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Re: Multiplex Cross Point オリキャラ募集中 ( No.139 )
日時: 2010/05/05 10:57
名前: Faker (ID: x2W/Uq33)

「な…ッ。貴方は…何を言って…ッ!?」

錆螺 唄の動揺は凄まじかった。
結月 采音が告げたのは1つ、お前は錆螺 唄の偽者だ、という内容の言葉。

「そもそも、少し冷静になって考えれば分かるんだよ。貴方が唄くんじゃ無いって事は」

そう言うと、彼女は倒れる黒雅に視線を投げる。
黒雅は出血の激しい腹を手で抑え、むくりと立ち上がった。
依然として息遣いも荒く、傷の深さが見て取れる。
だが、黒雅にとってはそんな事はどうだって良かった。
それよりも問題は、結月の言葉だ。
どういう意味、と黒雅が質問しようとするも、それを遮るように先に結月が口を動かした。

「黒雅くん。君は違和感を感じていたんじゃない?」

「…一応」

投げ掛けられた質問に黒雅は率直に答える。
確かに、違和感はあった。
彼の知る錆螺 唄は、風の属性魔術など使わない。
彼が現れた際、秋兎を吹き飛ばした風の魔術。
そんなものを使役する錆螺 唄を、黒雅は知らない。
第一、黒雅の知る限りでは錆螺 唄は非常時以外の戦闘は主に【制限無き戒めの鎖】を使うはずだ。
それこそが、黒雅が感じた違和感。
だが、幼馴染みである彼が敵に回った、という状況を前に心を乱されてらしく冷静な判断が出来なかった。
結月の言葉通り、違和感があり、彼が偽者だと考えれば全ての辻褄が合う。
結論から言えば、

「貴方は偽者。本物の唄くんは今頃、何も知らずに情報収集してるでしょうね」

「…ッ」

「侮らないでね。【鉄の十字架】部隊の隊長である私を」

突き付けられた真実を前に、錆螺 唄の偽者は静かに笑った。
その事実を一蹴するかのように。
そして、

「だから何だ!? 我々は目的を成就する、それだけだ!!」

その瞬間。
偽者はズボンのポケットから、何かを取り出した。
それを見た結月 采音は思わず、息を呑んだ。
それを見た黒雅 誡は思わず、舌打ちしていた。
偽者が取り出した、それは。

─────────拳銃。

銃口は、彼が目的とする1人の少女に向けられている。
少女には記憶が無い。
喜怒哀楽すら、理解できない。
だが、彼女は本能的に理解する。
自分に向けられたそれが、何を意味するかを。


「消えろ」


負の感情が目一杯込められた言葉が告げられた直後。
一発の銃声が、木霊した。