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Re:    Mistake . ( No.14 )
日時: 2010/09/04 01:13
名前: 凜 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)

#01 ( もう一人 )

「今日からこの会社で働かせていただきます。柏木 凌太、二十三歳です、よろしくお願いします」
 終わった。わずか二十五秒で、昨日の夜あんなにも悩んだ自己紹介が。
「おー、いいねえ。フレッシュだねえ。じゃあ、次は愛沢さん。自己紹介お願い」
「愛沢 瀬菜。年齢はそこのフレッシュリーマンと一緒。以上」

* * *

「あー、緊張した……」
 俺は小さく呟いて、たぶんこの前まで誰かが使っていたであろう少し黒ずんだ机に顔を伏せた。それから一呼吸おいてから顔を上げ、先程の自己紹介までの事を思い出した。
 この会社は、入社した俺が言うのもなんだが所謂超一流企業で高給料。さらにボーナス有り。入社希望率は高いが毎年の新入社員募集は男女一人ずつ計二人のみ。
 おかげでかなり厳しい戦いとなったわけだが、なんとか採用された。それは本当に良かったものの、あと一人。この会社に入社できた女がいるわけだ。俺は秘かにそいつに会うのを楽しみにしていたのだが。
「ガリ勉かと思ったら、超美人だよ。天は人に二物を与えるんだな」
 ガリ勉で黒縁眼鏡のダサ女。内面だけが売り……という俺の予想はハズレ。いや、大ハズレだった。俺の目に映ったのは美人としか言い様のない女性だった。
 肌は透き通るように白く、目はまるで少女漫画の主人公のように大きくて……。でもどこか寂しげで、氷のように冷え切っていたような気がした。
 一方真っ黒で胸まである髪は、毛先にすこしパーマがあてられているのか、くるんと曲線を描くように跳ねていた。
「けど……フレッシュリーマンって……」
 せっかくの美貌が勿体無いと思うくらいに、ネーミングセンスは零に等しかった。