コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Multiplex Cross Point キャラ募集中 ( No.96 )
- 日時: 2010/04/11 18:28
- 名前: Faker (ID: xFQn5lM8)
結果として、カノンが【楽園】の廃墟ビルから二日が経っていた。
その間に分かった事は、特には無い。
錆螺 唄は幾度と無く、魔術師達が死亡した場所に足を運び、情報を整理するも、やはり成果は無かった。
状況は完全に煮詰まっている。
椛は自室に閉じ籠もり、知る限りの情報を纏め上げ、進退を考え、唄は相変わらず情報収集に出掛けていた。
さて、【楽園】に保護されたカノンは…。
「よーし、カノン。来いやー」
「うん」
【楽園】付近の廃墟広場。
椛、唄以外の【荒廃せし失楽園】のメンバーは全員、この場所に集まっていた。
目的は、ただ1つ。
クロトの発案で、この場所でカノンとメンバー達でキャッチボールをするのである。
カノンが勢い良く、軟式野球で使われるボールを投げ、クロトはボールを見事にキャッチした。
「よっしゃ、次。受け取れー、メルッ」
「…面倒、っと。オタクッ」
「ナイスキャッチだゼ。おらぁ、スルメ!!」
「誰が、スルメですか!! 黒雅、巧く取って下さいよ!!」
「…よ、っと。はい、紀和」
「おっしゃあああああああ、行くぞ、料理長ォォォォォォォ!!!!」
ボールを受け取った瞬間、紀和が莫大な魔力をボールを持つ手に込める。
彼を中心に地面がドーム状に、ベッコォ!! と音を立てて沈んだ。
魔力によって強化された腕は、凄まじい速度でボールを投げる事が可能となった。
その状況を前に、ちょ、紀和!? と次に紀和からボールを受け取る番である結月は慌てる。
「待って、待とうよ、それは待とうって!! 紀和、それは投げられても受け取れない、って、言ってる傍から投げるなぁぁぁ!?」
容赦は無用。
それを言外に示すかの如く、紀和はボールを投げた。
風を纏い、莫大な魔力を込められた腕で投げられたボールは凄まじい速度で結月に迫る。
下手すれば、大砲の弾丸に匹敵する威力を誇るであろう、ボール。
危うい所で、結月は横合いに勢い良く、ザッシャァァァァァ!! とローリングする事で回避した。
ボールは【楽園】の上階の一室の窓を割り、部屋の中に落ちたようだ。
「避けたか」
「何を残念そうな顔をしてんの!? 危うく死亡フラグが立つ所だったよ!?」
「立てば良いのに」
「その言葉に結月さんは激しく悪意を感じます!! こんな紀和の言動、どう思う、メルちゃん!?」
「……………チッ」
「舌打ちされた!? ごめんね、機嫌が悪かったんだね!?」
「メルは普段から、そんな感じだゼ」
「そうですね。毎度、あんな感じですよ」
「…殴るよ」
暗いオーラを纏ったメルは、不機嫌そうな顔で言う。
その滅茶苦茶な威圧感に、秋兎、ヴァンは真面目な顔で謝罪する。
ノリで力関係が上なメルに反抗してみたが、失敗に終わったようだ。
そんな中、カノンはメンバーのやりとりを見て、少しだけ表情を緩めていた。
「楽しいかい、カノン」
「…楽しい?」
聞き返して来たカノンに対し、クロトは苦笑した。
彼女は今、頭に魔術を仕掛けられ、その所為で知らない事が多いのだ。
普通の生活をするには支障が無いようだが、楽しい、悲しい、といった感情すらも理解できていない。
…それは、少し寂しい事だ、とクロトは思う。
楽しい事に面しても笑う事が出来ず、悲しい事に面しても泣く事も出来ない。
だから、それを彼女に知って欲しい、とクロトは心の奥底で願っていたりする。
「まぁー、あれだよ。楽しい、って言うのは、今みたいな感じだ」
「これが、…楽しい」
クロトの言葉に納得したのか、何度か頷き、メンバー達のやりとりを見る。
そんな中、それは起きた。
ドズンッ!! という轟音と共に秋兎の体が空中を舞ったのである。