コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 封魔士軍団—アボロナ— 11話更新 ( No.45 )
- 日時: 2010/08/13 13:42
- 名前: アビス (ID: U3CBWc3a)
12話
琥空はアボロナでの用を終えたので、外に出ていた。そして振り返り、建物を見る。
「それにしても、本当にこんなぼろっちぃ建物がアボロナの本拠地なんてなぁ・・・」
琥空が見上げる建物はどこにでもあるような普通のマンションだった。
だが、このマンションの扉の一つがアボロナの本拠地になっている。
どういった理屈かは全く分からないが、本当に何でもありだ。
「・・・・・・」
「ん?」
視線を感じ振り向くと、そこには紫音がこちらを興味気な表情で眺めていた。
「何してるんだ?」
「・・・・おかしい」
紫音が呟く。琥空が何がおかしいのか首を傾げると
「私の予想なら次にあなたは『そんなに瞳で見つめられると、こっちもその気になっちゃう』
とかいうと思った。残念・・・」
坦々とした口調で言ったそんな言葉に琥空は苦笑いを浮かべる。
「まぁ、言ってもいいんだが言い過ぎると女の子に嫌われるからな。
特にお前の相方さんに」
「すでに遅し・・・かも」
おっとりとした表情の割に言う事は結構鋭い。
「・・・で、相方さんは?」
「・・・・仇探し」
「なるほど、大変だなあいつも。で、あんたは探さなくてもいいのか?」
琥空の問いに紫音は首を横に振る。
「興味ない・・・もう両親のこともどうだっていいの」
「どうだっていいってお前・・・」
「ただ・・あの子が無事でいてくれるなら、それでいいの。お父さんもお母さんもそれを願っている」
紫音が手を胸に当てて願うように言う。その穏やかさは子供を心配する母親のようだった。
琥空もその表情に笑みを浮かべる。と、その時琥空はアマガミの気配を感じた。
「・・・・!!!危ねえ紫音!!!」
琥空は紫音を抱きかかえると、その場から離れた。するとその直後、その場が爆発した。
それに気を取られた琥空は後ろの気配に気づくのが遅れてしまった。
「ぐふっ!」
ツルのようなものが紫音と一緒に琥空の体に巻き付いた。そしてそのままどこかに運ばれてしまった。
——————————
運ばれた先はどこだが分からない路地裏。そこで解放された琥空は紫音を庇うように目の前のアマガミに立つ。
「そう気を張るな」
後ろから声がし振り返ると、そこにはこの前の男が立っていた。暗い上に仮面をして
声が曇っていたので誰だか全く分からない。
「お前は偶然連れてきてしまった。本当はその女だけで良かったんだけどな。
お前がくっ付いてるから、あいつらが一緒に連れてきてしまっただけだ。・・・去れ」
「・・・っ!紫音をどうするつもりだ?」
男からの発せられる気が辺りを包む。その気に飲み込まれそうで気持ちが悪い。
それでも琥空は男を睨む。
「殺す。その女と一緒にな」
殺す。まるで日常の行動の一つのように自然と言ったその言葉に琥空は背筋がざわめく。
男は自分たちの方に何かを投げつけた。
「う・・ううう」
「音穏!」
紫音が音穏に駆け寄る。
「やれ」
男の冷たいその命令に、アマガミのツルが紫音の首を絞める。
「紫音!!」
紫音を助けようと駆け出す。男は琥空に視線を移して小さく呟く。
「やれ」
その言葉と共に琥空は足に何か張り付いている感覚がして見ると、なにか昆虫のようなものが
足にびっしりとくっ付いていた。引きはがそうと触れた瞬間。
—ボカァァァン!!!!—
昆虫が爆発を起こす。琥空の足は火傷でぼろぼろになり、その場に倒れこむ。
「はあ・・あ・・ああ・・・」
紫音の首のツルがどんどん締っていく。それと共に紫音の声が少しずつ薄れていく。
「ちっ!蛇亀!!!」
「無駄だ」
動けない琥空が玄武を出して向かわせようとするが、男が手を前にかざすと玄武がぐしゃっ、と潰れてしまった。
それと共に琥空の心臓もまるで握りつぶされる様な衝撃が走る。
「お前はそこで見ていればいい。この二人の姉妹が死ぬところをな」
男はそう琥空に言うと、落ちている音穏もアマガミに命令を下し、首を絞めさせる。
「ぐっ・・・はあ、はあ。・・・やめ・・ろ・・・」
立つことがやっとの状態で琥空は言うが、男は琥空を見もしないで、二人の最後を見届けようとしている。
紫音はすでに呻き声もあげること出来ず、手も首から離れている。
「フィニッシュだ。一気に絞め上げろ」
男の言葉にアマガミがツルを限界まで絞めあげる。ギリギリギリ、と音がしてツルがどんどん絞まっていく。
ツルが二人の首から離れた時、彼女たちは息をしていなかった。
「終わったな。退くぞ」
「・・・待てよ。メインディッシュの前に腹一杯とは、小食にも程があるんじゃないか?」
「なに?」
男が振り返ると、琥空が立っていた。ぼろぼろの足で平然と。
「その怪我で立っていられるとは意外だな。だが、お前に何が出来る?」
「お前こそ、殺そうとした二人を逃がすなんて、どういうつもりだ?」
琥空がにやっと笑う。男は何を馬鹿な事をと言いたげな表情で二人を見る。
二人はぴくりとも動いていない。・・・はずだったが、胸が僅かに呼吸を繰り返して動いている。
「お前・・・何をした?」
「そんなに知りたきゃ見してやるよ」
琥空の左手を前にかざす。すると、左腕が赤い光に包まれたかと思うと、
左腕から鳥の翼のようなものが現れる。
「いくぜ、朱雀!」
『はい、主(あるじ)の思うがままに』