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Re: Multiplex Cross Point─多重交差点─ ( No.2 )
日時: 2010/03/15 16:46
名前: Faker (ID: xFQn5lM8)

第一話 【食い逃げ】の魔術師

「食い逃げだ───ッ!!」

昼間の繁華街に響き渡る野太い男の声。
その瞬間、繁華街に並ぶ中華料理屋の店内から1人の青年が飛び出して来た。
黒を基調とした紳士服に、肩に掛かる位の赤毛をリボンで括った青年。
彼は繁華街の道を颯爽と駆け抜けて行く。
その後からは彼よりも少し遅れて店から飛び出して来た店長らしき男が追い駆けて来ている。

「待たんか─────ッ!!」

「ひゃひゃひゃひゃひゃ。待て、って言われて待つ馬鹿はおらんのよ!!」

追って来る男を嘲笑い、青年は更に走るスピードを上げる。
後から追って来る男性も負けじと走る速度を上げるが、年齢が50を越えてる為、息が荒くなっていた。
その状況を見た繁華街の人々は、またか、と溜息を吐いたに違い無い。
譜条市に位置する、この大型繁華街で青年の名を知らない者は無いだろう。
毎度ながら食い逃げを行う常習犯なのだから。

「じゃあな。美味しい飯をありがとうよ、爺さん」

「誰が爺さんだ、俺はまだ中年だ─────ッ!!」

追って来る中華料理屋の店長は魂の叫びを上げる。
それで体力を使い果たしたのか、その場でバランスを崩して転倒した。
青年は転げた店長を無視し、颯爽と繁華街の出口を出て消えてしまった。
店長は忌々しそうに、あの食い逃げめぇ、と呟く。
それはそうだ、今週に入って繁華街で青年の食い逃げ被害に遭ったのは四度目なのだから。
流石に、仏の顔も三度まで、という限度も超えてしまっている。
だが、残念な事に、またも彼を逃がしてしまった。
店長は拳を強く握り締め、決意を新たにする。

(今度こそ。今度こそ、あの小僧を捕まえて謝らせてやるッ!!)