コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 封魔士軍団—アボロナ— 14話更新 ( No.50 )
- 日時: 2010/08/26 17:49
- 名前: アビス (ID: U3CBWc3a)
15話
「風のない日に現れる竜巻・・・か」
運動場を眺めながら刹那が呟いた。時刻は午後9時。
すでに部活を終えた生徒の影もない時間帯に、刹那と鈴華、それに琥空もいた。
「こんな時間までお仕事とは大変だな。ちゃんと残業手当は出てるのか?
じゃないと働いても無駄骨になるぞ」
「君は金欠のサラリーマンか?下らない事言ってないで見張っていろ」
刹那は目だけを琥空に向けてそう言い放つ。
「へいへい」
なぜこんな時間に運動場を見張っているかというと、今日この運動場付近で
トルニスがアマガミの出現を感知したのだ。
それと同時刻、運動場で七不思議の一つである竜巻が発生した。
これによりこの学校の調査をしている刹那と鈴華が出向いた、ということだ。
因みに琥空はほとんどおまけ。刹那に『実戦経験は早めに積んでおけ』と言われて
半ば強制的に参加させられている。
「なぁ、蛇亀。何か感じないのか?」
することもないんで、玄武を呼び出し話し相手にする。
『どうかのう・・・。何かピリピリした感じはするんじゃがのう。
それより、お主。早く嬢ちゃんたちのようにアマガミを探知できるようになれ』
「なかなか難しいんだよ、これ。・・・お!出たんじゃないか?竜巻」
琥空が遠くの方に目を細めながら言った。見ると暗闇に既に幾つかの竜巻が発生していた。
「アマガミの気配が強くなったな。予想通り、これもアマガミの仕業か」
刹那はそう言うなり封器を取り出し竜巻の元に向かった。
「おいおい。何すんだ?」
「何を寝ぼけた事を言っている?アマガミを抹殺するんだ」
「こえーな。あれが害をもたらすものかどうか・・・って、おーーい!!聞けよ!!」
刹那は琥空の言い出しにはすでにもうその場を離れて竜巻の元に向かっていた。
その後を追いながら琥空が叫ぶ。
「おーーい。それはアマガミっつても風なんだから、いくら封器でも切れないだろう??」
「心配ないですよ、琥空さん」
横から鈴華が言った。その言葉の意味を理解するのはそのすぐ後だった。
「やるぞ、フォルナ」
刹那は竜巻の一つに近づくと、一気に切り捨てる。竜巻はと言うとそのまま消え去ってしまった。
「風を切り裂いた?」
「それが、刹那さんの封器の能力です。全ての物を切り裂く権利を得た剣。フォルナです」
「フォルナ?・・・ああ、剣の名前のことか。じゃあ鈴華の封器にも名前と能力があるのか?」
琥空の言葉に鈴華は苦笑を漏らすと、自分の封器を取る。
「名前は決めていないんです。けど能力は自然物の操作です」
「名前は決めていないのか。じゃ、その封器の名はアリナだな」
琥空のいきなりの提案に鈴華が首をかしげる。
「アリナ・・・ですか?一体どこから・・・」
「即興」
「・・・・・・あははっ!」
若干の間の後、鈴華が突然笑い出した。いつもが大人しいせいか、
その笑顔がとても新鮮で可愛らしかった。
「そうですね。それじゃあこれからアリナと呼ぶ事にします」
「君たち!無駄話もいい加減にしてこっちを手伝え!!」
地面を滑るようにして戻って来た刹那が二人を見て言った。
「どうしたんだ?」
「少し私一人じゃ手に負えなくなってきたんでな」
琥空が見るとそこにはおびただしい数の竜巻が運動場を占めていた。
「力は地の3段階ってとこなんだが、何分数が多くてな」
「多すぎだろ。このまま一つにまとまったりでもしたら・・・」
—ヒュオオォォゥゥウウウウ!!!—
「・・・・言わんこっちゃない」
「君が言ったからじゃないか?」
無数の竜巻が一つになって巨大な竜巻に変貌を遂げた。
風がこちらまで伝わってくる。
「とりあえず巻き込まれないように注意しろ。あの竜巻に巻き込まれれば、
巻き上げた砂によって皮膚がなくなるぞ」
「うら若き乙女のお二人には天敵だな。いや、うら若き乙女一人と鬼・・・」
「琥空。私に斬られるのと、あの竜巻の中に放り込まれるの・・・どっちがお好みだ」
刹那がゆっくりと琥空の方に切っ先を向ける。琥空は早々に降参して両手をあげる。
「と・・とりあえず、皆。いろいろ注意してあのアマガミを倒しましょう?」
「鈴華・・・いろいろとはなんだ?いろいろとは。注意するのはアマガミだけではないのか?」
刹那は今度は鈴華を睨む。鈴華は冷や汗を流しながら琥空と同じように両手をあげる。
そうしている間にも竜巻は勢力を増大してきている。
「ちっ!!合体して地の1段階近くまで力が増したな。二人とも、いくぞ!!」
「「は、はい!!」」
——————————
「はぁ、はぁ。ったく・・・」
体中傷だらけで座り込んでいる琥空が言った。
「何だ?その不満気な表情は?」
「普通いきなりあの竜巻の中に投げ込むか!!?」
「いきなりではない。ちゃんと説明しただろう。
お前の朱雀の力で内側から一気に焼き尽くせ・・・と」
「心の準備ってもんをさせろよ。咄嗟に蛇亀を真下に出して風を乱せたから良かったものを。
じゃなきゃ、俺本当に死んでたかもなんだぜ!?」
ったく、ともう一度言って起き上がる。そこに鈴華が救急箱を持ってやってきた。
朱雀の力は琥空自身には効果がないらしく、鈴華が応急手当をし始めた。
その様子を学校の屋上で観察をする一人の人物。
その人物は琥空たち3人を見て、にやりと笑うとその場から消えた。