8Sch)
参照: 本編の更新ができない代わりにちょこっとサイドエピソード書きます。

 第003時限 「免罪かけて、本気で闘り合え」

 「……よーし、これで全員揃ったな」

 ざわめく会場もとい蛇梅学園体育館の中。
 その中央で、先日問題を起こした5人が一列に並ばされていた。
 目の前にいるコールド先生の剣幕は実に厳しいもので、5人は睨まれているような気さえした。

 「先生!」
 「何だロクアンズ」
 「お腹空いたんで食堂行ってきていいですか!」
 「ダメだ」
 「ど、どうして!?」
 「食堂はもう閉まって……ってお前何の為にここにいると思ってるんだ」
 「あれ、何だっけ」
 「今すぐ縛るぞおい」

 どっと笑う観衆。
 何を隠そうここにいるのはあの5人と先生だけでなく、殆ど全校生徒。
 体育館はほぼ満員で、5人の公開処刑を見ようとわざわざ放課後に集まってきたのである。
 その中には当然のように教職員も混ざっている。

 「とりあえず、お前ら5人には今から昨日の反省としてある課題をやってもらう!」
 「ある課題ぃー?」
 「レポートの提出とか?」
 「んな回りくどいことするか。ただの‘‘抜き打ちテスト‘‘だよ」
 「「「「「抜き打ちテスト?」」」」」

 ごほん、と一つ咳を入れた。
 彼は続ける。
 
 「若干1名を除いてお前らは成績優秀者ばかりだ。お前らにとっては、
  ペーパーテストとか、レポート提出とかに大した意味はないのだろう」
 「待て、若干1名ってまさか俺のこと……!?」
 「そこで、お前たちにチャンスをやろうと思ったわけだが……」
 「え……チャンス、ですか?」
 「5人の中で、たった1人だけ処分を免除してやる」
  
 5人はざわついた。
 それどころか観衆も。
 
 「う、うそ……!」
 「ただし、俺が今からいう課題に合格したら、だ」
 「それはどんな内容なんだ?」
 「それは——————‘‘何でもありのサバイバルゲーム‘‘だ」

 5人は一斉にどよめいたが、それと同時に理解した。
 この学園で、この物語で、サバイバルゲームといったらあれしかない、と。

 「俺が求めるのは別にお前らの成績や態度じゃない。お前らの次元師としての素質だ。
  学園内では基本元力行使は禁止されている。それ故に今からは思う存分暴れろ。
  ————————最後に生き残ったたった1人だけが、処分免除を手にする」

 この場には成績優秀者ばかりが集っていた。
 それは学力的な面でもありながら、且つ技術的な面でもある。
 本校では次元の行使は大変危険な為原則禁止になっている。
 然しこの5人は学園内技術力テストでも上位10位に入る程の実力を持っていた。

 「今からルール説明するからよく聞いておけよ。おいこらロク寝るな。
  この後お前らには科学部が開発した異空間に入ってもらう。
  そこでは元力の性質と、その攻撃力だけが変わる。
  相手に次元技をしかけダメージを与えるのが普通だが、今回そこに痛みは伴わない。が、
  代わりに自分の元力が削られる。つまり与えた元力分相手の元力を削ることができる。
  数値に表し、元力が500以下になった者から強制退場。失格だ。
  最後まで持ち前の元力をキープした者が勝利する。……これで説明は以上だ。
  何か不明な点はあるか?」
 「ふむふむ……よくわかんないけど、とりまオーケー!」
 「つまり自分の元力と相手の元力を計算しながら戦うのか……」
 「自分が与えた分ってことは、それと同時に自分の元力もなくなるから……」
 「個人で戦い抜くには厳しいのか……? いや、それは相手の元力量によるか……」
 「難しく考えてたらキリがねーよ! さっさと始めよーぜ!!」
 
 (各々思うところがある、か……ま、じっくりと悩めよ……?)

