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Re: 封魔士軍団—アボロナ— 22話更新 ( No.65 )
日時: 2010/12/02 22:44
名前: アビス (ID: U3CBWc3a)

23話




「コア・・・中々見当たりませんね」

それほど広くはないはずの体育館。殆どの所は見終えたはずだが、一向に見当たらない。

「これだけ探してないとなると、壁の中に埋め込まれてる可能性が高いな」

刹那はそう言うと、壁を斬り付けた。だが壁は直ぐに元に戻ってしまう。

「くそ!私に力があれば、高速再生の力を切って無力化させることができるが、
ない物ねだりをしていても仕方がない。一度湊の元に戻るぞ」

二人が戻ると湊は積み上げられた蛇の残骸に座っていた。どうやらこのフロアの
再生能力が出来なくするほど毒を送り込んだらしい。
湊は二人が戻ってきた事に気づくと残骸の山から飛び降りた。

「どうだった?」

「体育館全てを調べたがコアは見当たらなかった。おそらく壁の中に埋め込まれてる可能性が高い」

「そんなのどうやって見つけるんだ?」

しばらく考えた末、鈴華が口を開いた。

「・・・・この体育館は木製ですよね?」

「ああ、そうだと思うが、どうしたんだ?何かいい案が浮かんだのか?」

「体育館は人工ですけど、使用されてる木は自然界の物のはずです。ですから私の力で・・・・」

「あんたの封器の能力は自然物の操作だっけ?出来るのか?」

湊の問いかけの鈴華は分からないと言いたげに首を横に振った。

「分かりません。手の加わった物を操った事はないので。でも、やってみない事には分かりません」

鈴華はそう言うとアリナを身体の前に翳した。

「樹念の舞」

しばらくすると体育館全体が震え始めた。

「っつ!!」

鈴華が苦しげに声を漏らす。体育館の揺れはどんどん激しくなってくる。

「お・・おいおい!大丈夫かよ!?」

「鈴華を信じろ。きっと大丈夫だ」

「きっと・・・ってことはあんたも少しは不安なんだな」

湊がそうからかう口調で言うと、刹那は細く笑った。

「君は琥空に似ているな。そうやって人を小馬鹿にするところなんてそっくりだ」

「そうか?あいつに似るなんて正直微妙だな・・・」

と冗談半分真面目半分で言う湊。その頃には鈴華は体育館の原型は変え、木とその他に分けていた。

「はぁ、はぁ・・・」

鈴華は汗びっしょりで息を整える。

「よくやったな鈴華」

刹那はそう言いながらも辺りを見渡してコアを探す。すると、刹那の目が一点を見つめた。

「・・・あった!」

木に挟まる様な形でコアがその姿を現していた。刹那はそれを取った。すると
身体の中に風が通り抜けたようなそんな感覚に陥った。それと共に周りの気配が異様なものへと変わった。
だがそれは一瞬で、今はただ少し肌寒い夜風が吹いているだけだった。

「あっ!無事に取れたんですね、コア!」

鈴華が喜びの表情を浮かべる。これを察するに先ほどの感覚は感じてはいないようだった。

(私の気のせいか?)

まだ少し疑問に思っていたが、次の湊の言葉でそんな疑問も吹っ飛んだ。

「なぁ・・・体育館、どうやって元に戻すんだ?」

「あ・・・」

見ると体育館の会った場所は今や骨と砕けたコンクリートの山が、そしてここには
木がぐにゃぐにゃに散らかっている。

「鈴華!!」

刹那が鈴華に求めると、鈴華も困った表情で

「む・・無理ですよ〜〜〜!!もう限界です!!」

「どうすんだよ!?日の出まであと5時間くらいだぞ!!建て直すか?」

頭を抱え、頭を振り回しながら湊が言う。正常な思考が出来ていないのだろう。

「馬鹿者!そんなので間に合うわけないだろう!!
と・・取りあえず直ぐに本部に連絡を入れて、対策を取らなければ」

急いでポケットに手を入れるが携帯がない。と、いうか普段実地に当たる時は携帯は邪魔になるので
持ち歩かないのが刹那なのだが、もうパニくってそれどころじゃない。

「私が本部まで行ってくる。それまで二人はここで待機していてくれ」

言うや否や、刹那は走りだした。湊はその後ろ姿に手を振った。その手には何かが握られていた。

「お〜〜い!!俺が携帯持ってるぞ・・・・って聞えてないなこりゃあ・・・・」

「私にもっと力があったらこんな事には・・・」

鈴華が一人でしょぼ〜んとしている。それを見た湊が鈴華に近づいた。

「ふ〜〜ん・・・・」

「え・・・え〜〜と。何ですか!?」

顔を覗きこまれたりされて、顔が紅潮していく鈴華。そんな様子をみて湊が一言。

「可愛いなお前」

「・・・・・」

面と向かってまじまじと言われて鈴華の顔は爆発した。

「あれ?・・・・お〜〜い、鈴華さ〜〜ん。大丈夫ですか?・・・まずいな。
琥空の奴、『鈴華に可愛いって言うと面白い反応するから言ってみろ』なんて言ってたけど、
こんなリアクションのどこか楽しいんだよ」

「・・・こ・・くうさん?」

「お、戻った」

「琥空さんに言われてたんですか?」

鈴華がぽ〜とした目で呟いた。

「ああ、まあな。言っただろ?あんたらの事は琥空から聞いてたって」

「そう・・・でしたね」

鈴華はどこか嬉しそうな、寂しそうな表情を浮かべる。それから数十分後、刹那のともに
駆けつけた封魔士の力を借りて、どうにか日の出までに体育館の復興を果たせた。