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- Re: Multiplex Cross Point オリキャラ募集中 ( No.218 )
- 日時: 2010/06/11 01:45
- 名前: Faker (ID: w79JdDm2)
Multiplex Cross Point─多重交差点─ 第八話
譜条市の隣に位置する兎葉市。
この場所は都市化計画というプロジェクトが進行中で、デパートやら大型量販店が建ち並んでいる。
多くの人々が訪れ、賑わいを見せる兎葉の街は、昨今の若者の流行の街だ。
そんな兎葉の街に、カノンを含めた【荒廃せし失楽園】の一同は訪れていた。
柚葉 クロトの『全員の士気を上げる』という提案を椛が受け入れ、今に至る。
一同の中には、カノンの知る結月、紀和、黒雅、月架の他、クロトが召集した者達もいた。
黒い長めの髪に、黒と紺を基調とする服装の上から赤と黒のマントを羽織った、不健康に目が純血した青年。
名を威牙 無限と言い、月架のように譜条市の外で危険分子と判断された魔術師の監視を行う業務に就く人物だ。
柚葉 椛が彼を直々にスカウトし、彼女の命令には忠実な人物、なのだが…。
「威牙くん、何で俺を睨むのさ…?」
苦笑するクロトに対し、威牙は睨むような視線を送ったまま黙秘を続けている。
実に、何とも言えない不穏感を感じさせる状況だ。
「えーと。聞いてるか、威牙くん?」
「聞いて無ぇ。そして俺に話し掛けるな、クロト」
無愛想な表情から出たのは、何とも無愛想な言葉だった。
彼、威牙 無限は理由は不明だが、クロトを目の仇にしている。
だが、クロトとは人間関係的な事で問題があるものの、彼の魔術師としての実力は椛の認めるものだ。
「…チームワークは最悪ね、アンタ達」
ふと、威牙とクロトの会話を見ていた美麗な容姿の少女が溜息と共に呟いた。
海を連想させる青の瞳に、低い身長に加え、小柄で美麗な容姿の少女。
如月 琉那、彼女もまた【荒廃せし失楽園】に属する魔術師の1人だ。
彼女はクロトの推薦で組織に属する事となった魔術師で、その実力は折り紙付きだと言える。
「うーん。俺って威牙くんに嫌われるような事をしたかなー。どう思うよ、琉那ちゃん」
「知らない。思い当たる事が無いなら、本人に聞いてみれば?」
「おおー、良い考えだ。って訳で、威牙くん、俺を嫌う理由を是非とも教え──────」
「黙れ」
一蹴だった。
ゴーン、という効果音付きで落ち込むクロトを余所に、如月は先々と歩いて行ってしまう。
彼女は基本的に誰とも連む事は無い。
それを言外に示すかのような行動だった。
「…嫌われたなー、俺」
あはははー、と寂しく笑う、クロト。
そんな彼の頭に、ポン、と手が乗った。
見れば、後に1人の男性が立っている。
180前後の身長に、一見、冷たく見えながら何処と無く優しさを感じさせる緋色の瞳を持つ、20代後半の男性。
公孫樹 雅。
【荒廃せし失楽園】が設立された際、組織の総帥である、とある男性が推挙した魔術師だ。
天才、と例えても染色無い魔術の使い手である男性だ。
「クロト。落胆するな、お前の気持ちは必ず如月に通じるはずだ」
「雅の旦那…。相変わらず、良い事を言うなー。そうだな、落ち込んでるのは俺の性に合わねーもんな」
元気を取り戻したクロトを見て、頑張れよ、と静かに告げ、彼はクロトから離れ、先を歩いて行く。
その背中は何となく近寄り難く、一匹狼の気を放っていた。
そんな背中を見送り、元気を取り戻したクロト。
突如として、彼は背中に打撃攻撃を受けた。
「げふッ!?」
「クロトにアターック!!」
クロトの背中に打撃攻撃もとい、突っ込んで来たのは、甘いピンク色の髪をツインテールに結った少女だった。
満面の笑みでクロトの背中に飛び込んだ彼女だが、その勢いでクロトの腰付近が、ボキッ!! と鳴った事に気付いていない。
バターンッ、と地面に顔面から倒れ込むクロトの背中の上に乗り、少女は勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
「クロトの負け〜」
「ぐぉぉぉぉ…!? こ、腰が折れ…」
「ねぇねぇ、私の勝ちだよ、クロトー!!」
「ちょ、分かったから。頼むから腰の上でジャンプしないで、って痛ててててててててて!?」
街中で騒ぐ2人は非常に目立つ。
周囲の一般人達は2人を一瞥しては、何かボソボソと話している。
ふと、そんな2人を見かねて、水色の癖毛の少年が、少女の手を取り、クロトの背中から退けた。
うおお、腰が…、と腰痛を患う老人のように腰に手を当てて起き上がったクロトは、少年と少女の姿を視界に捉える。
2人共、如月と同じく【荒廃せし失楽園】の最年少の魔術師だ。
ピンクと水色を基調とする服を着た、ピンク色の髪をツインテールに結った少女。
彼女の名を、雅依 光星と言う。
喜怒哀楽の感情の現れが激しい、天真爛漫で、ホラーが苦手な少女だ。
そして、無愛想で不機嫌な表情の、癖毛のある水色の髪に明るい黄色の瞳の少年。
何となく光星と似ている感じの少年、彼は雅依 輝月と言う。
同じ【雅依】の姓だが、血縁の関係は無く、2人の関係は幼馴染みだ。
「うぅ、助かったよ。輝月くん」
「うっせ。黙れ」
それだけ言うと、輝月は光星の手を引いて先々と行ってしまう。
クロトは腰を抑えながら、静かに天を仰いだ。
そして、思った。
(俺って年下の子に嫌われてるなー。…体質かなー)
と。
仰いだ天は快晴。
クロトは一度だけ苦笑と共に溜息を吐き、腰を抑えて前へと進んでいく。