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Re: Multiplex Cross Point オリキャラ募集中 ( No.381 )
日時: 2010/07/14 20:17
名前: インク切れボールペン (ID: w79JdDm2)

最悪ですよ、この状況。
兎葉の商店街の路地で、自分達の状況を改めて認識し、ヴァン・スルメルトゲーティアは額に手を当て、そう呟いた。
彼は今、同僚の常世 秋兎と共に、白い甲冑を纏った騎士の一団に包囲されている。
四方八方から突き付けられた鉄槍の刃は、どれもヴァンと秋兎のに突き付けられていた。
正直な話、この状況では全くを以て動きが取る事が出来ない。
故に反撃の糸口を掴めず、危機的状況のままヴァンと秋兎は、降参、と手を挙げていた。
白甲冑の騎士の1人は、敵意と警戒を含んだ声で、

「【荒廃せし失楽園】の者か?」

「…解っているはずですよ、貴方達は」

「ヴァン。そんな怖い顔で挑発的な事を言うのは、この状況じゃ死亡フラグだゼ」

「もう、この状況で既に死亡フラグは立ってますよ…」

確かに、首に鉄槍の刃先を突き付けられた現状況では、ヴァン達が命を奪われるのも時間の問題だ。
鉄槍の刃先が動けば、その瞬間には二人の首は地に落ちているのだから。

「総帥の命令で、【荒廃せし失楽園】の者は殲滅する様に命じられている」

構えッ!! と、騎士の1人の号令で他の騎士達が鉄槍を振り上げる。
刺突に加え、得意な三日月の鎌の様な形状を持った槍は、ヴァン達を叩き斬らんと降り下げられた。
騎士達の全身全霊の力を込めた一撃は、ヴァン達をいとも簡単に叩き斬る─────


────────はずだった。


「やっちゃって構わんゼ、メル」

直後。
天空を引き裂く様な音と共に、何かがこちらに向かって来る。
空気の層を規則的に一直線に撃ち貫き、その何かは鉄槍を振り上げた騎士の1人に直撃した。

「ごはッ!?」

鉄槍を手から離し、騎士は建物の壁に激突した。
それも、ただ激突したのではなく、相当な衝撃を受けたのか、少しだけ壁に体が埋まっている。
何だ、と武器を振り上げたまま、騎士達は吹き飛ばされた騎士に視線を移した。
見れば、その騎士の脾腹に、鋭利な突起を持った大きめの鉛の銃弾が突き刺さっている。
出血が無い事を見ると、銃弾は甲冑を貫通してないらしい。

「…流石は【灰燼の風】が開発した、防護魔術を施した甲冑ですね。メルの銃弾を受け止めるとは」

「あ〜、確かあれだゼ。こいつらの甲冑って戦車の砲撃にも耐えれるって噂だゼ」

そうなんですか、と秋兎の言葉に正直に感心しながら、ヴァンは笑った。
その笑みは、闘争心を剥き出しにした者が浮かべる、特有の笑みだ。

「貴様ら…、何をした!?」

「何をしたか? 此処から約200m先のビルの屋上。貴方達が目に施した探査術式で其処を見れば解るでしょう」

騎士達が角膜に施した、探査術式。
それは10km以上先まで、その視界に捉える事が可能。
千里眼、伝説上の能力から生み出された術式だ。
騎士達は、ヴァンの言葉通り、200m先のビルの屋上を視界に捉え、騎士が吹き飛ばされた要因を発見した。

長い金髪の少女が、巨大な銃を構え、スコープを使い、こちらを見ているのだ。

「メル・ヴァートンか!?」

正解、とヴァンは賞賛の意味を込めて騎士達に言葉を贈った。
そして、

「メルに負けてられませんね。僕達も動くとしますか、秋兎さん」

「スルメに任せて、俺はメイド喫茶に行ってくるゼ!!」

「背中から刺しますよ?」

「はいはい。解ったゼ、頑張るよ。あー、メイド喫茶、今だ遠き理想郷だゼ」

「貴様ら、何を言って──────────」

だが、騎士の言葉は最後まで続く事は無い。
何故なら、

ヴァンと秋兎を囲んだ、騎士達の包囲陣は一瞬にして崩れ、騎士達が宙を舞ったからだ。

ヴァン、秋兎の手によって、何らかの攻撃を受けたのは明らかだ。
ガッシャァァァン!! と甲冑が音を立て、騎士達が大地に墜ちる。
それでも、防護魔術によって戦車の砲撃すら耐えうる強度を誇る甲冑を纏った者達。
攻撃に耐え、騎士達は立ち上がり、鉄槍を以て攻撃を開始する。

「戦車の砲撃すら耐えれる強度を持ってる。それは事実ですか?」

投げ掛けられた質問に騎士達は、無論!! と答えた。
どうやら、戦車の砲撃すら耐えれるというキャッチフレーズは本当らしい。
それだけの防御を貫くのは、メルの得物である大型狙撃銃でも難しいのは先程の騎士を見て解る。
しかし、

「戦車の砲撃にも耐えうる装甲。確かに脅威的です。…ですが」

「ちょっとばかし、ミスをしちまったな、お前ら」

そう、それは騎士達にとって最大の敗因。
慢心という幻想はテメェらの体を喰い潰すゼ、と秋兎は黒いレンズのサングラス越しから騎士達を一瞥し。
ヴァンと声を揃えて、高らかに騎士達に告げた。
その最大たる敗因を。


戦車の砲撃を防ぐ程度の装甲で、俺達の攻撃を防げるとでも思ったか、と。


強力な装甲を破るには、どうすれば良いか。
簡単な答がある。
それは、


「「装甲の耐久硬度以上の破壊力で攻撃すれば良いだけの話」」


爆風が吹き荒れる。
【灰燼の風】が【人払い】によって一般人を除外し、形成した戦場に魔術師二人の手で。
破壊の嵐が吹き荒れる。