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Re: 封魔士軍団—アボロナ— 19話更新 ( No.58 )
日時: 2010/10/17 11:03
名前: アビス (ID: U3CBWc3a)

「はい・・・はい。分かりました。すぐに向かいます」

道路で一人の女性が電話を切る。風に靡かれる髪が舞い、
その美しい顔にとても合っていた。

「まったく・・・どこにいったんだ」

女性はそう呟くと、腰布を巻き走りだした。

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「・・・・・・」

学校の屋上で一人の女性が佇む。その顔は物憂げな表情を浮かべていた。

「琥空さん・・・・」

「鈴華!」

そこに先ほどの女性が現れる。すると鈴華は先ほどまでの表情を変えて。

「刹那さん」

「・・・また琥空のこと考えていたのか?」

刹那は鈴華の顔に残る表情を見て言った。鈴華は少し申し訳なさそうに

「すいません。いつまでも引きずっていて」

刹那は気にするな、と言うと屋上から町並みを見下ろした。

「・・・もう半年か。あの、馬鹿。家にも戻っていないらしいしな。
まったく、どこで何してるんだか」

「・・・ところで刹那さん。どうしたんですか?」

「そうだった。指令だ。南西5キロの地点でアマガミと思しき者が暴れているらしい」

「思しき者?アマガミではないんですか?」

刹那からの指令に首をかしげる鈴華。刹那も首を横に振り

「アマガミとよく似た反応らしいが、どうも違うらしいんだ。・・・行くぞ!」

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「ぐおおおおお!!」
「があああああ!!」

二人が現場に行くとそこには二人の男性がいた。

「あれは一体・・・」

刹那な訝しげな表情を浮かべる。男性は暴れていると言ううより苦しんでいるといった感じだった。
身体の表面から所々、アマガミの気が滲み出ている。

「あれはアマガミなのでしょうか?それとも人間?」

「わからん。とりあえず近づくぞ」

二人が近づくと男性達も気づいたように振り向く。

「あ・・あう・・・。たすけ・・て・・・くれ」
「嫌だ!もう嫌だーーー!!」

それが二人が最後に発した言葉だった。その瞬間二人の身体からアマガミの気配が一気に強まり
二人はアマガミへと変貌してしまった。

「刹那さん!!」

「何があったかは分からないが、あれはもうアマガミだ。排除する」

刹那と鈴華が自分の封器を取り出して立ち向かおうとする。と、

『待て!!』

空からの声。と、同時に現れた4人の人物。一人は仮面を付けているが、
残りの3人は普通の人のようだった。

『こいつらの始末は俺達がつける』

「何者だ貴様?」

刹那が警戒をしながら言う。すると、仮面の男が微笑を零した。

『ふっ。変わらないな、刹那』

「何!?」

『レン、ギン。二人を頼むぞ』

二人はアマガミに向かって行く。

「だめだ!アマガミには封器でしか倒す事が出来ない」

『大丈夫だ』

仮面の男が言う。すると刹那はレン、ギンと呼ばれた二人からアマガミの気配を感じた。
そしてその直後、二人が見たものは信じられない光景だった。

二人の身体の一部がアマガミのものとなったのだ。一人は腕が、もう一人は背中が。
そしてそのままアマガミに喰らいつく。

そして二人がアマガミから離れた時、アマガミから気が消えて先ほどの男性二人に戻っていた。
レンとギン。二人の手にはアマガミのコアが握られていた。

「コア?なぜあんな一般人にコアが埋め込まれているんだ?」

『俺が埋め込んだ』

仮面の男が答える。すると、刹那は目をキッとさせて男を睨む。

「もう一度問う。お前は何者だ!?なぜ私の名を知っている!?なぜアマガミのコアを持っている!?
一体何の目的でアマガミを倒している!?」

『・・・最初の二つの質問はこれで分かるな』

男がそう言うと、仮面を取り外した。すると、刹那と鈴華がはっと息をのむ。

「これで分かったか?お二人さん?」

「こ・・琥空・・さん?」

「それ以外の誰に見えるんだ?」

目の前の仮面の男の正体は獅子山 琥空だった。半年間、行方がまったく分からなかった男。
その人物がいまこうして、嘗ての仲間の前に立っている。
以前と変わらない琥空。タトゥーは相変わらずだが、目の前にいるのは紛れもない琥空だった。
琥空は再び仮面を付ける。

『3つ目の質問。コアは持っているのはある人物からアマガミからコアを取りだす方法を教えて貰った』

「ある人物?それは誰だ」

『そこまで教える義務はない。4つ目の質問はお前たちも知ってることだ。
俺が以前に言った言葉を覚えているか?』

「・・・自分のやり方で封魔士を全うすると言う言葉ですか?」

『そうだ。俺は封魔士とは別のやり方でアマガミを倒す事にした。
お前たちが危険と称したアマガミ化の力でな』

琥空はアマガミ化と言う単語を強く発した。

『いつか、お前たち封魔士は必要となくなる。俺たちが封魔士の代りとなり、アマガミの根絶を目指す』

「ふん。急ごしらえで創った組織で我々封魔士軍団—アボロナ—に勝つつもりなのか?
冗談にしても笑えんな。アマガミを根絶させるのは私たちだ」

刹那の言葉に琥空はそんなだから無理だ、と冷たく言い放つ。

『アマガミの生まれる意味を、存在している理由を知らないお前たちには決して無理だ。
例え、どれだけ強い戦力を揃えようと根絶させる事は出来ない』

琥空はそう言うと連れてきた3人に先ほどのアマガミと化していた男二人を担がせ、その場から消えた。