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Re: 封魔士軍団—アボロナ— 26話更新 ( No.69 )
日時: 2011/01/04 14:10
名前: アビス (ID: U3CBWc3a)

「・・・大丈夫かあんたたち?」

数日後。体の傷も癒えて学校に登校した二人。今日も何時もと同じように放課後に屋上に集まっていた。
傷跡は完全に消えているのだが、湊は二人の違和感を感じ取っていた。

「ああ。大丈夫だ」

刹那が素っ気無く返す。湊はそれ以上聞き返すことも無く、そうか、と言っただけだった。

「それで、今日は一体なんの調査をするんだ?」

「今日は前に湊さんが言っていた呪いについての検証です」

「ん??それ、あんたらの仕事の内に入るのか?」

湊が少し不思議そうな顔で尋ねると、刹那が答えた。

「元々私らの任務はこの学校の調査だ。七不思議について調べていたのは、
それが一番怪しいものだったからだけだ」

「なるほど。で、どうやって調べるんだ?」

「勿論、それのプロにやってもらう」

そう言って現れたのは3人の人物。3人とも顔は頭に被ってる布地で見えないが、
如何にもな雰囲気を醸し出している。

「彼らはアボロナの呪い、及び解呪に長けた呪師だ。普段は呪いの開発や研究を行っているが、
私らが調査するよりよっぽど確実だろう?」

「じゃあ、俺らはここで待機か」

湊がつまらなそうに言う。

「そんなわけないだろう。私らは彼らの護衛だ。彼らはアマガミと戦える戦闘力は
持ち合わせてはいない。アマガミと遭遇した場合を考え、私らが彼らを守るんだ」

呪師が一人一人に付く。勿論、湊の前にも一人呪師が現れ頭を下げる。

「じゃ、調査を開始するぞ。湊は正門とプールを。鈴華は裏門と体育館、それと運動場を。
私は校舎と学校全体を回ってみる。以上だ」

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「はぁ〜〜あ。護衛とかつまんね〜〜」

湊は正門への移動中、大欠伸をしながら言った。時間はまだ夕時。まだ部活などをやっている生徒は多いが、
そんなこと気にせずに湊は歩く。湊も刹那から腰布を渡されているのだ。
初めはいらないと言った湊だが、脅しに近い説得を受け承諾したのだ。
ため息をつきながらちらりと呪師を見るが、無言で湊の後をついてきている。

「・・・なあ、あんた」

「・・・・はい、なんでしょう?」

「おおう!」

湊が驚きの声を上げる。どうせ話しかけても無言だろうな、とか思いながら声をかけたのだが、
すんなりと返事をしたからである。・・・声からして女性であろう。

「・・・・何をそんなに驚いているんですか?」

「ああ、いや・・・。喋れるんだな、と思ってな」

湊がそう言うと呪師は笑っているのか布地がユラユラと揺れる。

「ふふっ。ただ、無駄話が好きじゃないってだけですよ」

「・・・何か顔が見えないって変な気分だな」

「・・・取りましょうか?」

そう言って呪師は頭の布地を取る。と、湊はその呪師の素顔を見て目を丸くした。

「・・・??どうしたんですか??」

「いや、あんた・・・顔・・・」

湊の予測通り女性ではあったが、予想にしていなかったのはその顔。
顔の右半分が火傷なのか焼け焦げているような感じになっていて、右目はガラン洞だった。
女性の顔としてはとても痛ましいものだった。だが、女性は軽くああ、と返すと。

「すっかり忘れてましたね。呪師の皆はだいたいはこうですよ。
新しい呪いの研究は失敗と暴発が日常茶飯事ですから。傷のない研究者は無能だって言われるくらいなんですよ」

笑顔で語る女性。左半分だけならとても美しい顔なのだが、もう半分がそれを阻止している。

「俺にはとてもじゃないが理解できないな。
女としての顔を捨ててまでどうして研究を続けるのか」

「ならばその理由をあなたに説明しても意味がありませんね。ご理解頂けないなら。ところで・・・」

ばさっ、と音がして湊が振り向くと、女性は手にナイフと拳銃を持っていた。

「あなたは刺殺と銃殺・・・どちらがお好きですか?」

「なっ!!」

女性はナイフを投げ、そして引き金を引いた。殺気を込められた二つの凶器が湊へと向かう。

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その頃刹那は校舎を歩き回っていた。勿論背後には呪師もいる。

「どうだ、何か感じるか?」

「何かと言うならばこの学校に入った時点で感じております。
ですがそれが何なのか、一体どこから来ているのかまではお分かりになりません」

「そうか」

「ところで、非常につまらない質問なのですが・・・」

「何だ?」

「今現在生存している封魔士は一体いくらおいでで?」

呪師の声の調子が少し変わったことに気付いた刹那。

「そんなことを聞いてどうする?」

「いえいえ。もしご少数なのであれば、ここで2人も失うのはとても痛いことだとろうと思いまして」

「なに!?」

刹那が後ろを振り向くと呪師がこちらに向かってナイフを突きたてようとしていた。
だが、刹那は冷静に対処をした。迫りくるナイフを受け止め、呪師の首の後ろを手刀で打つ。
呪師はそのままばたりと倒れてしまう。と、そこで携帯が鳴った。

普段は携帯を持ち歩かないようにしていた刹那だが、万が一の時もあるので、
戦闘になっても邪魔にならないポーチに入れ持ってくるようにしたのだ。
電話にでるとその主は湊だった。

『おい!何か呪師の奴がいきなり襲ってきたぞ!?』

「そちらもか。怪我はないか?」

『ああ、なんとかな』

湊の近くでは呪師の女性が倒れている。勿論気絶させただけで、命に別状ない。

「取りあえず一度合流するぞ」

『ああ、分かった。・・・おおっと!!』

「どうした!?」

『プープープー』

湊からの電話が突然切れてしまった。次に鈴華に電話をかけるが繋がらない。

「・・・・一体何が起こっているんだ」

刹那はそう呟きながら駈け出した。