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- Re: 封魔士軍団—アボロナ— 24話更新 ( No.67 )
- 日時: 2010/12/13 22:39
- 名前: アビス (ID: U3CBWc3a)
25話
「随分早く抜け出してきたじゃないか」
「ああ、あのリングワンダリングを使った惑わしか。中々のものだったが、
もう少し木の強度を強くしないと、一点突破されて終りだぞ?」
「そうかい。わざわざ忠告ありがとう」
レンがギンとアイコンタクトする。ギンは頷くと足を一歩引いた。
と、ギンの後ろの土が盛り上がり、ギンの行く手を防いだ。
「流土の舞」
「悪いが貴様たちをそれ以上進ませるわけにはいかないな。・・・お前たちの目的もコアか?」
刹那も自分の封器を取り出し、切っ先を目の前の二人に向ける。
「・・・本当に俺たちが来て良かったなレン」
「ええそうねギン。それにここが一目のつかない樹海で良かったわ。
恥ずかしい姿を見られないで済むから」
二人の身体からアマガミの気配が強くなった。
「気を付けろ鈴華。こいつらはおそらく湊と同じレベルの使い手だ」
「はい。わかっています!」
「樹木降誕!!」
「鷹の爪翼(ファルコン・クロウ)!!」
ギンと呼ばれる男の右手が鳥の翼のように変わり二人に向かって行く。
それを隠す様にレンの幾多の木々が二人に襲う。
二人はその木々を薙ぎ払う。とそれに気が捉われギンの姿を見失う。
「戦闘中に敵を見失うなんて、甘いなお前」
「!!!」
—ギィィィンン!!—
ギンの爪が刹那の封器と交わる。だが、僅かに刹那が圧されていた。
「俺たちはアマガミ化して身体能力も飛躍的に上がっているんだ。生身で勝てると思うな!」
「くっ!!」
「刹那さん!!」
刹那の劣勢に鈴華が駆けつけようとするが、目の前に木々が現れ阻止された。
「おっと、あんたはそこでじっとしてなさい。少しの間あたしと遊びましょ、お嬢ちゃん」
レンが妖美に笑いながら言う。鈴華は周りの木を切り払うが、木はすぐに再生してしまう。
レンは更に笑う。木々は鈴華を取り囲み始め、最後には中に閉じ込めてしまった。
「ふふっ!まずは一人・・」
「鈴華!」
「他人の心配をしている場合か?」
ギンが更に刹那を圧す。刹那は歯を食いしばると相手の爪を流した。
二人が交差する。僅かに髪が切れるが、それを気にせず刹那はギンに刀を振う。
「無駄だ!」
ギンは後ろは見ずに翼の羽を広げて刹那の一撃を受け止める。そして上に弾くと爪で刹那を切り裂く。
間一髪、後ろに引くが服が切れ血が僅かに流れる。銀は自分の爪に付いた刹那の血を舐める。
「首を刎ねるつもりだったが、良い反応するな」
「アマガミの力を授かった人間か・・・。どうやら、貴様を『人間』と思っている内は私に勝ち目はないようだ」
刹那を封器をブランと下げるとそう言った。
「・・・遠回しに負けを認めているのか?」
「そうじゃない。少々忍びないが君を・・・」
—ザンッ!!—
「!!!」
「『アマガミ』と判断することにしよう。・・・全てのアマガミは私が滅ぼす!!」
刹那が鋭い一撃を放つ。ギンはそれを羽で受けるが、今度は逆に圧され始める。
「こいつ、さっきまでは手加減していたのか。・・・いや、違うな。・・・意思の差か」
ギンは刹那を弾き飛ばす。態勢を立て直して起き上がった刹那の目は先ほどまでの目とは明らかに違っていた。
「お前のアマガミに対する憎悪がそこまで自身を変えるのか。ならば、お前に見せてやる。
意思一つではどうにもならない力の差を。全身アマガミ化・・・鷹の化身(ファルコン・ソウル)!!」
ギンの姿が右腕だけではないく、全身が変わる。それに対しても刹那は顔色一つ変えない。
「人の姿をなくしたか。その方がアマガミらしくていいぞ!」
「全身アマガミ化は本当にアマガミになってしまう恐れがある故、使えるのは俺を含めて4人。
この力、先ほどまでの俺と同じと思うな!!」
完全な鷹と化したギンが風の如く刹那に突き進む。それを遠くで見ていたレンが呟いた。
「全身アマガミ化・・・。ギンの奴、あそこまでしなくても勝てるだろうに」
「どこまですれば、勝てるつもりでいるんですか?」
声が響いたと同時に、レンが作っていた木の牢獄が爆発した。そして中から鈴華が現れた。
レンは少し驚いた表情をしたが、すぐに余裕の表情を見せた。
「驚いたね。よくあの檻から抜け出せたね」
「刹那さんも言ってたでしょう?もう少し木の強度を強くした方が良いって。
だからちょっとした爆発でも壊れてしまう」
レンは自分が生み出した木の周りの様子がある程度だが分かる。
木の牢獄の中は爆発する寸前、中の空気がほぼ真空になっていた。
おそらくこの女は何らかの方法で中の空気を一点に凝縮させ、それを一気に放つ事で
あの空間から脱出した。と、レンは読んだ。そう思った上でレンは鈴華に尋ねた。
「随分と無茶な方法で脱出をしたようだね。そこまでして頑張る理由があるのかい?
たかがコアの一つに命を掛ける意味があるのかい?」
鈴華はまだ息の整わない口調で言った。
「・・・私たち封魔士は何も世界のためだけにアマガミを倒しているわけではありません。
皆アマガミに何かしらの恨みを持ち、それを晴らすために、その力が欲しいために封魔士になっています。
刹那さんは両親も霊感の持ち主だったため、目の前でアマガミに両親を喰われ孤独に陥ってしまいました。
・・・私は小学校の頃、私を狙ってきたアマガミのよってその場にいた私のクラスメートの半分が殺されました。
アマガミは霊感のないものは食べません。でも、食事の邪魔だと感じた者は容赦なく殺します。
例えそれが、無邪気に笑う子どもだろうと関係ありません。
私はそんな復讐心はありませんが、唯一つ、アマガミによって失う命があることに私は憎んでます。
アマガミにとってはただの食事でも、私たちにとっては人の命に関わる重要な事。
これ以上、一人でも多くの命を救うためにも封器化出来るコアが必要なんです。
封魔士が一人増えることが、何人もの命が救われる事に繋がるから。
だから、たった一つでも私にとっては夢を叶える希望なんです!」
全てを聞いた後、レンは暫く黙った。その第一声は
「きゃははははははは!!!」
大笑いだった。本当に可笑しそうな笑った後レンが言った。
「馬鹿じゃないのあんた!?人間は自分の命を掛けてまで守る程いいもんじゃないんだよ。
人間なんて薄汚れていて、汚くてゴミのような存在さぁ!!
そうさ。そんなものを守ろうなんて偽善もいい所何だよ!!全身アマガミ化・・・樹木の妖精女王(ティターニア)!!」
レンが顔だけを残して全身が木に埋もれていく。レンが一本の大樹と化した。
「さぁ!!偽善を言う悪い子はこのあたしがお仕置きしてあげる!!」