コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Multiplex Cross Point 更新中 ( No.775 )
- 日時: 2010/12/15 21:39
- 名前: インク切れボールペン (ID: uUme72ux)
- 参照: Bキー直りました。
黒雅は目を疑った。
セルゲイ・ディスコラヴィッチの前に立ち塞がった相手を、見間違いではないのか、と。
だが、それは違う。
その相手を見据え、何度も目を擦って確認する。
それでも、その相手の姿は変わらない。
自分を庇って負傷し、結月に治癒魔術を施され、安静の為に戦いから離されていた少年。
”弓使い”、千堂 紀和。
本気のセルゲイを相手に、紀和が投げ掛けたのは挑発とも取れる言葉。
それはセルゲイに憤怒の炎を起こさせるに充分だった。
「調子に乗るな、小僧ォ───────────────ッ!!!」
バギンッ、と躯に突き刺さった”光の矢”を握り潰し、彼は吼える。
それこそ、空気を揺るがせるほどの獰猛な叫びを。
刹那、セルゲイの片腕で動く。
焔の巨槍の柄を握った片腕が、紀和の躯を一穿を以て刺し貫かんと焔の巨槍を操る。
刺突一穿。
放たれた焔の刺突は、尋常では無い速度で紀和の首筋を狙って空を裂く。
対し、紀和の行動は単純だった。
彼は、放たれた刺突に対し、焔の巨槍と床の間の空間に躯を滑り込ませたのだ。
スライディングの要領で刺突を回避し、彼は銀色の弓に”光の矢”を番え、─────────────放つ。
「がら空きだぞ?」
ドッ!! と、空気を裂いて紀和の”光の矢”の鋭利な先端部はセルゲイの片腕を狙って放たれる。
彼が焔の巨槍の柄を握っている方の腕、利き腕である右腕を。
「おのれ、小童が…ッ!!」
バンッ!! と、”光の矢”はセルゲイの右腕を貫通する。
貫かれた利き腕からは、籠められていた力が抜け、ほんの一瞬、セルゲイの攻撃が停まった。
一瞬の隙が、彼に生じる。
その刹那、スライディングでセルゲイの攻撃を越えた紀和は躯を捻って軽快な動きで立ち上がると、
「黒天を彩る幾多の星々。その光は闇を浄化し、悪を退ける。我の元に来たれ、浄化の光!!」
口早に紡がれた言葉の後。
千堂 紀和を周囲に、”閃光の矢”が展開される。
”光の矢”以上の輝きを見せる”閃光の矢”、展開されるその数は数百本に及ぶ。
「往け!!」
言葉が放たれた矢先、紀和の周囲に滞空していた”閃光の矢”は一気にセルゲイに向かって射出される。
空気を引き裂き、凄まじい高音を鳴り響かせて。
一本ですら凄まじい高音なのに、”閃光の矢”は数百本も存在するのだから、その高音は鼓膜を破壊するのではと思わせるほどだ。
セルゲイは凄まじい高音に耐えながら、猛烈な速度で接近する幾百の”閃光の矢”に対応する為、焔の巨槍を構えようとした所で、
千堂 紀和の一撃で貫かれた右腕に、力が籠もらない事に気が付いた。
(ダメージが…、大き過ぎたか!!)
思考するも、既に遅い。
幾百の”閃光の矢”は束となり、統合された莫大な閃光は、”閃光の顎”と化して、セルゲイの躯に、
「おのれ…」
喰らい付く!!
「おの、れ…。千堂の…、童が────────────────────ッ!!!」
直後だった。
躯に喰らい付いた”閃光の顎”は、途轍も無い光を撒き散らして…、
「悪いな、セルゲイ・ディスコラヴィッチ。貴様の動きは全て、─────────────────観察済みだ」
爆ぜた。