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Re: Multiplex Cross Point─多重交差点─ ( No.4 )
日時: 2010/03/15 18:34
名前: Faker (ID: xFQn5lM8)

繁華街を抜け、住宅地を走っていた青年は唐突に足を止めた。
何故なら、ズボンのポケットに収納していた携帯が突然として着信を示すバイブルが鳴らしたからだ。
彼はポケットから携帯を取り出すと、耳に携帯を近付けて電話に出た。

「はいはい。柚葉 クロトでーす」

軽快な口調で電話に出た青年。
しかし、携帯の向こうから返って来た言葉は、

「このアホ─────ッ!!」

「ぎゃあああああ、耳が───────ッ!!!」

大音量で返って来たのは、聞き覚えのある少女の声だった。
かなりの音量だった為、携帯を近付けていた耳の鼓膜が破れそうになったのは言う間でも無い。

「貴様。我が【荒廃せし失楽園】の集会が今日であるのに、何で来ない!?」

「あれ、今日だったけ?」

「携帯にメールを送ったぞ。この前、貴様が私に教えたメールアドレスで」

「あー…。なら、絶対に俺は知らんわ」

「何でだ、貴様の携帯にメールをしたんだぞ。貴様が私に教えたアドレスで」

「うん。だって、そのアドレスは近所の婆さんの携帯のアドレスだから」

その言葉に、電話の向こうにいる少女は口を閉ざした。
互いに沈黙する事、数分間。
この沈黙を打破したのは─────

「このボケ──────ッ!!!」

「ぎゃあああああ、二回目だけど耳が─────ッ!!!」

「何で近所の婆さんのアドレスなんぞ教えたんだ、バカ野郎が───ッ!!!」

「ちょ、待っ…、耳が潰れるッ」

「ええい、とりあえず早く【楽園】の方に顔を出せ、以上ッ」

そう言って、彼女は通話を強制的に終わらせた。
クロトは立ち尽くして耳を押さえて唸っている。
彼女の声が耳の中で反響して、今での耳が痛い。

(痛てて…。と、とにかく【楽園】に向かった方が良いみたいだな…)

痛みを発する耳を押さえつつ、彼は住宅地を歩いて行く。
目指すは、【楽園】の名を冠する廃墟ビル。
其処は、世界の非日常を司る者達の組織の本拠地。
人は、世界の非日常を司る者達を、こう呼ぶ。


魔術師、と。


そして、柚葉 クロトも、その1人。
彼の名は、人呼んで───────────、【食い逃げ】の魔術師。