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Re: Multiplex Cross Point 更新中 ( No.763 )
日時: 2010/12/13 19:31
名前: インク切れ (ID: uUme72ux)
参照: 猫に手痛い反撃を受けました。

「嘗めて貰っては…、困るのだよッ!! 若人諸君!!」

爆発が起きた。
魔術師達の猛攻を前に、セルゲイは遂に反撃に出る。
火属性の魔術を以てして発生させた爆発は”炎の壁”を形成し、切迫しての攻撃を加えていた公孫樹と冥弛の進路を阻んだ。
一方で、その後から援護射撃を行っていた雅依 輝星、雅依 光星の”雷光の弾丸”は”炎の壁”に当たって縛ぜた。
妨害と防御の役割を持った”炎の壁”を前に、確かに一瞬だけ魔術師達の猛攻は停まる。

その隙をセルゲイは見逃さない。

ヴォッ、と”炎の壁”を突き破って現れたのは、焔の巨槍だった。
凄まじい速度でセルゲイの手で投擲されたそれは、公孫樹と冥弛の間隙を縫って突き進む。

その軌道の先に、雅依 輝星を捉えて。

光星はそれに気が付いたものの、傍にいた輝星に呼び掛ける暇は無かった。
焔の巨槍…異常なまでの速度を誇るそれの刃先が輝星の身体を射抜くのが先だからだ。
誰が、どんな風に見ても、速度から考えれば光星の声も、輝星の回避行動も間に合わない。
そして、

ズガッ!! と何かが突き刺さる音が響いた。

「…まずは一人」

”炎の壁”が展開される向こう側で、セルゲイは確認する様に呟いた。
指を鳴らすと、それを合図とするかのように、”炎の壁”は瞬く間に消え失せる。
一歩、次の敵を倒す為にセルゲイは消えた”炎の壁”の先に足を踏み入れ、

其処で、彼は動きを止めた。

「何だと…!?」

驚愕と共に、声は口から漏れる。
彼が驚愕をしたのは無理も無い。

倒したはずの輝星は、依然として魔術武装の”拳銃”を構えているからだ。

回避は速度から考えるに不可能。
事実、輝星は回避は行っていなかった。
それなのに、焔の巨槍が彼の身体を射抜く事は無かった。
何故なら、

彼の前に、盾の様に立ち塞がった威牙 無限の魔術が、セルゲイの焔の巨槍を防いでいたからだ。

「ガキが。攻撃の威勢は良いが、防御が薄くなってるぞ」

世話の焼けるクソガキだぜ、と威牙は、やれやれと溜息を吐き、眼前に展開する魔術によって発生させた”盾”を見据えた。
朱色に薄く発光する”盾”は、威牙の十八番の魔術である、”アイギスの盾”と呼ばれる魔術だ。
神話にも登場する”アイギスの盾”を模倣した魔術であり、その迎撃防御能力は非常に高い。
それは、セルゲイの焔の巨槍が突き刺さっているにも関わらず、貫通をしていない事からも解る。
輝星は皮肉めいた言葉を吐いた威牙を一度だけ睨むと、

「うるせー。これからミスはしねぇ」

「はッ、それなら良いんだけよ。防御に偏って攻撃を疎かにすんなよ?」

解ってるっての、と輝星は適当な答を返すと、視線を光星に移した。
彼女は輝星が無事だった事に安堵し、安心からか深く息を吐いている。
そんな彼女へ、彼は言う。

「行くぞ、光星。こんな所で爺さんを相手に立ち止まってるのも飽き飽きだしな」

「そうだね。カノンちゃんも待ってるし、先に行っちゃったクロトと椛も気になるしね」

一気に仕留めちゃおっか、と光星が述べた刹那、二人の瞳に力が宿る。
ジャッキッ、と互いに”拳銃”を構えると、セルゲイに向かって、

「特別に披露するね。私達が編み出した、最強の攻撃を」

「派手だから、実戦に向いてないんだけどな」

だが、威力だけは保証するぜ。
輝星は言葉の最後にそう付け加え、二人は高らかに、口上を述べる。

「「魔弾の狂宴、此処に顕さん。──────────────────”Bullet Dance(魔弾舞踏)”!!」」