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Re: Multiplex Cross Point キャラ募集中 ( No.30 )
日時: 2010/03/24 14:19
名前: Faker (ID: xFQn5lM8)

不幸ですねぇ。
住宅街の路地を走りながら、黒っぽい青色のショートヘアーの青年は溜息混じりに呟いた。
白シャツの上に群青色の上着を羽織り、黒い長ズボンを履いた彼はモデルに間違えられそうな顔立ちをしている。
両耳に、チェーンの繋がった翡翠色の石のイヤリングをしており、緋色の瞳は何とも神秘的だ。
彼の名は、錆螺 唄。
魔術師の世界では【情報屋】の二つ名で知られる人物だ。
普段なら今のように走ったりする運動は皆無で、木陰で本を読んだりする生活を楽しんでいる彼なのだが、

(まったく…。面倒事に巻き込まれましたね)

疲れたような溜息を吐く。
朝、テレビを付け、ニュースの後の血液型占いを見た。
すると、自分の血液型が今日は最高の運勢だ、と言うではないか。
番組は言う、今日は外に出て人助けをすると良い事があるかも、と。
という訳で、外に出て散歩していると、1人の少女と出会った。
綺麗な短い金髪の少女、彼女は唄に会うなり、

『助けて、追われてるの』

と、言って来たのである。
容姿から察するに、少女の年齢は13〜14歳くらいだろう。
普段なら面倒事は極力、回避する唄だが、占い番組の助言を信じて彼女を助けた訳だ。
で、結果として。

ローブを深く被った魔術師二人に追われている訳である。

「いや〜、予想してませんでしたよ。まったく、慣れない事はするべきじゃ無いですね…」

「…大丈夫?」

悔いる言葉を呟く唄に対し、心配するような言葉を掛けたのは少女だった。
現在、唄は彼女と絶賛逃亡中である。

「何とか。…ところで、何故に君は魔術師なんかに追われてるんです?」

「分からない」

「…そうですか。では、君は自分が何者か分かってますか?」

「…カノン」

「カノン?」

「私の名前。カノンって言うの」

「名前は覚えてるんですね。では他の事は?」

「好きなラーメンの味は塩。具材はメンマ少々、チャーシュー1枚、モヤシ」

「ははは、明日に使えない無駄知識ですねー」

情報が不足し過ぎている。
彼女の素性は現段階では不明。
分かってるのは名前と、…好きなラーメンの味と具材だけ。
そして、現在の状況は二人の魔術師を相手に逃げている状態だ。
所属する魔術組織【荒廃せし失楽園】に連絡は取った、後は。

「仕方ありませんねぇ。彼らが来るまでは時間を稼がねばなりませんか。では─────」

足を止め、彼は追っ手の魔術師の方に振り向いた。
群青色の上着が、ばさり、と揺れる。

「【情報屋】、錆螺 唄。────いざ、参りますか」