コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Multiplex Cross Point 更新中 ( No.786 )
- 日時: 2010/12/26 12:15
- 名前: インク切れボールペン (ID: uUme72ux)
漆黒の空間に、爆音が連続する。
柚葉 クロト、椛の魔術が、ダージス・シュヘンベルクの魔術と激突しているのだ。
激突した魔術は、相殺され、その際に莫大なエネルギーの余波を周囲に撒き散らす。
その余波は”造られし天上”の屋上を削り、破壊の風が屋上に吹き荒れる。
ダージス・シュヘンベルクは拮抗する戦況に、依然として余裕を感じさせる嘲笑を口元に貼り付け、
「無駄だねぇ。本当に無駄。君達程度の実力なら準備運動で済むね」
そんな嘲弄に対し、柚葉 椛の魔術の鋭さが増す。
七色の閃光が椛の周囲に展開され、閃光は、ただの光から”剣”を形成する。
光が”剣”の形を取った訳では無く、光から物質である”剣”が生まれたのだ。
それぞれ七色の光が、七つの”剣”に。
「傲慢、色欲、強欲、嫉妬、暴食、怠惰、憤怒。七つの大罪を断罪する、七つの裁剣よ」
”剣”の刀身が、危険な光を宿す。
全てを両断するような、そんな危険な光を。
「両断せよ。刺し穿て。七つの大罪を悉く断罪せよッ!!」
七つの裁剣が、蠢く。
刹那、椛の周囲に展開された七つの裁剣はダージスに向かって疾駆する。
鋭利な刃を以て、虚空を滑空し、空気を引き裂きながら。
だが、
「来たれ。汝は我ら万物に生と死を与える絶対なる強者の力。奏でよ。全てを無に帰す破壊の音色を!!」
バンッ、と。
ダージスの詠唱が終わると共に、七つの剣は彼に触れる寸前で灰と化す。
冷たい夜風が灰を吹き飛ばし、椛の魔術はダージスの魔術の前に屈する。
「残念だったね、柚葉 椛。君の魔術じゃ、威力不足だ」
「まだだッ!!」
無駄だよ。
椛の不屈を徹底的に否定し、ダージスは冷ややかに呟いた。
「…そうだ。威力不足なら、それ以上の威力を以て攻撃すれば良いって事だ!!」
飛翔と共に、クロトはダージスの身体に向けて蹴撃を放つ。
魔術で徹底的に強化した蹴撃を。
銃弾よりも遙かに速く、鉄槌の一撃と同等か、それ以上の威力を誇る一撃が、ダージスの身体に突き刺さる。
「ぐ…ッ!?」
バァンッ!! と、ダージスの身体は蹴撃によって吹き飛び、屋上の壁に激突する。
パラパラ…、と音を立て、壁は粉塵を撒き散らす。
展開される粉塵のカーテンの中で、ダージスの高笑いが聞こえてくる。
不快感を催させる、独特の笑声が。
「良いねぇ。それでこそ、此処まで来た価値がある。そうだろう?」
ならば、その価値を認めて、ボクの力の一端を見せよう。
君達とでは絶望的な差があるだろう、ボクの力の一端を。
「一つ、君達に絶望を与える事実を教えよう」
ぐにゃり、と顔を狂笑に歪めて。
粉塵のカーテンを静かに静かに薙払いながら、
「ミリー・シャルロット。荒川 冬丞。セルゲイ・ディスコラヴィッチ。荒川 琴音」
組織でも屈指の実力を誇っている四人の名をダージスは挙げる。
それが何を意味するのか、椛とクロトには解らなかった。
「四人は我が組織の精鋭だ。だが、それだけの実力を持っている彼らでも、ボクには敵わない」
何故なら、と。
ダージスは粉塵のカーテンを完全に薙払い、其処から抜け出した彼は明確に告げる。
「四人が纏めて掛かって来ても、ボクには四人を倒すだけの実力があるからだ」
さぁ、此処からが絶望の宴の真骨頂だ。
ダージス・シュヘンベルクの周囲の空気が、バキバキと歪な音を立てる。
彼から放たれる殺気が、空間に干渉しているのだ。
「教えてやろう。君達にはカノンは助けられない、と」