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Re: 封魔士軍団—アボロナ— 9話更新 ( No.41 )
日時: 2010/06/22 16:59
名前: アビス (ID: 4K4kypxE)

「で、どうするよ?これ・・・」

琥空が玄武の背中にのっているアマガミを拾い上げる。
プールの水を失ったアマガミは手のひらサイズの大きさで力も微々たるものだった。

「これじゃあ地の5段階もいいところだな」

拍子抜けした声で刹那が言う。ただプールの水はこいつが出たせいで落ち着きを取り戻していた。

「だいぶ落ち着いてきたな。よし、残りの時間は自由時間にする。
・・・双神と天女乃、それと獅子山はどうした?」

「まずいな、早く戻らなければな」

先生の言葉に急ぎトイレに向かう琥空たち。因みにこの地の5段階のアマガミは
琥空が喰うことになった。小さかったので、玄武が丸のみにして終った。
力は微弱にせよ、琥空の初の捕食となった。

—————放課後—————

「はぁ〜。力の使いすぎで体だり〜」

自分の愚痴を言いながら下校する琥空。琥空の力は凄まじいが燃費が酷い。
まだ慣れていない琥空にはあれぐらいの戦闘でも疲労感が残る。
その点鈴華と刹那は慣れたもので、何事もなかったようにあの後を過ごした。

「・・・ん?」

琥空が立ち止まり目の前にいる少女を見つめる。長年の経験でそれが霊であることが
一目で分かった琥空は、周りに人がいないことを確認するとその少女に話しかけた。

「お嬢さん、そんなところに立っていると濡れてしまいますよ」

琥空の紳士めいた言葉に少女は顔だけこちらを向けた。
オレンジ色に髪にツインテールに縛った髪が揺れる。
年齢は12〜13辺りだろうか。まだあどけなさが残る感じだ。

「今日は・・雨は降っていませんよ。それに私はお嬢さんではありませんよ」

琥空の冗談に真面目な表情で丁寧な口調で返す。琥空は少し返す言葉がなかったが

「濡れているのは貴女の心です。よろしければこの私にお話しを聞かせてはぎゃはあ!!!」

自称紳士を演じていた琥空の上に凄まじい衝撃が走る。

「こんの〜〜〜!!!ようやく現れたな〜〜〜〜〜!!!!おりゃあ〜〜〜〜滅私ろ〜〜〜〜!!!!!!」

「げほっ!ごふ!!うがっ!!だ〜〜〜〜!!!何だってんだ!!??」

体の上に乗っている何かを掴むとそれは女の子だった。同じオレンジ色の髪だが、こっちはポニーテールだ。
女の子はそこで初めてちゃんと琥空の顔を見たのか、ハトが豆鉄砲をくらったような表情で

「あ・・ありゃあ?あいつじゃない・・・あんた誰だ!?」

「その人はただ単に私に話しかけてくれた人だよ、音穏」

「え・・あ・・そうなの、紫音?」

紫音と呼ばれた女の子は小さく頷く。音穏は誤魔化すように笑うと

「ごめんね。てっきりあいつだと勘違いして」

「気にすんな。可愛い女の子のドジな勘違いは男子のトキメキをぐっとアップさせるから大事にしろよ」

琥空の言葉に音穏は若干引き気味な表情で

「私・・・あんたみたいなの、好きになれないかも・・・」

「そりゃあ残念だ。可愛い女の子に嫌われるなんて俺の心はブレイク寸前だ」

「それが好きになれないって言ってんの!!!!」

キーキー叫ぶ音穏。それをじっと見つめる紫音。何かを訴えかけているその視線に
音穏が気づき、咳を一つ入れると真顔になった。そこで琥空も冗談を止めて相手の話を聞くことにした。

「改めて言っとくわ、ごめんなさい」

「それはいいととして、さっきからあいつがどうのとか言ってるけど?」

その問いに音穏が決まりが悪そうに頭を掻くと

「え・・ええ。その『あいつ』ってのは、つまり・・その・・・・」

「私たちの両親を殺した者」

紫音が表情一つ変えずに答える。それに音穏が声をあげて言った。

「何でそんなこと知らない人に言っちゃうのよ!?」

「知らない人じゃない。今こうやって話してる」

だから別に話してもいい、そんな感じの彼女の問いに音穏がため息をつく。

「はぁ〜。まあいいわ。まあ、そんな感じで私たちはその両親を殺した奴を探してるの」

「で、その犯人の目星は付いてんだろ?いきなり俺を襲ったところ
さぞかしイケメンな奴なんだろうなぁ」

「まさか、あんたの方が1.1倍くらいマシよ。ただそうね、喋り方は少し似てたかな。
あの、憎たらしいほど紳士ぶった口調とか」

・・・統計すると琥空より少し下の顔で紳士ぶった口調の奴が犯人と。
そいつが生きてる奴にしろ死んでいる奴にしろ、琥空には想像がつかなかった。

すると、上空から僅かだがアマガミの気配がした。まっすぐこっちに向かってくる。
琥空は二人を抱えると走り出した。紫音はされるがままだったが、音穏は黙っていなかった。

「こ・・こらーー!離せ、この変態!!!」

「誰が変態だ!!いいから離れんだよ。あそこは危ねえからな」

「危ないってないが・・・!!!あいつだ!あいつがパパとママを・・・」

琥空が振り向くとそこには確かに男性らしきシルエットの人物が立っていた。
生憎、走りながらの見物だったため、顔は見れなかったが、それ以上に
紫音が暴れてそれどころじゃなかった。

「離してよ!パパとママの仇をとるんだ!!あいつだけは絶対に許せないんだから!!!」

暴れる音穏に紫音がその手を優しく握った。

「今の私たちじゃああの人に勝てない。霊の私たちも死ぬ。死んじゃったら父さんも母さんも悲しむ。
私もとても悲しむ。だから今は耐えて」

強く握ったその手を見つめながら音穏は大人しくなった。
それを見て琥空はもう一度後ろを振り返り見る。

こちらを見つめ、諦めて後ろを向いた男性がアマガミに命令のようなものを出している姿を
そしてそれに従っているアマガミの姿を。