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現在。
【楽園】の名を冠する廃ビルの休憩所に、【荒廃せし失楽園】のメンバー全員が集まっていた。
カノンの意識回復を祝してのパーティーを開こうとクロトが提案してからである。
テーブルに並ぶ数々の料理をカノンは感極まった目で見ていた。
結月達、【鉄の十字架】のメンバーはカノンに料理を薦めたりしている。
そんな中、柚葉　椛、月架　蒼天は険しい表情をしていた。
二人の脳裏を掠めるのは、暗殺、という言葉。
特に、月架　蒼天は手を後に回し、その手に得物のナイフを握り締めていた。

（この距離なら、首を飛ばせる）

だが。
彼はパーティーが開かれる直前に標的である少女、カノンに関して柚葉　クロトから色々と聞いた。
保護、記憶喪失、【白色の闇】、意識喪失、そして回復…。
その容姿から年齢を考えれば、あまりにも凄まじい人生を送っている、と月架は思う。
カタカタ、とナイフを持つ手が震える。

（…）

どうする、と彼は心の中で何度も反芻する。
ナイフを振るえば、今の距離なら確実にカノンを致死に至らしめる事が出来るだろう。
これは命令だ。
一度だけ深呼吸し、彼はナイフを制服の袖に仕舞い込むとカノンの元に静かに歩み寄る。