コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Multiplex Cross Point ( No.484 )
- 日時: 2010/07/30 22:18
- 名前: インク切れボールペン (ID: mCvgc20i)
「カノンが、【創製種】だと…!?」
クロトの口から語られた真実に、柚葉 椛は愕然と共に彼に、そう諮問していた。
カノンが、ダージス・シュヘンベルクの手で作られた【創製種】である。
君が知らないカノンの真実を、の前口上と共に語られたのは、そんな事実だった。
椛の他、威牙、黒島、冥弛の3人も愕然とした表情のまま硬直している。
ただ、眼前のクロトだけは別で、陽気な微笑みを浮かべたままだ。
「さーて、椛ちゃん。ここで問題でーす、ダージスの目的は何でしょう〜?」
「簡単だ。カノンに【ゼロの術式】を発現させ、それを回収。【灰燼の風】の戦力にしようと…」
残念、不正解。
彼女の言葉を最後まで聞かず、クロトは彼女の言葉を遮るように告げた。
それは間違っている、と。
「違う…? じゃあ、何だ。【創製種】であるカノンを何の目的で私達の組織に保護させた?」
「知ってるか。神の力は、魔術の属性で例えると、如何なる力でも不可侵な【絶対】の属性に分類される」
「おい、私の質問に答えろ、クロト。話の路線が変わってるぞ」
いいや、変わってないよ。
そうとも、ダージスの目的。
その話の路線は、何も変わっちゃいない。
「神の力。【絶対】の力は神のみが扱える。人間では扱えないのは、椛ちゃんも知ってるね?」
「ああ。神の力は膨大な量と質を持っていて、人が扱うには許容量が圧倒的に足りん」
それに、神の力を手に入れる事すら不可能だ。
神は世界とは別次元の【天上】と呼ばれる世界の頂点に座していると言われている。
どんな優れた魔術師であろうと、次元を越える者など椛は聞いた事が無い。
加えて、神の力を手にした所で、行使できるのは神だけだ。
人間が扱おうにも、内封できる容量では無いし、使用する権利すら与えられない。
「それが何だ。貴様は何が言いたい? まさか、ダージスが神の力を操ろうとしているとでも言うのか?」
絶対に不可能だ。
椛はそう言って、鼻で笑った。
だが、対するクロトは陽気な笑顔を崩さず、こう言った。
「カノンが【神へのアクセス権】を持った者だとしたら?」
その瞬間、椛の表情は一気に青冷めた。
クロトの述べた、【神へのアクセス権】という言葉を聞いて。
「神に対して、その【絶対】の力を自由に自身に取り入れる事を許された権利さ」
「…そんな、馬鹿な。そんな常識から外れた存在がいるはずが…!?」
「常識? おいおい、椛ちゃん。俺達、魔術師に常識なんて無いだろ」
魔術師の基本概念は、【常識に対する非常識で在ること】。
常に、相手の常識を先を行く。
それが魔術師の基本的な概念だ。
「魔術師であるダージスが、俺達の常識の範疇の先を行った。それだけの話だろ」
「…クロト。ダージスの目的は何だ。何処からそんな情報を得たかは知らんが、お前は知ってるんだろう」
「勿論。奴はね────────────」
一瞬の静寂が訪れる。
その場の誰もが、クロトの言葉に耳を傾けていた。
そして、彼の口から告げられた言葉は、
「──────────────神様に成ろうとしてんのさ」