コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Multiplex Cross Point 19話更新 ( No.833 )
- 日時: 2011/01/03 18:25
- 名前: インク切れボールペン (ID: uUme72ux)
唐突だった。
再び、漆黒の空に戻される。
ダージスが”神の力”を用いて強化を施した右腕を放ち、それを受け止めた漆黒の空に。
「…停めるか。僕の一撃を」
流石は”神殺し”の魔術師だ、とダージスは拳を停めたクロトを賞賛する。
変わらず侮蔑の表情を籠めた微笑を湛えて。
だが、今の彼の表情が、クロトには偽装に見えてならない。
”共鳴現象”で目撃した、彼を思い出して。
だからこそ、彼は問い掛ける。
「”奴ら”とは誰だ」
ほんの一瞬。
が、確かに一瞬だけダージスの表情が曇ったのを、彼は確かに捉えた。
何の話だい、と嘯くダージスに、彼は更に言葉を叩き込む。
「お前は踊らされているだけじゃないのか!! その”奴ら”なる者達に!!」
「何の話だと言っているんだ!!」
ダージスの裂帛が漆黒の空間に響く。
刹那、放たれる拳。
的確に心臓を穿つが為に放たれた”神の力”を用いて強化された裂拳を。
人間の反応速度を遙かに越えた速度で、常軌を逸した威力の拳を。
しかし、パンッ、という乾いた音と共にクロトはダージスの拳を受け止める。
尚も、言葉を吐き続けて。
「愛する者の為に!! 己を殺して!! お前はッ!!」
「随分と喋るじゃないか!! 余裕の証拠かい?」
「答えろ!! お前の言った”真実”の真意を!!」
「答える必要が無いね!!」
直後、同質の”神”の魔術は激突する。
轟音は世界を揺らし、”神殺し”の魔術師は尚も問う。
”真実”の意味を求めて。
だが、如何なる言葉を投げ掛けられようと、ダージスは見事に捌いて見せる。
その言葉に、意味は無い、と。
「君は随分と余裕の様だ。なら、完全に君の余裕を両断して見せよう」
その瞬間だった。
ダージスの背中から飛び出していた”黒焔の双翼”が砕け散る。
「さぁ、ショータイムの時間だ!!」
飛散した黒焔は、漆黒の空に幾多の魔法陣が描かれる。
幾多の魔法陣が重なり、新たな魔法陣を構築し、そして重なり、新たな魔法陣を構築し…。
その循環が続き、遂には兎葉の街を抱擁するほどの巨大な魔法陣が顕れた。
それを視界に捉えたクロトの頬を、冷たい汗が伝う。
恐らく、この魔法陣は魔術砲撃の陣。
が、これほどの規模の魔術砲撃を撃たれれば、クロトでも停められない。
それ以前に、この魔術砲撃が着弾すれば周辺の街を呑み込み、焦土と化すだろう。
魔術を停める、それ以外に方法は無い。
その為には、
(説得で奴が停まるとは思えない!! なら、方法は一つ)
視界に捉えるのは、魔術砲撃の発動準備に掛かるダージス。
魔術を停める、その方法は。
(魔術を発動している術者を抹殺する事!!)
それは簡単な事では無い。
”神の力”を身に取り込んだ、ダージスを殺すには、一撃で決める以外の方法は無いだろう。
それを成し遂げる為に、必要な条件を満たす魔術は、ただ一つ。
(”神穿ちの魔槍”!!)
刹那、空間が揺らいだ。
”神殺し”。
その魔術は破壊と創造の二属性を扱えるフレスヴェルクの一族のみ使役する事が可能な魔術。
文字通り、”神を刺し穿つ魔の槍”。
創造と破壊、対極の魔術を掛け合わせ、莫大なエネルギーを創造する。
加えて、莫大なエネルギーを凝縮させ、”槍”の形を模した物が、”神穿ちの魔槍”。
ダージスの魔術と同等か、それ以上の威力を持っているであろう、その魔術。
「創造…完了ッ!! 矛先に”破壊”の属性を集束。射出準備完了…ッ!!」
まだ”真実”の意味は聞き出せていない。
それでも。
(仲間を殺させる訳には…。街を破壊させる訳には…)
右腕に、膨大なエネルギーの”槍”を手にして。
クロトは、吼える。
「行かねぇんだよォォォォォォ────────────────ッ!!!」
その瞬間。
莫大なエネルギーの塊である”神穿ちの魔槍”を射出する。
放たれた”槍”は漆黒の闇を滑空し、ダージスへと向かう。
「──────────────────ッ!!!」
魔術の展開に、気を取られていた。
その所為か、飛来する”槍”に対応が遅れ、
”槍”はダージスに激突する。
直後だった。
漆黒の闇に、莫大な閃光が迸る。