コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Multiplex Cross Point キャラ募集中 ( No.15 )
- 日時: 2010/03/16 18:27
- 名前: Faker (ID: xFQn5lM8)
ギギギ…、とまたも歯切れの悪い音を立てて開いたエレベーターのドア。
その先に広がっていた光景は、この廃墟ビル、【楽園】の外観からは予想出来ない光景だった。
綺麗な白いフローリングの床に、清潔な白色の部屋。
しかも、部屋の奥にはガラス張りの扉があり、ベランダまで付いている。
クロトは休憩所に足を踏み入れ、相変わらず外観に合わない場所、と率直に思った。
「遅い出勤だな、クロ?」
ふと、休憩所に入って来たクロトに声を掛けた人物が1人。
灰色の髪に、黒いサングラスを掛けた青年。
黒いサングラスに隠れた群青色の瞳は、妙に神秘的だ。
彼の名は、常世 秋兎と言い、【荒廃せし失楽園】のメンバーで、魔術師だ。
「秋兎。お前も来てたのかよ?」
「ああ。遠い日本橋から電車を乗り継いで来たゼ」
常世 秋兎は日本橋に住んでいる。
彼は俗に言う【オタク】と言う奴で、オタクが良く訪れると言う日本橋に居を構えているのだ。
「最近は萌える事が無いからな…、萎えるゼ」
「日本橋って言ったら、そういうのが多いんじゃ無いのか?」
「萌え過ぎて飽きたゼ」
そうかい、と遠い目で呟く秋兎を見て、彼は相槌を打った。
正直に言うと、彼は秋兎の言う、萌え、と言うのがイマイチ理解出来ていない。
「クロトさん。副隊長はご立腹でしたか?」
「ん?」
秋兎との会話中、唐突にクロトの前に珈琲が入ったカップが差し出された。
見れば、カップを差し出して来ているのは、【荒廃せし失楽園】のメンバーの1人。
銀髪碧眼、どう見ても外国人であろう彼はクロトよりも少し身長の低い少年。
彼は、
「スルメ」
「誰がスルメですか」
少年は頬を引き吊らせて否定の言葉を吐いた。
スルメ、とはクロトが彼に勝手に付けた愛称だ。
少年の本名は、ヴァン・スルメルトゲーティア。
これまた長い姓の持ち主で、その中の文字の一部を取ってクロトはスルメと名付けた。
「副隊長はあれだ、最初はツンで終盤はデレだった」
「…すいません、何を言ってるか分からないんですが」
「俺には分かるゼ、萌だな副隊長!!」
「うるさい」
その瞬間。
1人の少女の声が三人を沈黙させた。
少女の声は氷のような冷たさを含むと同時に、刃物のような鋭さを持ち合わせている。
三人は恐る恐る、少女の声がした方に振り向く。
彼らの視線の先は、休憩所の端に向いていた。
其処には、金色の髪に紅い瞳を持つ柚葉 椛よりも少し小柄な少女が壁に凭れて座っている。
片手に小難しいタイトルの本を持った彼女は、
「メル」
「気安く名前を呼ばないで、寒気がするの」
「メル、流石にそれは酷ですよ!?」
「黙れ、ガキ」
「おいおい、スルメはお前の事を想って言ってるんだゼ?」
「喋るな。虫酸が走んのよ」
彼女の口から吐かれる毒のある言葉に、三人は口を閉ざした。
メル・ヴァートン、【荒廃せし失楽園】の中では最年少の魔術師だ。
魔術師としての才能、技術は申し分が無いが、内面は冷たく口を開けば毒舌な言葉ばかり。
ガラスのハートの三人では、到底、太刀打ち出来ない相手だ。
「読書の邪魔なの。黙るか消えるか、どっちか選んで」
「黙る」
「黙ります」
「黙るゼ」
そして訪れる沈黙。
クロトは沈黙の中、ひそひそ、とスルメと秋兎に話し掛けた。
「なぁ、今日の会議の内容を教えてくれ」
「俺は寝てて聞いて無かったゼ」
「…、スルメは?」
「スルメじゃ無いです。今日は組織の今後の方針についての集会を行いました」
「で、どうなった?」
「特に変わった事は無いです。【荒廃せし失楽園】は今後とも、テロ紛いの魔術師の討伐に専念、です」
この世界、すなわち【現実世界】にはテロリストのような行為を働く魔術師が存在する。
【現実世界】の魔術を使え無い人間を見下し、傲慢にも処刑という言葉の下、傷付ける。
現在、世界ではそんな事が行われているのだ。
そんな不条理な暴力が横行すれば、世界の平和のバランスは崩れ去るだろう。
それを守り、テロリスト紛いの魔術師を討伐する、それが【荒廃せし失楽園】の役目。
「悪の魔術師をやっつけて、世界の平和を守るって事だな」
「何か、テレビのヒーローみたいな感じですよね」
「燃えるし、萌えるゼ」
「…意味が分かりません」
「ま、とにかく変わった事は無しって訳ね」
「そういう事ですね」
「じゃあ、御仕事があるまで待機しますか」
そう言って、クロトはスルメが彼に渡そうとしていた珈琲が入ったコップを受け取った。
暖かい珈琲を喉に通し、【荒廃せし失楽園】のメンバーの1人としての日常が幕を開ける。