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Re: 封魔士軍団—アボロナ— 15話更新 ( No.51 )
日時: 2010/09/07 17:00
名前: アビス (ID: U3CBWc3a)

16話




「酔い止め持った・・着替え入れた・・・よし、オッケーかな?」

早朝、琥空は大きな荷物の中身を確認しながら言った。
今日から6泊7日の林間+臨海学校の初日だ。

なぜ林間と臨海を同時に行うのかというと、それは単なる学校側の都合である。
だが、生徒たちにとってはこの上ないビッグイベントである。

なぜならこの学校にはこのイベント中に必ず恋人が出来ると言うジンクスがあるのだ。
実際に毎年、数組のカップルがこのイベントで誕生している。

参加者は全学年合わせてたったの20名。
それでも一夏の思い出にと参加を希望する生徒が山程いる。

琥空はその中から選ばれた一握りの生徒なのだ。

「よし。そんじゃぁ行ってくる、父さん、母さん」

玄関で靴を履き、振り返ると母さんと父さんがニコニコしながら手を振っていた。

「頑張れよ」

「もし、彼女出来たらお家に呼んでね。安心して。ちゃんと私たち空気読むから」

「・・・・気がはえーよ・・・。行ってきます!!」

—————バスの中—————

「それにしても驚いたな・・・」

「何がだ?」

「お宅らもこれに参加してることに」

バスの中はとても賑やかでわいわいしている。
琥空はそんな中、自分の後ろに座っている生徒に話しかける。

「言っただろう?私らは君のお守りも任務なんだ。
君がこれに参加すると言ったから、私らも参加せざるをえなくなっただけだ」

「相変わらず固いな。それに俺もう一人でも大分戦えるって自負してるんだけど」

自分の左胸に手を当てる琥空。その様子を見た刹那が言った。

「確かにな。だが、封魔士は2組以上で行動するのが掟だ。
君を一人だけにすることなんて出来ない」

「・・・ありがとう、そんなに俺を愛しでへっ!!」

人前では殴られないだろうと思い、調子乗った琥空だが、見事に
刹那は誰にも見られない早業で琥空を殴り付けた。

「って〜〜〜!!こんなのありかよ・・・」

「なめてた君が悪い」

いつもと同じように言う刹那だが、細く微笑んでいるのを鈴華は見逃さず、
自分もクスリと笑った。

—————宿泊地—————

「はぁ〜〜。移動ばっかだと肩が凝るぜ」

一人の男子生徒が重い荷物を割り振りされた部屋に置くと大きく伸びをした。

「よく言うぜ。ずっと寝てたくせに」

それを琥空がからかうと、男子生徒はそれは違うぞ、と指を指した。

「移動とはすなわち、寝る事。そして寝ると言う事は夢を見る事。
そして夢の中の俺はもうそりゃあ女の子たちに揉みくちゃにされて・・・。
寝てても俺の体はフルスロットルだぜ!!」

「いろんな意味でね、タイショウ」

隅の方で荷を整理していたもう一人の男子生徒が呟いた。

「悪いか、清水?男は欲に勝てない生き物なんだぜ!」

・・・ここで、少しお浚いしておこう。
ここは3人で1部屋で琥空に加え、今の二人がここの部屋の生徒である。

タイショウと呼ばれた男子生徒は大将 重国(おおまさ しげくに)
タイショウとは名字からきているあだ名だ。
見ての通り欲望に忠実な男で馬鹿で阿呆だが、テストの成績は学年一位と言うわけの分からない秀才である。

ただ、本人の性格と本人がわざわざばらさないのとで、彼が一位という事を知っている人はここにいる二人だけ。
よって、学年では七つ目の不思議の候補にも挙がっている。

そしてもう一人、荷物整理していたのは清水 大河(しみず たいが)
あまり喋らず、感情が表に出ないのがかっこいいとかで、一部の女子には人気の隠れイケメンである。

タイショウとは長い付き合いでよく一緒にいる。因みに肌は真っ白。不健康そうだが、至って元気。
彼も琥空ほどではないが、霊感がある。(近くになにかいるな〜〜。程度)

「よし。いくぞ、琥空」

「どこにだよ?」

いきなりの事に聞き返すと、タイショウはそれでも男か!!?、などと言ってくる。

「・・・今何時だ」

タイショウの意味不気の質問に琥空は時計を見る。

「9時半だな」

「今、この旅館では何が起きていると思う?」

「ビッグウェ〜ブ」

琥空の意味の分からい答えに、タイショウはあながち間違いではないな、などと言って一人で頷いている。

「確かにあれは欲求のビッグウェーブ。あんな波が目の前にあるのにただ黙って
見ているなんて、男として廃るな・・・」

「・・・・・何だ、覗きか」

清水が冷たく、簡潔に良い放つ。タイショウはその通りだと言いたげな表情をすると、
清水と琥空の有無を聞かず、二人の手を引いて女風呂に向かった。

罪悪感はある二人だが、いざとなればタイショウ一人を犠牲に逃げればいいと感じ、
そのまま着いていくことにした。

——————女風呂に近い茂みのような場所—————

「ふぁ〜〜〜。気持ちいい!!」

「やっぱ温泉って最高!!」

「うわぁ!でかっ!!」

「ちょっ!!どこ見てんのよ!!?」

「・・・・・会話がベタ過ぎだな」

琥空が茂みから女風呂の声を聞いて呟いた。

「馬鹿だな琥空は。それが逆に興奮するじゃないか。
・・・だが、やっぱりこの目でしっかりと焼き付けたいな、女性の神秘を」

「神秘ねぇ・・・。ブスだったら堪んねえな」

「・・・そう言うリアルで有りそうで、夢をぶち壊しそうな言動はよせ」

「琥空」

傍らで黙っていた清水が琥空の袖をひっぱりながら言う。

「何だ?」

「なんかこの辺り嫌な感じしない?君なら気づいていると思うんだけど・・・」

そう言われればそんな気もしなくはないが、琥空は辺りを見渡すが何もいなかった。

「気のせいじゃねえか?それとも・・・」

琥空が何かを言いかけた瞬間、地面が大きく揺れ始めた。

「な・・なんだ!?地震!!?」

「いや・・これは!!!」

揺れは一層激しさを増したかと思うと、突然3人は宙に放り投げられてしまった。