コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 封魔士軍団—アボロナ— 10話更新 ( No.44 )
- 日時: 2010/08/13 13:26
- 名前: アビス (ID: U3CBWc3a)
11話
「アマガミを操る人がいる、だと?」
翌日の放課後、前回と同じように『屋上に来い』との指令が下った琥空が
前日あった件について、刹那と鈴華に相談した。
「ああ。変な男と数体のアマガミがいて、どうもその男がアマガミに
命令をしているような感じだったんだよな。アマガミもそれに従っているような感じだったし」
「そんな。人に従うアマガミなんて聞いたことが・・・」
「いや、待て鈴華」
鈴華の言葉を制して何かを考え込んでいた刹那が口を開いた。
そして、琥空に顔を向けると
「君が見たのはアマガミを連れた変な男で、『人間』だったという保証はないな?」
「???。まあ遠目だったからいまいちだったが、あのシルエットは人間しかないと思うけどな」
刹那の言葉の意味が理解できず、少し自信なさげに答える。
「話にしか聞いたことがないんだが、天の5段階より上のアマガミは人間の姿をしているらしい。
知能もとても高く、人語も話す事が出来る。
アマガミによっては自分よりも下のアマガミを連れて、組織めいた物を作っている奴もいるらしい」
頭の中の情報を探りだすように目を閉じて刹那が言った。
「じゃあ、俺が会ったのは天の4以上アマガミだったってことか?」
「まあこれはあくまでも噂の範疇だし、もし本当にそうだったとしても、それほどのアマガミが
現れればこちらも直ぐに気付くはずだ」
「それもそうか・・・。で、俺をここに呼んだ理由ってのは何なんだ?
デートの誘いならOKだが?」
「ああ、実は君に聞きたいあるんだ」
とうとう刹那にこの手の冗談が無視されてしまった。少し悲しく思う琥空であった。
「聞きたいことってのは?」
気を取り直して話を進める。
「この学校にある七不思議について。君は全部知っているのか?」
「七不思議?ああ、まあこの学校の七不思議は有名だからな、皆知ってるんじゃないのか?
・うごめくプールの水
・突然割れる校舎の窓ガラス
・誰もいない体育館に響く軋む音
・風もない日に運動場に現れる小さな竜巻
・裏門を通ろうとすると見えない壁にぶつかり通れない事がある
・正門から校舎を見ると時々校舎が消えている
・誰も知らない七つ目の不思議処
こんなところだな」
とりあえず全ての七不思議を言った琥空。刹那と鈴華を考える素振りをして黙っている。
「・・・誰も知らない七つ目の不思議処ってのは?」
「そのまんまの意味だな。誰も知らないんだ。この学校の七不思議は学校に置かれてる
建物とか場所に一致してるけど、七つ目の場所だけはだれも知らないんだ。
教室とかトイレとか更衣室とかいろいろ噂されてるけど、本当の場所は誰も知らないってわけ。
よって七つ目の不思議は立たず、知らないことが七不思議のひとつになってるわけ」
そこまで言うと再び黙ってしまった。何をそんなに考え込んでいるのか、それを聞こうとしたとき
「前に言ったな。この学校になぜアマガミが集まってくるのかを調べていると」
琥空の考えを読んだかのように刹那が言う。
「あ・・ああ」
「プールでの件で私らはこの学校を調べたんだが、今君が言ったところから
僅かながらアマガミの気配を感じたんだ。
もしやと思って調べたが、どうやら正解だったようだな」
その後、刹那はありがとう、助かった、とだけ言ってそのまま鈴華と去ってしまった。
去り際に先ほどのお前の話を統帥に報告しとけよ、という言葉を聞いてしまった琥空は
失敗したなという気持ちでアボロナに向かった。
—————アボロナ—————
統帥の部屋に来て統帥がいない事を知った琥空は伝言だけ残してその部屋を後にした。
とっとと家に帰ろうかとした時
「お〜〜〜?こんなところに部外者はっけ〜〜ん」
そんな声とともに後ろから殺気を感じ振り向くと、後ろから拳が琥空に目掛けて飛んできていた。
それを頭で考えるよりも反射でかわす。目の前には男が立っていた
「おほ!あれをかわすなんて中々やるじゃん。けど、これはどうかな?」
男が連撃で琥空を追い詰める。そのあまりのスピードに琥空の反射も追いつけずに喰らってしまう。
「っ!!・・・蛇亀!蛇頼む」
玄武を出しその蛇で男の体を縛る。だが、男は平然とした立ち振る舞いで
「・・なあ、これ何?こんなんで縛ってるつもりかああ!!」
男は蛇を勢いよく引き千切る。それに驚く琥空だったが、それと同時に急に胸が苦しくなった。
膝をつき息も絶え絶えになる。
「おいおい、どうしたよ?いきなりそんな膝なんかついちゃ・・・て!!」
語尾の部分を強めて止めの蹴りを入れてくる男。それを止めたのは一人の女性だった。
「煉、それ以上やるならここから出て行ってもらうわよ」
男の蹴りが琥空の寸前で止める。そしてそのまま女性の方を見る。
「衣吹か・・・俺は害虫駆除をしてるだけだぜぃ」
「彼はここに加わった新しい封魔士よ。さっきの亀を見ればそれは一目瞭然でしょ?
それとも、そんなことも分からないほどあなたは馬鹿なの?」
その言葉に男・・煉は足をおろして、やれやれといった感じでその場を去って行った。
衣吹と呼ばれた女性はこちらに近づいてくると笑顔で大丈夫、と心配してくれる。
「ごめんね。彼は戦闘狂でね。何かと理由を付けて戦いたがるのよ」
「そんな奴を言葉だけで退かしちまうあんたも大した者だけどな」
琥空は起き上がり、殴られた箇所を押さえながら言う。
衣吹はありがとう、と笑顔でいうと琥空の左胸に触れる。
「心臓の方は大丈夫?さっき苦しがってたけど」
衣吹の言葉に自分も心臓に触れるが今はなんともないみたいだ。
「ああ、もう大丈夫みたいだ」
「そう。あなたの場合他の人と違ってコアを心臓代りにして、それを使って
封器を出してるから。封器が傷つくとあなた自身も傷つくようだから、気を付けてね」
衣吹はそういうとバイバイ、と言い残しその場から立ち去った。