コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Multiplex Cross Point オリキャラ募集中 ( No.238 )
- 日時: 2010/06/13 16:54
- 名前: Faker (ID: w79JdDm2)
空気が悪い。
兎葉市内の公園のベンチに腰を掛けるヴァン・スルメルトゲーティアは率直にそう思った。
現在、【荒廃せし失楽園】の面々はそれぞれグループ、個人に別れ、行動している。
そんな中でヴァンは個人での行動を選び、公園で昼寝でもしよう、と思った訳なのだが…。
公園のベンチには先客が座っていた。
藍色の髪に同色の瞳、膝丈まである黒色のワンピースを纏った少女。
街を歩けば誰もが振り向くであろう、それほどに良いルックスの持ち主だ。
彼女は星姫 月夜と言い、【荒廃せし失楽園】の魔術師だ。
彼女は組織の中でも非常に変わった存在だと言える。
極度に無口で、必要最低限の言葉以外は発しない、機械のような人間。
加えて、自分自身に厳しく、常に自らを極限に追い込んでいる。
故に、常に近付き難い雰囲気を放っていた。
そして、ヴァンは彼女が非常に苦手なのだ。
理由は明白で、ヴァンは何故か彼女に嫌われているのである。
しかも、この状況。
公園には彼と彼女以外の人間はいない。
静かである、凄まじく。
「あ、あの…」
「…」
「今日は、良い天気ですね?」
「…」
見事にスルー。
彼女の視線は前の公園の遊具を見据えたまま、変化は無い。
その無表情も、何も。
「すいません」
何と無く、場の空気に耐えられずヴァンは彼女に謝罪した。
こんな時、彼はクロトや秋兎の事を羨ましいと思う。
彼らなら、この状況でも彼女と最低限の会話をする事が出来るだろうから。
はぁ、と溜息を吐き、ヴァンは星姫から視線を移そうとした。
そんな時。
「私は貴方が嫌い」
率直な言葉だった。
それこそ、胸にズブリと深く突き刺さる程に。
「貴方の言葉遣いが、その優しげな性格が」
ただ、平坦な声色。
だからこそ、其処に嘘も何も無いと分かる。
「嫌い。私は貴方が、嫌いなの」
初めて発された言葉は、真っ黒な言葉だった。
それでも、
「…少しだけ」
彼女の言葉を全て呑み込んだ上で、彼女の視線に目を合わせてヴァンは言う。
「少しだけ、貴女の事が分かりました」
大収穫ですよ、とヴァンは呟くと、重たい腰を上げ、その場から歩いて去って行く。
1人の少女を置いて。
星姫は、彼の背に視線を移した。
無機質で、本当に何かを捉えているのか分からない、その瞳で。
彼が公園から出てしまう、その直前に。
唇を噛み締め、彼女は静かに、本当に静かに呟いた。
「本当は分かってるのに。貴方は、【彼】とは違うって事くらい。でも…!!」
最後の、その言葉だけは。
普段の彼女から考えられない、感情を露わにした言葉だった。