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Re: 封魔士軍団—アボロナ— 7話更新 ( No.37 )
日時: 2010/05/29 11:59
名前: アビス (ID: DqPUcKdb)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

8話




目の前の状況に固まる二人。だが、琥空だけは冷静にその場に行くと
何かを確かめるように赤い液体に触れると、ため息を漏らす。
そして、女性の肩をポンポンと叩くと

「お〜い、ケチャップまみれの奥さ〜ん。起きろ〜。友達きてんだからさぁ〜」

琥空の呼びかけに女性はピクッと体を動かした後、のそりと起き上がった。

「な〜によ、せっかく琥空が叫んだと思ったら、友達だったの。残念。
まぁ、でもなかなか良い驚きだったかしら」

女性はニコニコした表情で言った。

「え・・ええっと・・・」

「初めましてお嬢さんたち。驚いた?ふふっ、良いリアクションだったわよ」

何がどうなっているか分からない二人に女性は当然のように話してくる。

「挨拶も良いけどまずはそのケチャップまみれの服をどうにかしろよ」

琥空に顔をしかめながら言われ、女性はハッとした顔をすると

「あら、ごめんなさい。着替えてくるからお嬢さんたち、リビングでゆっくりしてて」

そう言うと洗面所に向かう。そこらでようやく二人は膠着状態が解けた。

「悪かったな、驚かせて。さっきのは見なかった事にしとけ」

「見なかった事にしとけって、無理だろ。何だったんだ、今のは?」

刹那が言うと、琥空は知りたい?と聞き返すと言った。

「簡単に説明すると、あれは俺の母さん。そんで、あの死体の振りは母さんの趣味だ」

二人とも開いた口が塞がらない。琥空はあははと笑うと

「困った親だろ。母さんは人を驚かせるのが趣味なんだ。
演技なんかリアル過ぎて参るだろ?」

と、言うが琥空自身は全然困った様には見えない。今だ調子が戻っていない刹那に琥空は

「来ない方が良かっただろ?」

その言葉に刹那は若干苦い表情をしながら

「ああ、まったくだな」



〜リビング〜

3人がリビングに行くとそこには眼鏡を掛けた、がたいの良い大男がケーキを人数分並べながら待っていた。
2メートルくらいはあるだろうが、がたいのせいでそれ以上に見える。

「あ、これ父さん。見た目の割に無口でクールだから安心だぜ」

と、簡単に説明すると椅子に座り、置いてあるケーキを食べ始める。二人も椅子に座るが
とてもじゃないが落ち着ける雰囲気はなかった。
しばらくすると、先ほど死体の真似をしていた女性、琥空の母親が出てきた。

「ごめんなさい。まさか琥空が友達を連れてくるとは思わなくてね。
今まで一度も連れてきたことなかったのに」

「そりゃあ、今みたいなことがあると大騒ぎだからな。まあ母さんとしては
それが良いんだろうけど」

「もっちろん!」

「・・・・」

二人の会話に入っていけない。琥空の父親はゆっくりと紅茶をすすっている。
二人はどうしたものかと顔を見合わせる。そんな様子を見て母親が

「ごめんなさい。せっかく来たのに無視しちゃ失礼よね。
はい、ケーキでも食べて」

ささっとそそのかされケーキを手に取り口に入れる。

「・・・おいしい」

鈴華がぽつりと言う。本当に素直な感想はこんなものだろう。
その声が聞こえたのか、母親は父親とハイタッチする。

「よかったわね、あなた。気に入ってもらえたそうよ」

「ああ、良かった」

「あ・・あの、これ作ったのっておじさんなんですか?」

鈴華が尋ねると、母親はええ、そうよと言って

「美味しいでしょ。なんてったって超一流のパティシエだもんね」

母親が自慢気に言うと父親が照れ隠しに眼鏡をあげる。
この家は何からないまで可笑しなことだらけだ。

「ま、友達だったら私たちとこんな風に喋っていても楽しくないわよね。
ほら、ケーキ持ってって良いから上で3人で遊んでいらっしゃい」

「い・・いや。私らはお二人に話が・・・うわ!」

刹那の言葉も聞かずに背中を押して行く母親、ちゃっかり父親も参加している。
無口でクールだが、ノリは良いのかもしれない。



「まったく、あの二人の間の子なら、君みたいなのが生まれてくるのが納得できるな」

結局話せずに、2階の琥空の部屋に入れられてしまった刹那は、不機嫌そうにそう言った。
しかし不本意にも訪れた男子の部屋に、こうも堂々と入れるのは刹那ぐらいかもしれない。
普通は鈴華みたいに落ち着かない素振りとかするもんだろう。

「まぁ、確かに今の俺の育ての親はあの二人だけど、別に生みの親じゃないぜ」

琥空がしれっとそんなことを言う。

「そうなのか?」

「ああ、俺の生みの親は俺の暴君に手に負えなくなって捨てたんだ」

・・・話の内容は結構悲惨なのだが、琥空の話しぶりから全然そんな気がしない。

「暴君って、琥空さんがですか?」

鈴華が信じられないと言わんばかりの表情で言う。

「信じられないか?でも、本当に昔は酷かったんだぜ。今思えば捨てられて当たり前って感じだったからな」

琥空が昔を思い出すように遠くの方を見ながら言った。

「それがよくそこまで人をからかう性格に改正したものだ」

刹那が鼻を鳴らして言った。改正はしたが改善はしていないと言うように。
琥空は刹那の言いたい事を察したのか、ははっ、そうだなと笑った後

「それは、お前が言うようにあの二人おかげだな」