 2名ほど戦闘準備満タンの様子ではあるが、他3名は理解に苦しんでいた。
 さあこの試合、どういった展開を迎えるか。
 よく考えた者が勝ち残るか。
 元力に自信のある者が勝ち残るか。
 5人は、いざ異空間システムの中へ。

 「ねえ……ロク」

 ちょんちょん、とキールアは小声でロクの肩を叩いて彼女を呼び止めた。 
 くるんと回ったロクはキールアに耳を傾ける。

 「ん……何?」
 「あたしが思うに、多分皆、ロクに勝たせてくれると思うよ?」
 「へ? な、何で?」
 「この中で一番処分が重たいのロクだし、皆そこまで鬼じゃないしっ」

 ちらっと、ロクは男子勢の方へ顔を向けた。
 ひそひそと何かを話している様子で、度々レトがこちらに目線を配っている。
 これは、とロクもぱっと顔を元に戻した。
 
 「ほ、ホントかな〜?」
 「大丈夫だって! 皆を信じよ?」

 ね? とキールアに半ば無理やり納得させられたロク。
 彼女もうん、と首を小さく縦に振った。
 いよいよ始まる。

 「お前ら、準備良いかー?」
 「おい、ロク」

 コールド先生が声を張り上げた直後、レトは小声でロクを呼び止めた。
 さりげなくロクはレトに目配りをした。

 「な、何?」
 「さっきあいつらと話あったんだけど、お前のこと————」
 「うん」
 「————————全力でぶっ潰すことに決めたから」
 「うん————んぇっ!?」
 「よし————試合開始だ!!!」
 「「「次元の扉————————発動!!!!」」」
 「ち、ちょちょちょーッ!!?」

 突然のことすぎてロクの思考回路は現状についていけなくなった。
 真顔且つ冷徹な口調で義兄の口から放たれた死刑執行宣言。

 「八斬切りィィ——!!」
 「うわァっ!! ま、ちょ、待ってってば!!!」
 「隙なんか与えてたまるかこの問題児代表!!!」
 「それは酷い!!」
 「ほぼお前のせいで俺たちまで被害被ったんだぞ!?」
 「……俺たちは別としても、レトはとばっちりもいいところだ」
 「ああ、ホントにな。ということでさっさと投降しろオラ」
 
 変な男の友情が陣を成す。
 まあ、無理もないと言い切れるのだろう。
 昨夜の一件は9割方ロクのせいであるが故。
 義兄のレトに至っては巻き添えも同然。
 この怒りを如何で発散しようかと今正にロクに殺意を向けている訳だが。
 こればかりは本当にどうしようもないと観衆も思っていた。

 (いや、確かに元力の問題的にもそうするのが良いんだと思うん、だけど……)

 「どうしたロク? 今更逃げようとかバカみたいなこと考えてないよな?」
 「いくらロクでもそれはねーよ!」
 「すまんが今はレトの見方をさせてもらおう……流石に報われん」
 
 (な、何だろう……この、理不尽な感じ……)

 そんなことをうだうだと考えている隙もなかった。 
 バッ、とロクも咄嗟に振り返る。

 「十字斬りィ——!!」
 「ぅ、く……雷撃ーッ!!!」
 「もらったァァ————!!」

 頭上には、掌を地に向けたサボコロがいた。
 左手にはエンがいる。弓を構えた彼も交わしてサボコロの炎を掻き消すか。
 そんなことを、刹那の間で必死に考察することなど無理も同じ。
 まずい、と直感的にロクはそう感じた。

 その時。

 「————戲旋風!!!」

 放たれた弓が、頭上から舞い降りる炎が、一瞬にして無に還った。
 くるくると器用に槍を振るう彼女は、焦った表情でそこに立っていた。
 ふう、とため息を吐く。

 「何だかもう凄い展開だけど——————私も忘れないでよね!」

 火花は散る。
 繰り返される次元技の応酬が、今正に5人の本気を導き出す時。

 本編以外でこんな展開を築いていいものか。
 試合に夢中の5人以外の観衆は、心の中でそっと呟いた。
 
 仲間同士の醜い罪の擦りつけ合いは、まだ始まったばかりであった。