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Re: 封魔士軍団—アボロナ— ( No.1 )
日時: 2010/02/24 16:15
名前: アビス (ID: 3CAtWHbZ)

1話




どうしてこんなに血の臭いがするんだ。鼻を押えたい、でも手が動かない。
そうか、この臭いの原因は俺か。心臓を貫かれて頚動脈が切られて血が噴出しているんだ。

「・・・・・!!」

近くで誰かが叫んでいるがもう聞こえない。でも血の臭いと一緒に
僅かに良い匂いがしてくる。この子の香水の匂いかな。

「あ・・りが・・と」

なんでお礼を言ったのか自分でもわかんない。でもなぜか言いたくなったのだ。
もう意識が消えていく。これでもう目が覚めることはないだろうな。
ここで、俺は死ぬ。



「って死んでたまるかーーーー!!」

ものすごい勢いでベットから起き上がる。

「あ・・あれ?夢?」

俺の胸を触る。ちゃんと鼓動が聞こえる。

「よかった。夢か〜」

「本当に夢だと思うのか?」

不意に声に驚きながらも顔を向ける。そこには女性が立っていた。
初めて見る顔だがなぜか久しぶりにあった感じがした。

「あんた、俺の部屋になに勝手に入ってんだよ」

すると女性は呆れた顔で

「君は鈍い、というか馬鹿だな。君の部屋はこんなにも広いのか?」

確かに女性と俺とでは結構距離がある。
部屋を見渡すとそこが自分の部屋でないのは一目瞭然だった。

「ここは・・どこだ?」

「その質問に答える前に今から君と一緒に来てもらう」

「デートのお誘いか?」

—バコ!—

女性が自分の頭をどつく

「いって〜」

「君が今感じている疑問すべてを答えてくれる人に合わせてやるんだ」

女性はまるで何事もなかったかのように話し、そして扉に向かった。
俺は仕方なく着いていく。そこは家というよりも屋敷に近い状態だった。
長い通路を渡った後、女性は一つの扉の前で止まりあける。

ギィという音とともに開かれた部屋は社長室のような感じだった。
そしてそこには一人の物腰の柔らかそうな男性がいた。
すると、女性はすぐに跪いた。ぼけっとしている俺をみて

「君もやるんだ」

そう言って強制的に跪かされる。男性は笑みを浮かべ

「そんな暑苦しいのは止してくれっていつも言っているでしょう」

そういうと、女性はさらに身をかがめ

「いえ、統帥は我らの誇り、象徴のような存在ですので」

「それを暑苦しいといっているんですがね・・・
そんな体制では話もしずらい。立ちなさい」

二人が立つと男性は頷いて俺の方を見る。

「初めましてですね。私は神路 爽輔(かみじ そうすけ)と言います。
あなたの名前は?」

「・・獅子山 琥空(ししやま こくう)」

相手に習い自分も名前を名乗る。爽輔、統帥は頷くと

「琥空さんですね。まずあなたの疑問の一つ目ここはどこかについて説明しましょう。
ここは封魔士軍団、アボロナの本拠地『トル二ス』です」

「封魔士?アボロナ??」

琥空は意味の分からない言葉に首をかしげる。統帥は困った様子で

「この調子じゃあ、どんどん疑問なことが増えていきますね」

すると、女性が前に出て

「統帥、細かい話は私がして置きます。話の続きを」

「そうですね、琥空さん。とりあえずその事については後で彼女に聞いてください。
それでは、次に君がどうしてここに連れてたのかについて質問します。
率直に言うと君は一度死んだんです。心臓を貫かれ頚動脈を切られて、ね」

「ば・・馬鹿言うなよ。現に俺はちゃんと生きてるし、心臓だってちゃんと・・・」

声をあげる琥空に対して統帥は相変わらずニコニコした顔でとんでもないことを言う。

「それは本当にあなたの心臓ですか?」

「え?」

・・・・・・

「冗談ですよ」

「はぁ!?」

この人、読めない。そう思った時統帥の顔がすこし真面目になる。

「まぁ、厳密には間違っていませんよ。
あなたが一度死んだのは本当ですし、あなたの心臓だって本当は止まっているんですよ。
今あなたを生かしているのはこれです」

そういって、取り出したのは小さく光る綺麗な玉。

「これは心核(コア)と言って超エネルギー凝縮体です。
これが今のあなたの新たな心臓として動いているわけです」

「いったい誰が・・」

「君たちの後ろにいる人物ですよ」

「!!」

—ガタン—

物音がして振り返る二人。そこには閉じといた扉が僅かに開いていて
そこから一人の女の子がこちらを心配そうに覗き込んでいた。