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第１６話
—キオク—

懐かしくも悲しい夢を見た。
寂しい記憶の中に独り立っている私。

その横の木の陰に要る男の子。
丘の上の寂しい風景の中に立つ一本の木の陰に要る男の子は何をしているのだろう・・・。

私は気が付いているが話しかけない・・・。

「ねぇ、遊ばない？」
男の子に声を掛けられてハッとする私。

「いいよ。何して遊ぶ？」
私は答える。

「名前教えてよ。」
男の子は言う

「私は実咲だよ。貴方は？」
私が言う

「俺はゆ・・・・い。」
誰？
誰なの？

ゆ・・・？

「だから、ゆ・・へい」
え？
誰なの？

「俺は優平だって！早く遊ぼうぜ！」

記憶はそこで途切れている・・・

「優平！」
私が気がついたときには夢は覚めていた。

横には優平がいる。

「どうした？イキナリ。」

「あれは優平だったんだ・・・」

「はぁ？」

「何でもないよ。」
私はそういうと窓の外を見た。
そして携帯を手に取ると
『家に帰るの遅くなるから。ご飯食べて帰る。ついでに参考書買ってから帰る』
と母にメールをした。

「実咲？なんで俺の名前呼んだの？」
優平は不思議そうな顔で見てきた。

でも教えない。
記憶の中に眠っているから。
優平もきっと憶えているから。

ヒントだけ・・・

「昔の夢だよ。私がまだ小学４年の時の夢・・・。」
優平も覚えているはず・・・

忘れてさえいなければ・・・ね。