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Re: 封魔士軍団—アボロナ— 6話更新 ( No.34 )
日時: 2010/05/18 18:20
名前: アビス (ID: 3CAtWHbZ)

7話




「ん、んん。ここは・・・」

琥空が目を覚まさすと、そこは前と同じ部屋だった。
だが、そこにいた人物は違っていた。

「あ、琥空さん。良かった、目を覚ましたんですね」

鈴華がこちらに穏やかな笑顔を向けている。が、どこか疲れている。

「刹那に随分としょっぴかれたようだな」

琥空が笑みをこぼしながら言うと、鈴華は肩を落として

「うう、はい」

本当に相当応えているようだ。

「安心しろ。もし今度怒られるような事があったら俺が守ってやるよ」

その言葉に一瞬驚いた様子を見せたがその後苦笑をもらして

「その時は琥空さんも一緒に怒られることになりますよ」

「う!」

刹那の説教を聞くのはある意味死ぬのより辛いかも。そんな風に思っているのが
顔に出たのか、鈴華が琥空の顔をみながらクスクスと笑っている。
その時、ドアが開く音がした。目を向けるとそこにいたのは刹那ともう一人

「統帥さん」

「気分はどうですか?琥空さん」

統帥がこちらに歩み寄ってくる。琥空はベットから体を起こす。

「大丈夫だ。心配をかけたな」

「いえ、無事でなによりです」

そこまで話すと統帥の顔は少し真剣になった。

「二人から話を聞きましたよ。どうやらあなた自身から封器の型が現れたそうですね」

「型?・・ああ、あの蛇亀のことか」

「出してもらってもよろしいですか?」

「ああ。お〜い出てこいよ、蛇亀」

その呼びかけに琥空の近くに光が集まる。

『誰が蛇亀じゃ、玄武といっておろうが』

「あなたが玄武さんですね」

統帥は玄武の近くに行くと礼儀正しくお辞儀をする。

「私は神路爽輔。封魔士軍団を指揮している者です」

『知っておる。ワシとこ奴は繋がっておるからのう。それで、ワシを呼び出して何のようじゃ?』

「いえ、大した用はないです。ただ部下の封器を見ておきたくて」

『じゃったら、無駄じゃぞ。こ奴はまだ力を持て余しているからの。
ワシ、堅壁の玄武の他に粉砕の青龍、俊華の白虎、再生の朱雀がおる。
朱雀はともかく青龍と白虎は気まぐれで不良じゃからの。お主に力を貸すかどうか分からんが』

「なんだ、けちくせえな」

琥空の言葉に玄武は呆れた様子で

『奴らもお主の一部じゃ。つまりお主は自分をけちだと言っていると変わらんぞ。
まぁ奴らもお主の気持ち次第じゃ。このワシと同じようにな』

そこまで言うと玄武は消えてしまった。そこで初めて琥空は他の3人が固まっている事に気付いた。

「どうした。拾い食いでもして当たって動けなくなったか」

—バコッ!—

「そんなわけないだろ」

拳を振わせて言う刹那。琥空はタンコブを押さえている。

「直接コアを埋めこまれた者のメリットでしょうか。何はともあれ驚きですね」

「何か驚くことでもあったか?」

琥空がそう言うと刹那は落ち着いた口調で

「コアを使って戦う封魔士には必ず一人につき一つの封器の型っていうものが存在する。
それは、理屈とか好きとかの問題じゃないから一つ以上型を持つ者はいない。
だが、お前は玄武の話では4つあるということになる」

「へっへ〜。他の封魔士よりお得じゃん、俺」

勝ち誇ったように言う琥空に刹那は呆れた様子でため息をつく。

「君は事の重大さに気付いていないな。これは本来あり得ないことなんだぞ。
封器の型は心の型。いくら君のような自由で、軽薄で、軽口で、何を考えているか分からない人間にも
心の型ってものは一つしかないはずだ」

「・・・俺今、すげーけなされたよね?」

「当たり前だ。けなしたんだ」

「ちょ・・ちょっと、刹那さん」

刹那の真顔でのドストレートな言葉に鈴華が苦笑染みた表情で止める。

「ん?どうした鈴華」

ちょいちょいと指をさす。その指の先には琥空が白化して放心状態になっている。
それを見て刹那の目つきが一気に鋭くなる。

「寝るんじゃない、琥空!!!」

—ドゴオォォン!!—

凄まじい轟音が部屋に響く。琥空は地面に埋め込まれたまま動かない。

「まったく、人が大切な話をしている時に寝るとは」

ふ〜、と片手を頭につけて言う刹那。

(違う。違いますよ刹那さん。原因はあなたです)

鈴華は心でそう思ったが、とてもじゃないが口に出すことはできなかった。



「だから悪かったといっているだろう!」

あれから数時間後なんとか意識を取り戻した琥空は家に帰ろうとしていた。

「お前、あれは悪かったじゃ済まないだろ」

「ぐ・・・」

いつも強気な刹那だがさすがに今回は言い返せない。それを感じ取ってか琥空は余裕の表情で

「これは、デートの一回や二回じゃあ・・・ゴフ!」

「いい加減にしろ」

いつも通りの鉄拳が飛んできた。琥空が涙目になる

「お前、やっぱり悪いって思ってねーだろ」

「知るか・・・それより君に聞きたいことがあるんだが。
君は自分が封魔士になること家族に言ってあるのか?」

「はあ、必要か?」

琥空は未だに頭を押さえている。刹那も別な意味で



何だかんだで琥空の家に着いた。何でか知らないが刹那と鈴華も一緒だ。
刹那曰く「君にまともに説明をできると思わんから」だそうだ。
琥空が玄関のドアノブを回す。するとそこには信じられない光景が待っていた。

女性が一人、玄関先で倒れていた。彼女からは赤い液体が大量に流れていて、
近くには赤色に染まったナイフ。

「きゃあああああああああ!!」