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Re: Multiplex Cross Point キャラ募集中 ( No.45 )
日時: 2010/03/30 18:45
名前: インク切れボールペン (ID: xFQn5lM8)

「カノンさん、君は逃げなさい」

「貴方は?」

「後から行きます。まずは、この執拗なストーカー紛いの馬鹿共に、お灸を据えてからです」

カノンは唄の言葉に肯くと、路地を走って行く。
魔術師達は、目的の彼女を逃がすまいと、走るスピードを上げる。
だが、その道を錆螺 唄が阻む。

「退け!!」

「おやおや、粗暴な言葉だ。紳士たる者、言葉遣いに気を付けなければなりませんよ?」

「邪魔と言った!!」

迫り来る魔術師二人。
どうやら、この二人は唄が何者であるかに気が付いて無いようである。
彼は溜息を吐くと、右手の指を、パチンッ、と軽快にに鳴らした。

たったそれだけの動作で、コンクリートの地面を刺し貫き、銀色の鎖が二本出現した。

「なッ…」

「縛れ─────────、【制限無き戒めの鎖】」

唄の言葉に反応し、突然の異常事態に驚きを見せる魔術師達を、出現した鎖は縛り上げた。
鎖は魔術師達の身動きを封じ、完全に魔術師達の動きを沈黙させる。

「こ…、これは…」

「【制限無き戒めの鎖】。僕の得意魔術ですよ」

制限無き戒めの鎖。
その名の如く、長さの制限が無い、魔力によって形成される鎖を作り出す、錆螺 唄の魔術。
鎖の強度は高く、防御技としても使える魔術だ。

「き、貴様…、まさか…、【神聖】の名を持つ…錆螺 唄か…!?」

「やっと、気が付きましたか。さて、聞かせて貰いましょうか。─────────何故、彼女を追った?」

唄の言葉に、魔術師は静かに嘲笑の笑みを浮かべた。
まるで、勝ち誇り、敗者を嘲る勝者のように。

「知る必要は無い。そして、───────────手遅れだ」

その言葉が終わると同時。
二人の魔術師は、



その口から、大量の血を吐いた。



「なッ…」

思わず、唄は驚きの声を上げる。
魔術師二人は、血を吐きながら、息絶えた。

(自害…。いや、毒を服用した形跡は無い。───────、これは…)

死体を調べながら、彼は魔術師二人に共通する物を発見した。
それは、首筋に書かれた歪で不可思議な文字。
常人ならば、何かは理解出来ないであろう文字を、錆螺 唄は知っている。
これは、魔術文字。

(…この文字の意味は、【時】と【毒】。─────、時限式の毒物発生魔術か)

魔術文字は、魔術を発動させる為に使われる魔法陣の縮小版のような物だ。
魔術文字の意味さえ理解していれば、様々な効力を持つ魔術を発動させる事が可能。
この魔術文字は、二人の体内で時限式で致死毒物を発生させる魔術を発動させる為の物のようだ。

(少女の追跡。私という障害に遭い、目的達成困難となった。そして、魔術による行動不能と共に発動した、致死毒魔術)

目的を達成しなければ、命が失われる。
あまりにも極端、そして不可思議。
何かが、引っ掛かる。



『───────────、手遅れだ』



ふと、錆螺 唄の脳裏を掠めたのは、魔術師の言葉。
不吉を暗示するような、その言葉を思い出し、唄はカノンの事を思い出した。
先に逃がした彼女は無事なのだろうか。
それを考えた時、唄は不安になった。
手遅れ、という言葉が、カノンの状態を暗示したものだとしたら?

(まさか─────、…ッ!?)

その瞬間、大地が轟音と共に揺れた。
巨大な揺れは、唄がカノンを逃がした道の先から、来ている。
最悪の事態が、彼の脳裏を掠めた。

「冗談では無いですね。逃がしたのに、何か遭っては困りますよ、カノンさん…ッ」

指を鳴らし、それを合図として鎖を消すと、態勢を崩して倒れた魔術師達の死体を一瞥もせずに、唄は走った。
逃がしたカノンの無事を確かめる、その為に。