ALLジャンルのオリジナル小説、ライトノベル、二次創作、ss小説やイラスト投稿なら「小説☆カキコ」

怖い、初めて思った。
明確なまでに悪意を露わにする偽者は確かにカノンに銃口を向け、撃った。
なのに、どうして私は傷付かないのだろう、とカノンは思う。
気が付けば、眼前には自分の前を遮るようにして赤毛の青年が立っていた。
肩に、痛々しい怪我をして。
その瞬間だった、彼女の中で【存在しない記憶】が再生されたのは。

────────生きろ。

────────生きてくれ。

────────すまない…。

胸一杯に広がるのは喪失感。
この感覚を、カノンは知っている。
自分を守る為に、誰かが傷付く、この不条理を。
その時、カノンの中に何かが芽生えた。

─────────誰カガ傷付ク事ハ悲シイ事。

─────────誰カヲ失ウノハ哀シイ事。

─────────モウ見タク無イ、誰カガ消エルノハ。

─────────逝カナイデ、私ヲ置イテ逝カナイデ!!!!

だから。
誰かが傷付くのは、悲しい事だから。
誰かを失うのは、哀しい事だから。

─────────私ノ大切ナ人ヲ壊ス人間ヲ、─────────壊セ。

響き渡る絶叫。
打ち震える体。
その内より、異質な力が出でる。

カノンの心に、誰かが囁く。

自分を大切に思ってくれる人を、傷付ける者を────────、抹消しろ、と。

直後、カノンを中心にして、それは展開された。
それは、絶対的な【無】を表す、白い闇。

それが示す事象は、１つ。

カノンにとって大切な人達を傷付けようとする人間を抹消する事、ただそれだけ。