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- Re: Multiplex Cross Point キャラ募集中 ( No.92 )
- 日時: 2010/04/11 12:11
- 名前: Faker (ID: xFQn5lM8)
Multiplex Cross Point─多重交差点─ 第五話 真価
【楽園】の休憩所。
台所を兼ね備えた休憩所で、ヴァン・スルメルトゲーティアは眼前の光景に我を失っていた。
休憩所に置かれた食卓である丸テーブル。
其処に並べられた無数の皿、料理、加えて破竹の勢いで料理を食べている1人の少女。
綺麗な金色の短髪の少女、カノン。
【荒廃せし失楽園】に保護された彼女は見境無く、出された料理を食べている。
腹が減っている、というのはヴァンでも分かる、が。
丸テーブルに置かれた使用済み皿は百を越え、それでも依然としてカノンの食欲は衰えない。
台所では、頭に鉢巻を巻いた結月が料理をしている。
フライパンで料理をする彼女は、笑顔だった。
満面の笑み、と例えて良い程に。
「部隊長、料理が好きだから」
と、ヴァンの隣で甘菓子の袋を手にした黒雅が呟く。
相変わらず、抑揚の無い声ですね、とヴァンは心の中で率直な感想を述べる。
その間にも、カノンは結月が作った料理を猛獣のように食べて行く。
「…怪物ね」
部屋の隅で本を読んでいた金髪の少女、メルは紅い瞳にカノンを捉え、静かに呟いた。
毒舌極まりないメルの言葉が聞こえているのか、聞こえてないのか、カノンは食べる手を動かすばかり。
そんな状況で、部屋にいた秋兎はカノンを見据え、真剣な表情で体を震わせていた。
まるで、感動するかのように。
そして、彼の口から出た言葉は、
「萌えだゼ───────────ッ!!!!」
サングラスを掛けた、オタク&ロリコン魔術師は叫ぶ。
とりあえず、あれは何とかしなければならない。
「秋兎。萌え、って何だ?」
「おお、興味を持ったか、紀和。良いゼ、良いゼ、教えてやろ…」
「ダメ──ッ!! 紀和を邪道に引き込んじゃダメだよ、秋兎くん──ッ!!」
その瞬間、秋兎が萌えについて語り出す寸前に台所から中華鍋が飛んで来た。
それは見事に秋兎の後頭部に直撃し、秋兎は音も無く崩れ去った。
秋兎──ッ!? と千堂 紀和が予期せぬ攻撃(中華鍋)を受けた秋兎を抱き起こす。
…返事が無い、ただの屍のようだ。
「まだだ、まだ終わらんゼ。萌えについて語るまで───ッ!!!!」
変態復活。
だが、台所から縦一線の軌道を描きながら、木製まな板が飛んで来た事で、それも終わる。
む、無念だゼ…、と最後の台詞と共に今度こそ、変態は崩れ去った。
そして、ヴァンの方を向いて、サングラスの中から視線を投げ掛け、儚い声で、こう言ったのだ。
「お、俺の萌え、を…お前に託すゼ。…頼んだゼ、スルメ」
「スルメじゃ無いです。それに、そんな邪悪な感情を託さないで下さい、地獄まで持って行って下さい」
適当なツッコミをした後、ヴァンは呆れたように息を吐く。
相変わらず、【荒廃せし失楽園】の日常は変わらないな、と。