コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: Multiplex Cross Point オリキャラ募集中 ( No.132 )
日時: 2010/05/04 19:29
名前: Faker (ID: x2W/Uq33)

「結月さん。言う間でも無いでしょうが、私の目的は彼女です」

不敵な笑みを浮かべ、錆螺 唄はカノンを守るように立ち塞がる結月 采音に言葉を投げ掛ける。
手に持ったナイフに付着した赤い液体を見たカノンが、ひっ、と情けない声を上げた。

「彼女さえ渡せば、これ以上の加害をするつもりはありません。さて、選んだ頂きま─────」

だが、錆螺 唄の言葉は続かない。
何故なら、結月 采音が彼が喋っている最中に言葉を挟んだからだ。

「知ってるかな、唄くん」

「人の言葉を塞いだかと思えば…。何ですか?」

「私が何故、【荒廃せし失楽園】の【鉄の十字架】部隊の隊長であるのか」

「…は?」

「そもそも、私は後衛を専門としている。攻撃力じゃ、黒雅くん、紀和の方が上」

「それは貴方の手に宿る異質な能力が存在するからでしょう?」

そうだね、と結月は頷いた。
彼女の腕には、触れた相手の細胞を活性化させ、再生能力を高める異質な力が備わっている。
それ故に、錆螺 唄は彼女が【鉄の十字架】部隊の隊長に就いている、そう思っていた。
だが。
結月 采音は、残念だけど違うよ、と彼の予想を完膚無きまでに否定する。
そして、彼女は自分が何故、【鉄の十字架】部隊の隊長であるのか、本来の理由を告げた。

「理由は簡単。───────、私が黒雅くん、紀和よりも強いから。理由は、それだけなんだよ」

その直後。
結月は瞬く間に錆螺 唄との距離を縮め、彼の胸板に強烈な拳打を見舞っていた。
ごふッ、と錆螺 唄の口から吸い込んだ空気が全て吐き出される。
それに構わず、結月 采音は続々と拳打を見舞って行く。

「カノンちゃん。其処で待っててね、───────────すぐに終わらせるから」

「くッ、がはッ…!? 後衛専門の貴方が、こんな攻撃を…!?」

「残念だけど、私は紀和の言う【後衛】だけの人間じゃ無いんだよね。どちらかと言うと、私は【万能】タイプかな?」

実際は、結月は【後衛】だけでは無く、【前衛】としても戦える人間だという事。
つまり、状況に応じて【前衛】、【後衛】を交互に成す、万能な魔術師、だという事だ。
それこそが、結月 采音が【鉄の十字架】の隊長となった理由。

「前衛としての私の攻撃は純粋な拳打。身体補強魔術を使った上での、ね」

身を捻り、錆螺 唄の顔面に向けて回し蹴りが放たれる。
早く、重い連続的な拳打の所為か、動きの鈍った錆螺 唄に避ける術は無く。

ズガッ、という鋭い音と共に錆螺 唄は顔面に強烈な一撃を受ける。

地面に倒れそうになるも、ギリギリでバランスを保ち、彼は倒れない。
ナイフも手に握られたまま。
武装を含めて言えば、錆螺 唄と結月 采音の間には決定的な有利、不利がある。
それでも、結月は余裕の笑みを浮かべ、皮肉るように彼に告げた。

「どうしたの? 普段の君なら避けれて当然じゃないの?」

「…皮肉のつもりですか。私の言った言葉を私自身に返すとは」

「もちろん。全力で皮肉だよ」

「貴方は…私が思っていた以上に冷酷な人のようだ」

「…、どうして?」

「仲間だった人間を傷付ける。 それが最低以外の何だと言─────────!!」

しかし、またの錆螺 唄の言葉は最後まで続かない。
理由は前と同じく、結月 采音が彼の言葉を遮るように、とある言葉を告げたから。
それは、錆螺 唄の言葉を遮ると同時に、彼を完全に沈黙させる言葉だった。
彼女が放った、その言葉は、


「仲間? …貴方は違うでしょ。だって貴方は──────────」


朧気な意識の中、黒雅 誡、千堂 紀和は確かに彼女の言葉を聞いた。
それは、彼らをも愕然とさせる内容だった。

「──────────唄くん、じゃ無いでしょ?」