コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Multiplex Cross Point キャラ募集中 ( No.56 )
- 日時: 2010/03/31 18:14
- 名前: インク切れボールペン (ID: xFQn5lM8)
しかし、それで全てが終わった訳では無かった。
黒雅は油断無く、怪物から距離を取り、得物を構え直す。
鉄屑で形成される怪物、その両腕は斬り落とす事で無力化した。
だが、その巨躯が、依然として存在している以上、こちらの勝利は無いだろう。
もしも、この狭い住宅地の路地で、あの怪物が暴れ回ったら、確実に一般人に死傷者が出る。
それだけは避けなければ。
「グォォォォォ!!」
「でも、言ってる傍から暴れるんだね」
「何で冷静なんだ、黒雅!! あの怪物、こっちに向かって走って来てるんだぞ!?」
「多分、あれを止めるのは無理」
「諦めるの早いな。仕方ない、俺の───────、【紫電一閃】で!!」
「ダメだよ」
「何でだ!?」
「紀和の【紫電一閃】は対軍艦装甲破壊魔術だよ。それを此処で撃てば─────、この辺が焦土になるじゃん」
「ぬ…。だったら、どうするんだ!? あれを放っておくのか!?」
「大丈夫だよ。私が何とかするから」
静かに、二人の合間を通り、結月 采音が前に出る。
その行動に、紀和は驚きを隠せない。
「何をするんだ? お前は回復専門の後衛だろ?」
「そうだよ。でもね、私は凄い魔術を使えるの」
「何だと…、初耳だぞ!?」
「だって言ってないもーん」
「何でそんなに勝ち誇った顔してるんだ、後衛の分際で!!」
「ふふふ…。私の凄い魔術を見たら、紀和だって腰を抜かすよ。いや、むしろ弟にしてくれって言うかもよ?」
「絶対に無い。って、怪物が来てるぞ!!」
「よーし、刮目してなさい、紀和」
「今日は良い天気だ。明日も晴れると良いな…」
「うわッ、空を見て無視してるよ!! 酷いよ、どう思う、黒雅君!?」
「可哀想だね」
「抑揚の無い、感情の無い声で返答をありがとう。何か泣きそうだけど、頑張るよ!!」
そう言うと、彼女は静かに息を吸った。
その瞬間、全ての音が─────────、消失する。
「静寂より、汝は出ん。終焉より汝は生まれん。我は望みし者。汝の力を授からんと望む者!!」
右手を、前に突き出す。
風を斬り、前方に突き出された右手の先は、駆けて来る、鉄屑の怪物に照準を合わせている。
「いざ、邪なる者を打ち砕く【弓】と化せ!! ─────────、【聖者の迅閃】!!」
莫大な光が、彼女の右手に宿り、【矢】の形を形成していく。
凄まじい威圧感を宿す、光の【矢】。
采音は、左手を光の【矢】を纏う右手に静かに添え、一言。
「Good Luck♪」
最後の別れを、怪物への手向けの言葉を、その一撃に乗せ。
光の【矢】を、─────────────、放つ。
音も無く、ほんの一瞬。
彼女の右手から、光が消えた、と紀和と黒雅が視認した、その時には。
その一撃は怪物に突き刺さっており、怪物は動きを止め、体を形成する鉄屑は、静かに───、崩壊した。