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正確な情報の開示。
それが情報屋、錆螺　唄の矜持である。
如何なる情報でも不確定な情報は開示する事は出来ない。
非日常を生きる魔術師にとって、情報は時として命をも左右する場合がある。
故に、錆螺　唄は正確な情報を、必要な場合だけ、必要な分だけ、開示するのだ。
今回の場合は、情報が少な過ぎる。
【楽園】の最上階、眼下に広がる譜条の街を見ながら、彼は思う。
カノンとは、何者なのか、と。
何処から来たのか、何の為に逃走していたのか、それすらも不明。

（たった１つ、分かってる事は彼女がラーメンが好きだという事だけですね…）

使えない情報だと思う。
だが、現状はそれだけしか分からない。
そんな現状に対し、謎だけが残る。
魔術師達の、不審な自害、もしくは時限性致死毒魔術による殺害。
カノンの前に現れたゴーレム、その目的はカノンであるのは明らかだ。
何者かが、カノンを狙っている。
その目的は依然として不明、誰が狙っているかも不明、そして狙われるカノンの価値とは？

（謎は増える一方ですか…。ですが、解決の糸口は依然として無し。さて、面倒になってきましたね）

唄は上着のポケットに手を突っ込んだまま、静かに息を吐いた。
そして、情報屋の異名を持つ者として、覚悟を決める。
闇に徹し、傍観者を決め込む人間としてでは無く。
事件に関係した１人の人間として、彼女が纏う全ての謎を、この手で知る覚悟を。